【医師監修】病院へ行くべき? 赤ちゃんが熱を出したときの対処法
赤ちゃんが熱を出すと、お母さんは心配でたまらなくなってしまいますね。でも赤ちゃんはもともと平熱が高く、体温調節もうまくできないので、しょっちゅう熱を出すものです。また、高熱が出ても必ずしも重い病気とは限りません。今回は、赤ちゃんが熱を出したときの対処法や、病院に行くべきか判断するポイントをご紹介していきます。
赤ちゃんの熱について
発熱は体の防御反応
「熱が出る」というのは、体の変調のサインのひとつですが、そもそもなぜ、発熱が起こるのでしょうか。それは、体内に入ったウイルスや細菌から体を守るためです。ウイルスや細菌などの病原体は、体温が37度くらいのときに活発に活動するという性質を持ちます。そこで、これらの病原体が侵入してくると、体は体温を上昇させることで、免疫力を高めることによって病原体の活動を抑えようとするのです。
また、赤ちゃんがお腹の中でお母さんからもらった免疫は、生後6ヶ月くらいでなくなってしまうので、この時期頃から、赤ちゃんはしょっちゅう熱を出すようになります。しかし、発熱することで免疫力が身についていくので、ある程度の熱や病気は赤ちゃんが成長していくうえで必要なものでもあるのです。
赤ちゃんの熱は病気が原因とは限らない
体温は、脳の視床下部にある「体温調節中枢」という部分で、ある一定の範囲を保つようにコントロールされています。大人は、この体温調節中枢がきちんと機能するので、39度を超えるような高熱になることは滅多にありません。しかし、赤ちゃんの場合は体温中枢が未熟なので、病気のときだけなく、「衣類をたくさん着ている」「部屋が暖かすぎる」「水分が足りていない」といったようなときでも、簡単に体温が上がってしまうことがあります。
また、発熱とはわきの下の体温が37.5度以上のときのことを言いますが、そもそも赤ちゃんは成人と比べて新陳代謝がいいために体温が高いので、37.5度でも平熱ということが珍しくありません。赤ちゃんの平熱を把握しておくために、いつも決まった時間(朝起きたとき・昼・夕方・夜寝る前の4回)に熱を測って記録する習慣を持ちましょう。平熱がわかっていれば、熱が上がったかどうかすぐに気づくことができます。
病院に連れて行くかどうかを判断するには?
熱の温度だけでなく全身症状をチェック
赤ちゃんはちょっとしたことですぐに熱を出すので、体温が平熱を上回っているからといって、重い病気とは限りません。では、心配のない熱と病院に行くべき熱はどのように判断すればいいのでしょうか。その手がかりになるのが全身症状です。発熱があるときは、次のことをチェックしましょう。
・機嫌、表情…機嫌がいいか、よく笑うか、表情がいきいきしているか。
・元気、活動量…元気があるか、いつも通りに遊べるか、手足などをよく動かしているか、いろいろなものに興味を示すか。
・顔色…普段、顔色に変わりはないか、青ざめていないか。
・呼吸…呼吸が苦しそうでないか、横になって眠れるか。
・食欲…おっぱいやミルク、離乳食をいつも通り口にするか。
・熱以外の症状…せき、鼻水、嘔吐、下痢、けいれん、意識の低下など、熱以外の症状がないか。
病院に連れて行く? 行かない? 判断の目安
夜間・休日でもすぐに病院へ
・3ヶ月未満の赤ちゃんで38度以上の熱がある。
・呼吸が苦しそうで、あえぐように息をしている。呼吸の回数が多い。
・ぐったりしていて元気がない。
・意識がもうろうとしていて、呼びかけても反応が鈍い。
・顔色が悪く、手足が冷たい。
・嘔吐や下痢が続き、水分さえ受けつけない。
・けいれんが5分以上続いている。※この場合は救急車を呼ぶことも考慮しましょう。
病院に行くとき用意するもの
赤ちゃんをすぐに病院に連れて行かなければならない状態のときでも、一旦落ち着いて持ち物や状態を確認しましょう。焦って出かけると、必要なものを忘れてしまってかえって無駄に時間がかかってしまうことがあります。そうならないために、病院に行く際の持ち物は普段から一つのバッグにまとめておくとよいでしょう。熱の経過を記録したグラフなど(熱型表)は診断に有効です。
必ず持っていく物
・母子健康手帳
・健康保険証
・乳幼児医療証 ※助成内容は自治体によって異なる
・診察券(受診したことがある病院の場合)
・お金
・体温や症状を書いたメモ
・お茶などの水分
・おむつ2~3枚
・おしりふき
・ビニール袋(使用済みのおむつを入れるため)
病院で伝えること
普段と違う様子や気になったことなどをメモしておけば、医師に必要な情報をしっかり伝えることができます。
・体温の変化(いつ頃発熱したか、どう変化したかなど)
・普段と何が違うか(機嫌、表情、呼吸、食欲など)
・発熱以外にどんな症状があるか
赤ちゃんの服装
すばやく診察できるよう、赤ちゃんの服装は脱がせやすいものにしましょう。股下にボタンがあり、かぶって着るタイプのものは、着脱に時間がかかるので避けます。
熱があるときのホームケアのポイント
熱の上がり始めは暖かく、上がりきったら涼しく
熱の上がり始めは、体がぶるぶるしていたり、手足が冷たくなったりします。着るものを1枚多くする、毛布を1枚足すなどして、体を温めてあげましょう。手足が温かくなったり、汗をかき始めてきたら、熱が上がりきったサインです。汗をかいたら着替え、衣類や寝具を減らしたり、室温を調節したりして、涼しくしてあげてください。大人よりも1枚薄着のレベルでもよいでしょう。
こまめに水分補給を
熱が続くと、体の水分が奪われ、脱水症状に陥りやすくなります。おっぱいやミルク、白湯、お茶、赤ちゃん用のイオン飲料などで、こまめに水分補給をしてあげましょう。
食欲が出てきたら消化のよいものを
食欲がなくても、水分がとれているなら心配ないので、無理に食べさせる必要はありません。熱が下がって食欲が出てきたら、おかゆやうどん、プリン、ゼリーなど、消化がよく食べやすいものを少しずつあげてください。
高熱時にはお風呂を控える
38度を超える高熱が出ている場合は入浴を控えます。熱が下がってきて、赤ちゃんが機嫌よくしているのであれば、シャワーで汗を流したり、短時間でさっと湯船につけたりしても構いません。ただし、入浴は体力を消耗するので、長湯はNGです。汗をかいたらこまめに着替えさせ、お湯で絞ったタオルで体を拭いてあげてください。
解熱剤はむやみに使わない
赤ちゃんが嫌がらなければ、冷やしてあげましょう。冷却シートや氷嚢、氷枕など用い、首のつけ根・わきの下・足のつけ根を中心に。おしぼりで体を拭くのも気化熱で体温を下げるのでおすすめです。38.5度以上の熱が続いていて体力を激しく消耗し「ぐったりしている」「水分がとれないなど食欲がない」「よく眠れない」というような場合は、医師に処方してもらって解熱剤を使ってもよいでしょう。ただし、解熱剤はあくまでも熱を下げるための薬で、病気そのものを治せるわけではありません。
熱性けいれんを繰り返している赤ちゃんで、医師から対処法を指示されている場合は、医師の指示通りに使用しましょう。
どんな病気の可能性があるの?
発熱の原因として考えられる主な病気には、次のものがあります。
かぜ症候群
ウイルスや細菌に感染して、鼻やのど(上気道)に急性の炎症が起こる感染症の総称で、いわゆる「かぜ」のことです。発熱のほかに、くしゃみ、鼻水、鼻づまり、咳、喉の痛み、下痢、嘔吐などの症状が現れます。通常は1週間ほどで治まりますが、免疫力が落ちやすいため、急性中耳炎や肺炎などを併発することがあるため、注意が必要です。
インフルエンザ
非常に高い感染力を持つインフルエンザウイルスによる感染症です。乳幼児にはけいれん・脳炎の合併が多く、重症化しやすいので注意が必要です。38度以上の発熱、関節痛、筋肉痛、頭痛などもともなうので、赤ちゃんはかぜのときよりもぐったりした感じになります。
突発性発疹
ヒトヘルペスウイルス6型・7型による感染症で、生後6ヶ月~1歳までの赤ちゃんに多く見られます。突発性発疹(ほっしん)になると、急に38度以上の高熱が出て3日間ほど続いたあと、スッと熱が下がります。そして、熱が下がったと同時に、胸やお腹に赤い発疹が出始め、全身に広がっていきますが、この発疹も数日間経てば、自然に薄くなって消えていきます。突発性発疹では、赤ちゃんは、高熱のわりに機嫌よくしていることが多いといわれています。
急性中耳炎
細菌やウイルスが、耳管(耳と鼻、のどをつなぐ管)を通って中耳に入り、炎症を起こす病気です。0歳~2歳頃の子供に多く見られます。かぜに続いて起こることが多く、発熱、鼻水、のどの痛みなどのかぜの症状のあとに、「熱がなかなか下がらない」「耳を痛がる」「しきりに耳を触る」「不機嫌でいつまでもグズる」などといった場合は急性中耳炎の可能性があります。早めに耳鼻科を受診しましょう。
尿路感染症
尿路感染症は、おしっこの出口から細菌が膀胱内に入ってしまうことで引き起こされる病気です。赤ちゃんの尿路感染症では、発熱や機嫌が悪いといった症状が見られることが多いもの。幼児ではおしっこのときに痛がったり、おなかや背中を痛がったりする場合もあります。
上記は、発熱の原因のすべてではありません。ほかの原因で発熱する場合もあるため、赤ちゃんの様子が普段と違って気になる場合には、早めに医師の診断を受けましょう。
まとめ
赤ちゃんが熱を出すと、ママは心配になって、「早く熱を下げなくては」と思うかもしれません。熱の高さと病気の重さは必ずしも比例しないので、熱が高くても赤ちゃんが機嫌よく元気にしていれば、それほど心配はありません。まずは落ち着いて、赤ちゃんの様子をよく確認し、冷静に対処をしましょう。
※この記事は 医療校閲・医師の再監修を経た上で、マイナビ子育て編集部が加筆・修正し掲載しました(2018.08.20)