出産・産後 出産・産後
2022年04月11日 11:50 更新

漢方の証ってなに?未病とはどんな状態?<ママのお悩み漢方相談室#2>基礎知識編②

店頭で見かける漢方薬は難しい漢字の名前ばかりですが、薬名だけでなく「証」「気・血・水」「未病」など独特な表現も目にします。これらは一体どういう意味なのでしょうか?「ママのお悩み漢方相談室」第2回の今回は、漢方理論の基本について漢方薬剤師の西崎れいな先生(KAMPO MANIA TOKYO)に教えていただきました。

ママのお悩み漢方相談タイトル

先生、今日もよろしくお願いします!

前回、同じ不調でも体質に合わせて漢方薬を服用するとお聞きしました。漢方で体調をはかるものさしとはどんなものでしょうか?

こちらこそ、よろしくお願いします。

漢方は、一人一人が本来持っている自然治癒力を高め、身体を整えていきます。そのため、その人の体質や症状に最も適した生薬の組み合わせを選んで使うので、同じ症状でも、患者さんによっては使用される漢方薬が異なることがあります。

---------------------------
前回の記事
▶︎漢方薬と普通の薬ってどう違うの?<第1回>基礎知識編①

漢方の基本「証」とは?

漢方理論の重要なキーワードに「証(しょう)」という考え方があります。

簡単に説明すると、証とはその人の体質、体力、抵抗力など全身の状態を表すものであり、漢方治療はこの証を特定することから始まります。

西洋医学では、診断名によって病気そのものに対処するための薬が処方されますが、漢方医学ではその人の体質に合わせた生薬の組み合わせ、適切な漢方薬を選んで治療していくので、選定のベースとなるこの「証」にはさまざまな分類があります。

以下の表を見てください。

虚実寒熱

わかりやすいものでいえば「寒熱」(図の下段)。体が冷えているか/熱をもっているかという分類です。寒気や冷えを感じる状態は寒証、のぼせやほてり、熱っぽい状態は熱証、という具合です。

また「虚実」(図の上段)とは、体力が低下しているか/体力が充実しているかを示す分類です。病気に対する抵抗力や体の反応が弱い状態を虚証、体力があり抵抗力もある状態を実証といいます。

不調の原因を探る3つの要素 気、血、水

漢方医学では、人の身体は気、血、水(き、けつ、すい)の3つの要素から成り立ち、それぞれが過不足なく滞りなく全身を巡ってバランスを保つことで、健康であると考えます。

「証」を特定するためには、この気、血、水の状態を見極め、不足がないか、しっかり巡っているか、などを細かく確認していくのです。

「気」は人の身体を動かすためのエネルギー、活力のこと。気の異常があると、疲労感、だるさ食欲不振、全身の冷え、イライラ、のぼせなどがみられます。

「血」はご存じの通り、血液のこと。体を巡って全身に栄養を行き渡らせる役割を持ちます。血の異常により、月経異常や月経痛、貧血、めまい、立ちくらみ、皮膚の乾燥などがみられます。

「水」はリンパ液や唾液など、血液以外の体液のこと。水の異常では、むくみやめまい、ほてり、下痢、頻尿などがみられます。

この3つの要素は互いに深く関係しており、水は気や血の循環を助け、気は血に乗って全身を巡ります。

不調の主な7つのパターン

これらの不調にもある程度パターンがあり、それぞれの不調には名前が付けられています。前述の寒熱、虚実や、気血水の状態すべてを組み合わせて判断し、適切な漢方を選ぶのです。

1. 気虚(ききょ)
  気の不足によって倦怠感やだるさなどを起こす
2. 気逆(きぎゃく)
  体の上部に気がのぼり、動悸、イライラ、めまいなどを起こす 
3. 気滞(きたい)
  気の流れが滞り、気分の落ち込みや喉のつかえ感、息苦しさを起こす
4. 血虚(けっきょ)
  血の不足により月経不順や貧血、皮膚の乾燥などを起こす
5. 瘀血(おけつ)
  血の巡りが悪く、下半身の冷え、肩こり、月経痛などを起こす
6. 水毒(すいどく)
  水の滞りや過剰により、むくみや下痢、耳鳴りなどを起こす
7. 津液不足(しんえきぶそく)
  水が足りていない状態で、喉の渇き、ほてり、肌の乾燥、尿量の減少、便秘などを起こす

漢方の得意分野 未病

私は頭痛持ちでむくみがひどいので、「水」が過剰なのでしょうか……。

慢性的にこれらの症状を抱えている方は、私も含めてたくさんいそうです。病気というよりは、お医者さんにいくほどではない不調といった感じですね。

おっしゃる通りです。それがまさに漢方が得意とする領域で、これは「不定愁訴(ふていしゅうそ)」と言われるものです。

健康診断や血液検査ではなんの問題もないのに、なんとなくだるい、調子が悪い、といった西洋医学では診断のつけられない症状や状態も、漢方を使って体質改善していくことで改善される場合があります。

また、私たちの体は、元気いっぱいの状態から、いきなり病気になるわけではありませんよね。健康と不調はゼロイチではなく、大抵は、なんとなくだるいな、疲れているな、といった病院にいくほどではない状況から始まります。

具体的に寒気がしてきたり、のどが痛くなったりして「病気かもしれない」と感じるまでにはグラデーションが存在するはずです。

このような、「病気とまではいかないけれど、健康な状態ではなくなりつつある状態」を漢方医学では「未病(みびょう)」といいます。

未病の女性

この未病の段階で、漢方を使って身体を本来ある健康な状態に戻してあげることで、病気で苦しむ前に対処できます。いわゆる西洋医学での「疾患」に値しなくても、証にあった漢方を服用して気、血、水の巡り、ひずみを修正することで健康な身体をキープすることができるのです。

証と不調の原因を知って体質改善を目指す

病気にならない身体づくりは、コロナ禍の今では特に重要ですね。

そうですね。普段からしっかり身体を整えて、ウイルスに負けない身体づくりをしておくことはとても大切です。

それぞれの証を見極めるために、症状や体質を細かく確認し、今目の前の不調や病気を治すだけでなく、身体の根本から体質改善を図る漢方医学。

忙しい現代を生きる私たちは、日々さまざまなストレスにさらされ、睡眠不足や運動不足、必要な栄養素を十分に摂れていないなど、身体のバランスが乱れる要因が溢れています。

特に女性の体は、毎月の月経や、出産、授乳などで大きなダメージを受けますし、女性ホルモンが一生を通して目まぐるしく変動します。それに伴って、様々な不調を抱えている人が多いです。

漢方を上手に活用することで自然治癒力を高め、症状が出ない身体を作ることが大切です。これらの基礎をふまえた上で、症状に合った漢方の活用や注意点について、これから一緒に学んでいきましょう。

まとめ

「ママのお悩み漢方相談室〜不調な私の取扱説明書〜」第2回では証の考え方や原因を探るための気・血・水について、そして未病を改善すつ重要性について解説しました。自分の体の状態を知って、上手に漢方を取り入れられるといいですね。

(解説:西﨑れいな 先生<KAMPO MANIA>)

※画像はイメージです

  • 本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

PICK UP -PR-

関連記事 RELATED ARTICLE

新着記事 LATEST ARTICLE

PICK UP -PR-