「ゲーム=悪」なのか? スマホ・タブレットのゲームと子どもが上手に付き合うには? #親と子のネットリテラシー入門 Vol.4
ここ数年で、子どもを取り巻くデジタル環境は劇的に変化。私たち親世代は、子どものデジタル機器の付き合い方や、ITリテラシーの教え方にどう向き合ったらよいのでしょうか? ITジャーナリスト・スマホ安全アドバイザーとして活躍し、自身も二児の母である鈴木朋子さんに教えてもらいます。
子どもたちは何時間ゲームしている?
「子どもが静かだと思ったら部屋でゲームに熱中していた」「ゲームを止めさせたらゲーム実況動画を見ていた」、そんなご家庭は珍しくないでしょう。スマホやタブレットのゲームとの付き合わせ方は、今の保護者にとって最大の課題かもしれません。
ゲームアプリは毎日ログインすることでボーナスがもらえたり、少し待つとまた遊べるような時間制になっていたりと、ゲームから離れにくい作りになっています。ゲームを通じた仲間と協力してプレイすることもあり、自分だけ抜けづらいときもあります。そして気づけば長い時間をゲームに費やしてしまいます。
実際のところ、今の子どもたちは何時間ぐらいゲームをしているのでしょうか。
ニフティが「キッズ@nifty」において小中学生向けに行った調査「ゲームに関するレポート」(2021年10月)によると、小中学生が1日にゲームをする時間は「30分~1時間」「1時間~2時間」との回答がもっとも多く、どちらも28%と同数になりました。
このアンケートはNintendo Switchやニンテンドー3DSといったゲーム機も含まれていますが、皆さんのご家庭と比べていかがでしょうか。今はゲーム機とスマホやタブレットが家の中に混在しているのも、難しい問題ですね。
ゲームをすることは悪いこと?
スマホやタブレットのゲームで遊ぶことは、果たして悪いことなのでしょうか。保護者の方でもゲームが好きで、楽しんでいる人は少なくないと思います。
スパコロが2022年1月に行った「利用実態調査 スマホゲーム編」によると、スマホゲーム利用率は10代(15才以上)がトップで約6割ですが、20代~40代も40%代と半数近くの人がスマホゲームを楽しんでいます。
また、全年代を通した平均プレイ時間に関しては、「1時間未満」25.3%、「1時間くらい」26.8%、「2時間くらい」25.9%と、10代とあまり変わらない時間が出ています。
ほぼ同じ時間をプレイしているとしても、子どもの場合は心配になる点がありますね。
まずは「視力低下」など、目に関する問題です。私たちが子どものころにはこんなにディスプレイを見続ける習慣はありませんでした。熱中すればするほど、画面に近づく傾向もあります。眼精疲労から疲れを感じるなど、ほかにも体調不良を起こすことがあるかもしれません。
また、姿勢について気になる人もいるでしょう。スマホやタブレットを使っていると、前かがみになることが増えます。そのため、猫背になってしまうのでは、首が前に出てしまうのではなど、不安になりますね。
そして、睡眠不足です。大人とは異なり、子どもは成長期にあり、健康な体が育っている過程です。ゲームに睡眠時間が奪われ、成長を妨げることがあるかも、と考えてしまいますね。また、睡眠不足は昼間の活動にも影響します。毎日寝不足で学校に向かうようでは学習にも身が入りませんし、お友だちと元気に遊ぶことも難しくなります。
子どもが画面に向かう時間が長くなることで健康面での問題が起きることだけでなく、最近では言葉遣いの悪化についても不安視する声が挙がっています。
子どもたちがゲームをするとき、独り言を言いながら遊ぶことはよくあることです。でも、「みんなつぶしてやる」「こっちくんなバーカ」など、普段の会話では使わないような激しい言葉遣いをしているケースがあるのです。「ゲーム実況動画のYouTuberの言葉遣いを真似ている」「オンラインゲームでゲーム仲間から学んでいる」などの説もありますが、気分が盛り上がると悪い言葉を使うことがかっこよく感じるのかもしれませんね。
また、ゲームを通じて知り合った人に誘われて、誘拐されてしまった事件もあります。ゲーム内のチャット、ボイスチャットで少しずつ仲良くなり、近づいてくる悪い大人は後を絶ちません。
ゲーム課金の問題もあります。スマホやタブレットのゲームアプリは有料のアイテムを購入すると、レベルが上がるなどの特典があります。子どもはどんどん課金したくなりますが、そうはいきません。アプリの課金が高額になり、クレジットカードの引き落としで親が気づいて真っ青になった事例もたくさんあります。
親はどのようにゲームと付き合わせたらいいのか
いっそゲーム嫌いになってくれたら、と思う人も多いと思いますが、前述のような問題をクリアできればいいわけです。ゲームを通じて学ぶこともありますし、気分転換にもなります。将来は、ゲームクリエイターやCGデザイナーなどの職業を目指すかもしれません。
健康面での課題は、長時間利用です。それを解決へと導くには、まず親子でルールを決めることが大切です。
なぜ親がゲーム時間を減らしてほしいと思うのか、子どもに話してあげてください。その上で、ルールを決めます。例えば、「○○(ゲームアプリ)は1日30分」「タブレットは1日1時間」「利用はリビングのみで子ども部屋には持ち込まない」などです。また、「宿題が終わったら」「お風呂の時間まで」などの条件を付けてもいいでしょう。
そして、ルールを破った場合のペナルティも決めておきましょう。
「ルールを守れなかったら3日間ゲーム禁止」など、現実的なペナルティにしておくことがおすすめです。
同時に、フィルタリングの設定もしておきましょう。スマホやゲームの設定で、時間が来ると画面がロックされるようにできます。子どもが見やすいようにアナログ時計で管理してもいいのですが、親が気づかぬうちに時間が過ぎていることもあります。その点、時間が来れば遊べないようにしておく方が安心ですし、ルールとして定着します。
次に、言葉遣いの問題ですが、ここは家庭での声掛けが大切になります。「ゲーム中だとしても、聞いている方は嫌な気持ちになる」と話してみましょう。オンラインゲームでの影響が大きいと感じたら、ボイスチャットを禁止するようにしましょう。ボイスチャットはアプリの設定で無効にできるケースもあります。
ボイスチャットとテキストチャットの禁止は、悪い大人との出会いを防ぐことにも繋がります。毎日話しているうちに仲良くなってしまうこともありますが、「誘われても会いに行かない」と約束します。チャットは実際の知り合いとだけOKにするか、ある程度の年齢になるまでオフにしておくといいですね。
また、有料アイテムを勝手に買わない」こともルールに入れましょう。有料アイテムはタップひとつで購入できますが、実際にはお金を支払っています。まずはそこから話してあげてください。そして、自動で決済ができないように、スマホやタブレットの設定を変更します。引き落としできないように、決済登録は消しておきましょう。
親が以前に使っていたスマホやタブレットを渡している場合、決済情報が残っていることがあるので注意が必要です。お子さんが小さくて親のスマホを貸す程度の場合は、毎回パスワードを入れないと決済できないようにしておきましょう。お子さんが大きくなって、お小遣いの範囲でなら課金させたいという場合は、iPhoneやAndroidのペアレンタルコントロール機能で、決済を承諾制にすることもできます。
ゲーム以外の楽しいことも見つけてみる
ルールを決めても、結局ゲームがしたくて守れないこともあるでしょう。家の中にいるとゲームをしたくなるので、親の時間が取れるときは外出してしまうと効果的です。
また、子どもが好きなゲームを親もやってみて、何が楽しいのかを知るのもいいですね。頭ごなしに叱るよりも、子どもと一緒に楽しみながら注意する方が受け入れてくれやすそうです。同時に、「このゲームには実はメッセージ機能があった」など、リスクに気づくこともできます。
どの年代でもゲームは楽しいもの。親子で交流しながら、我が家のルールを作ってみてください。
(文:鈴木朋子、編集:マイナビ子育て編集部)