よく聞く「夏風邪」って実際どんなもの? その種類や特徴から治療まで小児科医がレクチャー!
旅行や帰省、お祭りなどのイベントに忙しい時期、子供が風邪をひくと大変ですよね。今年は新型コロナだけでなく手足口病が大きく流行しています。そこで夏に流行する風邪について、森戸先生に教えてもらいました。
いわゆる「夏風邪」はどういうもの⁉︎
風邪というのは、ウイルスや細菌などの病原性微生物によって、鼻水、咳、発熱などの症状が出る感染症の総称です。原因となるウイルスや細菌などの種類が多いため、多くは特定することができません。また冬に流行することが多いのですが、もちろん夏にだってかかりますし、以下のように夏に流行する風邪もあります。いわゆる「夏風邪」と呼ばれるものですね。
<ヘルパンギーナ>
喉の奥の発疹と高熱が特徴。くしゃみや咳で飛ぶしぶきによる「飛沫」、鼻水がついたオモチャや手などを触る「接触」によって、コクサッキーウイルスA群などに感染することで発症します。高熱は数日で下がることが多いものの、喉の発疹や腫れは長引くことも多く、大きな子だと喉の痛みを訴えたり、言葉で表せないほど小さい子どもでは機嫌が悪くなったりします。いずれにしても食事をしたがらなくなることがあるでしょう。出席停止になる感染症ではないので、熱がなくて全身状態が安定していれば、登園・登校できます。
<手足口病>
その名の通り、手足に水疱ができ、口の中に発疹ができるのが特徴です。主にコクサッキーウイルスA16やエンテロウイルス71などによって起きる感染症で、発熱する場合もあればしない場合もあります。ヘルパンギーナと同様に、小さい子だと機嫌が悪くなったり、食欲が落ちたりします。出席停止になる感染症ではないので、全身状態が安定していれば、登園・登校は可能です。
<プール熱>
高熱と喉の痛み、目の充血が特徴で、「咽頭結膜熱」とも呼ばれます。以前プールで集団感染が起こったために「プール熱」と呼ばれていますが、 プールに行かなくてもかかります。医療機関によっては迅速診断キットがあるので、検査が可能です。アデノウイルスに飛沫・接触感染することによって起こりますが、ノロウイルスと同じく消毒用エタノールや次亜塩素酸ナトリウム(キャップ半分弱の2 mlを500mlの水で希釈したもの)で拭くことが有効です。学校保健安全法によって出席停止になる感染症で、登園・登校の基準は主要な症状が消失した後2日を経過してからとなります。
特効薬はなく抗菌剤も効きません
このほか、軽い風邪症状の後に両頬が赤くなり、手足に網目状あるいはまだらに発赤疹が出る「リンゴ病」も夏に多いもの。パルボウイルスB19によって起きますが、頬が赤くなる頃には人にうつらないため、登園・登校しても大丈夫です。ただし、飛沫・接触感染するウイルスであることに加えて、胎内感染するので注意が必要。妊婦さんがリンゴ病になった場合、産婦人科で少なくとも2カ月くらいはお腹の赤ちゃんの様子を注意深く診てもらいましょう。
風邪などのウイルス感染症には特効薬がなく、抗菌薬も効きません。ですから、それぞれの症状を抑える対症療法の薬でつらさを和らげるしかないのです。発熱や頭痛がつらいようなら解熱鎮痛薬、鼻水・咳がひどい場合は去痰薬、胃腸症状があったら整腸薬など、病院を受診するか薬局で相談して適した薬を与えましょう。
あとは普通の風邪と同じように、できるだけ安静にして休養を取り、水分や栄養をとらせてあげてください。ヘルパンギーナや手足口病によって喉が痛いときは、刺激が少ないもの、飲み込みやすいもの、冷たくて甘いものなどが食べやすいかもしれません。一時的なことですから、あまり栄養バランスを気にしすぎず、食べられるものをあげましょう。
そうして出席停止の場合以外は、体調が安定したら登園や登校をしても大丈夫です。体調が安定したことの目安は、本人がつらそうでなく元気があって、熱が下がって1日以上経っていて、食事が少なくとも半分以上食べられていればいいと思います。
参照)森戸やすみ『小児科医ママの子どもの病気とホームケア』(内外出版社)
(編集協力:大西まお)