子供の犯罪被害の現状とは?SNSで広がる児童買春や児童ポルノなどのは年7,000件以上起きている
後を絶たない子どもに対する犯罪。近年はインターネットやSNSの発展によって、その内容も変化しつつあります。ここでは『令和4年版 警察白書』をもとに、実際に令和3年に起こった子どもに対する犯罪の内容や件数を見ていきます。子どもが被害者になりやすい犯罪や、増えている犯罪は何なのか、一緒に確認しましょう。
子どもを狙った犯罪の現状とは
『警察白書』は、年に1回、警察庁が発行しているもので、その年の犯罪の内容と件数、警察の対策などがまとめられています。今回は『令和4年版 警察白書』から、子どもに関する部分のデータをご紹介します。
子どもが被害者になりやすい犯罪とは?
13歳以下の子どもが被害者となった犯罪の件数の推移を見てみると、件数が多いものとしては、暴行、傷害、強制わいせつが突出していることがわかります。また、全体的な件数は減少傾向にあるものの、2021年(令和3年)では、暴行、強制わいせつ、公然わいせつ、逮捕・監禁の件数が前年より微増となっています。
子どもを狙った犯罪というと、誘拐をイメージする人も多いかと思います。略取誘拐の件数は2021年で180件と、件数自体は突出しているわけではありません。しかし、全体の略取誘拐の件数(389件)に占める子どもの被害件数の割合は27.8%に上ります。暴行や傷害などの被害は特に子どもに限るわけではないでしょうが、こと誘拐に関しては、子どもが標的にされやすい犯罪といえます。
児童買春や児童ポルノなどは年間7,000件以上
次に「福祉犯」の被害について見ていきます。「福祉犯」とは、少年の心身に有害な影響を与えて、少年の福祉を害する犯罪のことを言い、児童買春・児童ポルノ禁止法違反、児童福祉法違反(児童に淫行をさせる行為等)、労働基準法違反(年少者の危険有害業務等)が挙げられます。
こうした福祉犯の被害件数および検挙件数は、2021年では前年より減少しています。それでも毎年、7000件以上の事件が起こり、検挙されています。
<令和3年に検挙された事件の例>
① 1月、22歳の土木作業員の男が16歳の女子児童に出会い系サイトで募った客を引き合わせ、同児童に売春をさせた。
(売春防止法違反(周旋)及び児童福祉法違反(児童に淫行をさせる行為))
② 3月、33歳の無職の男がSNSを利用して14歳の女子児童を誘拐し、自宅で同児童と性交を行った。
(わいせつ誘拐罪及び千葉県青少年健全育成条例違反(みだらな性行為等の禁止))
「児童ポルノ」のうち約4割は自撮り画像による被害
福祉犯のなかで児童ポルノは近年増加傾向にあります。2021年中の検挙件数は2,969件、検挙人数は1,989人、害を受けた児童数は1,458人。これは、いずれも前年を上回る人数です。
被害態様別に見ると、児童自らが撮影した画像によって被害にあってしまった件数が約4割を占めています。これは、それまでのやり取りで心を許してしまった相手に画像を要求され、自ら撮影して送ってしまった、などのケースが考えられます。
SNSが児童買春などの「場」に
現在は、専用のスマホを使っている児童も多く、SNSを利用している子どもも増えています。そんななか、匿名で不特定多数の他人と繋がり、簡単にやりとりができるSNSは、児童買春などの場になっている状況がうかがわれます。
2021年中だけを見れば、SNSを起因とした事件での被害児童の数は減少傾向にありますが、1,800人以上と高い水準で推移しています。また、被害児童のうち、親などが使用制限設定ができるフィルタリング機能を使用していなかった児童の割合が約9割というのも注目すべき点でしょう。
SNS上では、性別や年齢などを偽ることが簡単にできてしまうという事実を今一度、認識する必要があります。
まとめ
『警察白書』のデータから、子どもが被害者となる犯罪は、全体では減っているものの、増加している犯罪の種類もあることがわかりました。また、SNSが児童ポルノなどの福祉犯の場になっていることもうかがえます。SNSのリスクを保護者も学び、子どもが被害に遭わないように対策することが重要といえます。フィルタリング機能はもちろんのこと、「個人が特定される情報を書き込まない」「知らない人と電話やメール、メッセージの交換をしない」といったルールを親子でしっかりと決めるなどし、リスク管理を行うことが大切でしょう。
(マイナビ子育て編集部)