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2023年09月08日 07:00 更新

学校で受けた性教育は不十分だと思う人が4人に1人、若者の声から見る性教育の実態【前編】

近年、幼児期からの性教育に対するニーズが社会的に高まっています。加えて、学校教育での性教育のあり方を見直すべきという声も少なくありません。日本では包括的性教育の実施が遅れているとも言われます。そこで、性教育の当事者である若者の声を前編と後編に分けて紹介し、性教育の実態を見ていきたいと思います。

これまでの性教育の実態とは?

近年、 子どもと若者の性の社会問題に対する解決策として「包括的性教育」が注目されています。「ユースから見た日本の性教育の実態調査報告書」をまとめたプラン・ユースグループによると、包括的性教育とは、「こどもや若者がセクシュアリティについて前向きに考え、受け入れ、実践することができるように応援する学習プログラム」のこと。包括的性教育のキーコンセプトとして以下の8つがあります。

包括的性教育のキーコンセプト

⓵人間関係
②価値観・人権・文化・セクシュアリティ
③ジェンダーの理解
④暴力と安全確保
➄健康とウェルビーイング(幸福)のためのスキル
⑥人間のからだと発達
⑦セクシュアリティと性的行動
⑧性と生殖に関する健康

(ユネスコ「国際セクシュアリティ教育ガイダンス」)

日本で「性教育」と聞いて思い浮かべる妊娠や避妊、性感染症などだけでなく、人権意識に基づいた価値観や尊厳を学ぶ内容となっています。

日本の学校教育ではこの包括的性教育は導入されていません。そこで本記事では、プラン・ユースグループの報告書から、ユース世代(15~19歳)を対象にした性教育の実態をご紹介します。

これまでに受けた性教育、性感染症・妊娠は8割を超える

これまで学校でどんな性教育を受けてきましたか?

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プラン・ユースグループ「ユースから見た日本の性教育の実態調査報告書」より

これまで受けてきた性教育は「性感染症とその予防について」が83.8%と最も多く、ついで「妊娠について(例:妊娠後の体の変化)」が81.0%となっています。

一方で「プライベートゾーン(水着で隠す部分)を他人に触れさせないこと」が24.6%、「恋人との良い人間関係の築き方」は28.6%と3割以下と低くなっています。

また、人権やジェンダーの多様性については約5割にとどまり、包括的性教育とのギャップを感じる結果となっています。

性教育を「不十分」と思う若者は4人に1人

これまで受けた性教育にどのような印象を持っていますか?

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プラン・ユースグループ「ユースから見た日本の性教育の実態調査報告書」より

これまで受けてきた性教育について「重要である」と感じている人は80.5%と8割を超えており、性教育自体の重要性は伝わっているようです。また、「役に立つ」と答えた人は43.3%でした。

一方、「内容が不十分である」と感じている人が25.1%、「恥ずかしい」は15.8%と少なくないことにも注目が必要でしょう。

これまでに受けた性教育に対する若者の声

最後に、「これまで受けた性教育にどのような印象を持っていますか?」という設問でなぜそう回答したのか、自由記述で質問した結果をご紹介します。

重要だと感じる理由

これまでに受けた性教育に対して「重要である」「役に立つ」「身近である」というポジティブな印象を持つ理由としては、次のような声が寄せられました。

●必ず自分の人生で性を意識する場面が来ると思うから。子どもを作る時に正しい知識が必要だと思うから(18歳女性・愛知)

●望まない妊娠やこういう知識を知っていないと自分にもし降りかかった時対処方法が分からないから(17歳男性・秋田)

●自分の身勝手な行為で、自分だけでなく、相手の人生も壊しかねないから(19歳男性・東京)

●ネットとかでは間違った知識とかが混ざっていたりするが教科書だと正しい情報のみが記載されているから(18歳男性・大阪)

不十分だと感じる理由

一方で、ネガティブな選択肢を選んだ人にその理由を聞いた結果はどうでしょうか。「内容が不十分である」「役に立たない」「身近でない」と回答した人のうち、約半数が自由回答にも記述していました。数多くの意見が寄せられており、学校で受けた性教育が不十分だったという実感を持つ人が少なくないことがうかがえます。その一部を見てみましょう。

実践的でない

●表面的な部分しか教えてくれず、 本当の事は自分でインターネットなどで調べて知識を付けていくしかないから (19歳女性・岐阜)

●教科書だけではわからないこともあったから。友達から情報を知ることもありました (18歳男性・神奈川)

教育方法への疑問

●日本は性教育に関してタブー意識が強く、 妊娠や性感染症について世の中の認識が甘いのではと思うことが多々あるから(18歳女性・栃木)

●女子だけ集めて月経のことについての授業をするなど、 不適切な教育ではないかと思うことが多かったから (19歳女性・静岡)

●学ぶ機会が少ない(19歳男性・広島)

避妊や性感染症、性行為の説明などが不十分

●避妊具の具体的な使い方などは教わらない、女性用のピルの説明も不十分(18歳男性・東京)

●私は自分が真性包茎であり、放置すると悪臭を放ち、性病などのリスクもあることを高校を卒業してから自分で調べるまで知らなかった。学校での性教育は内容が薄っぺらく時間も短いため殆ど記憶に残っていない。事実コンドーム着用は避妊だけでなく性病予防の意味もあることを知らなかった。(19歳男性・東京)

●生理や妊娠について、 女子だけでなく男子もしっかり症状など勉強するべき。無知な男性が多いと思う (17歳女性・静岡)

●はっきりと性行為というものがどういうものなのかということを教えなければ、望まない妊娠や性感染症を防げないと思ったから。(16歳男性・北海道)

セクシュアリティに関して不十分

●セクシュアリティに関しては何も触れてこなかったです。私自身アセクシュアルですし、 これからの時代は性の多様性が当たり前になっていくべきであると思います。そのためにはまず先生がしっかりと理解し、 生徒にきちんと教えるべきであります。未だにLGBTQ+に偏見があるのが悔しいところです(18歳女性・大阪)

●LGBTQへの差別が日本では多いように感じるから教育が足りていないように思う(18歳女性・京都)

人権について不十分

表面的なことしか教えられず、 自分を大切にすることや具体的なことについて教えられなかったから。(18歳女性・愛知)

まとめ

15~19歳に、自身が受けた性教育に対する印象を尋ねた結果、「重要である」などの肯定的な意見が最も多かった一方で、「不十分である」という声も少なくありませんでした。さらに、不十分だと思う理由を見ると、包括的性教育がコンセプトとするものが求められている様子もうかがえ、学校教育における性教育の改革が必要だと考えさせられます。また、家庭内でも性の話をタブー視したり、恥ずかしいものとして扱う雰囲気を作らないことも大切かもしれません。

(マイナビ子育て編集部)

<調査概要>

ユースから見た日本の性教育の実態調査報告書/プラン・ユースグループ
調査地域:全国
調査対象:15歳~19歳の男女
調査時期:2021年1月14日~2021年1月15日
調査方法:LINEリサーチプラットフォーム利用の調査
有効回答数:1,050

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