【医師監修】赤ちゃんの肌にワセリンはどう使う? 正しい使い方と選び方のポイント
赤ちゃんのお肌はとてもデリケート。すぐに赤くなったりかぶれたりしてしまうので、適切なスキンケアが大切です。スキンケアの基本は保湿、そして手軽な保湿剤と言えばワセリン。しかしワセリンは保湿効果(肌に水分を与える効果)は高くなく、外界からの保護作用がメインになります。赤ちゃんのお肌にワセリンを使うときの注意点をまとめます。
「赤ちゃんはしっとり肌」ではない⁉ 赤ちゃんのお肌の特徴
最初に赤ちゃんのお肌(皮膚)の特徴について触れておきます。
みずみずしいのに乾燥しやすい肌
全身を覆っている皮膚の一番の役割は、体の中と外を隔てるバリアとして働くこと。体の外から有害なもの、例えば細菌などが体内に入ってくるのを防いだり、体に必要なもの、例えば水分などが外に逃げて行くのを防いでいます 。
赤ちゃんの皮膚はみずみずしくて弾力もあり、理想的なお肌に見えますね。ところが実際はそうとは言えません 。生まれたばかりの赤ちゃんの皮膚は、大人の皮膚に比べて角質(皮膚の最も外側の層)は大人の40~60%の厚さしかなく、バリアの働きが脆弱です[*1]。角質の水分は大人よりも少なく、ドライスキンになりやすいという特徴があり、とくに空気が乾燥する冬場にその傾向が強まります。
そもそも、赤ちゃんがお母さんのお腹の中にいるときは、赤ちゃんの皮膚は羊水と胎脂(胎児を覆っている皮脂)によって守られています。それが出産と同時に急激に乾燥した空気にさらされることになります。大人よりも薄くバリアの働きが未熟な赤ちゃんの皮膚は、それだけ外部からの刺激を受けやすく、また乾燥しやすいので、スキンケアが必要です。
皮膚に症状が現れる前のスキンケアが大切
赤ちゃんの皮膚に何らかの症状が出てから慌ててスキンケアを始める人がいますが、本当はその前からのケアが必要なのです。症状によっては、スキンケアだけではなく薬などで治療を行わなければならないこともあります。スキンケアはそういったトラブルをできるだけ回避するため、肌が健康なときも欠かさずに行うものです。
なお、肌のトラブル防止には、スキンケアに加え室内の湿度などにも気を付けましょう。冬場はもちろん、夏場でもエアコンをつけていると意外に乾燥するものです。住環境にも気を配り、乾燥しやすい赤ちゃんの肌を守ってあげてください。
赤ちゃんのスキンケアはワセリンから
ワセリンとは、石油から精製された保湿剤です。精製の純度によって色が異なり、純度が低いものは黄色がかっていますが、純度が高いものは白く、「白色ワセリン」と呼ばれます。白色ワセリンの中でも不純物をより少なくし、肌への刺激を抑えたワセリン製品もあります。
ワセリンを塗ると肌からの水分蒸発が抑えられます。また、肌がコーティングされるので、衣服などとの摩擦による刺激を抑えられ、デリケートな赤ちゃんの肌を保護する目的でもよく使われています。
なお、刺激が少なく安全に使用できるワセリンは、軟膏などの塗り薬の基材(お薬のベース)としても使われ、ステロイドなどの有効成分と混ぜて処方されることもあります。
ワセリンが活躍するのはこんなとき
このようなワセリンの特徴は、次のような使い方をしたときに発揮されます。
・ふだんのスキンケア
例えば冬のお肌の乾燥防止。赤ちゃんのほっぺや手がカサカサになってはいませんか? 入浴の後などに、ワセリンを塗ってあげてください。
・おむつかぶれ
おむつかぶれがひどい場合は医師に診てもらったほうが安心ですが、少し赤くなっているくらいなら、おむつを替えるときに、ていねいにケアしてあげるだけでもよくなります。お尻の皮膚をきれいにした後にワセリンを塗ってあげましょう。おむつや便、尿からの刺激から肌を保護する効果も期待できます。
・よだれかぶれ
よだれかぶれに対しては、食事の前に口のまわりにしっかりワセリンを塗って保護膜を作ります。そして食後は皮膚をやさしく洗浄し、ワセリンなどで保湿・保護してあげてください。食事以外の時も常にワセリンで保護しておくことでより効果が高まります。治りが遅いときや症状がひどいときは、医師に診てもらいましょう。
・乳児脂漏性湿疹
乳児脂漏性湿疹(にゅうじしろうせいしっしん)は、赤ちゃんの頭や顔などに黄色っぽいかさぶたを伴うものです。赤ちゃんの3分の1が経験すると言われるほど頻度が高い病気で[*2]、新生児~生後2ヶ月ごろの皮脂分泌が盛んな時期によく見られます。かゆみが強そうな場合などは小児科や皮膚科を受診するといいでしょう。
かさぶたは単に洗うだけではなかなかとれません。ベビーオイルやワセリンを塗ってガーゼなどで覆い、ふやかしてから洗い流しましょう。
ワセリンでは対処できない場合もある
ワセリンはとても便利な薬ですが、処方せんなして購入できるスキンケア用品は、基本的には健康な皮膚への使用を前提としています。おむつかぶれと思っていた症状が、実はカビの一種であるカンジダ皮膚炎だった(もしくは併発していた)ということもあり、その場合は治療方法が変わってきます。何かしら症状がある場合、とくに症状が長引いたり悪化が見られる場合には、医師の診察を受けましょう。
市販のワセリンを使う際に
ここからは、ワセリンを使う前に調べておきたいことを解説します。
使い方を医師から聞いておく
赤ちゃんの肌の保湿のためワセリンなどの市販薬を使う前には、小児科や皮膚科で医師から塗る場所や塗る量、塗るタイミングなどを聞いておくことをおすすめします。
ワセリンの精製度もチェック
ワセリンは、精製度(純度)も大切なポイントです。繊細な赤ちゃんの肌に使うには、精製度が高いものを選びましょう。通常は白色ワセリンであれば問題ないですが、特に肌が弱い赤ちゃんの場合には、その白色ワセリンをさらに精製したプロペトや、さらに純度の高いサンホワイト(保険適用外)も選択肢に入れるといいでしょう。
赤ちゃんの保湿ケアグッズを選ぶコツと注意点
ここで、市販のワセリンやワセリン以外の保湿ケアグッズを選ぶ際のチェックポイントについても触れておきます。
買う前にチェック!
刺激性
保湿製品は低刺激のものが適しています。ヒトの肌は弱酸性ですので、肌につけるケア製品も弱酸性のものがおすすめです。
分量
初めて買うケア製品は、量が多すぎると使い切る前に変質してしまうことがあります。また、肌に合わないこともあります。ふだん使う量がわかるまでは、サイズの小さいものを選びましょう。
容器
チューブになっているタイプとボトルの容器に入っているタイプがあります 。あまり違いはないように思われるかもしれませんが、使い勝手は意外と異なるものです。ボトルタイプのほうは容量が大きくコストパフォーマンスが高いことが多い一方、適量のとりやすさや塗りやすさ、外出時の持ち運びやすさはチューブタイプのほうが便利です 。
副作用などの心配は?
ワセリンを塗った際の副作用リスクは大変低いと考えられますが、接触皮膚炎(かぶれ、発疹、皮膚のかゆみ)が報告されています。そのほかに、アレルギーについてはあまり心配ないようです。
なお、ワセリンはお肌の水分の蒸発を防ぐものの、水分の補給はできません。保湿効果をより高めるには、水分と油分が混ざり合ったクリームや乳液を塗ってからワセリンを重ね塗りするなどの工夫をしてみてください。
まとめ
低刺激の白色ワセリンは、赤ちゃんの肌を外部の刺激から保護してくれる強い味方。実は、外用剤の軟膏にも多く使われる成分です。赤ちゃんのデリケートな肌に使っても肌荒れやアレルギーなどの心配はあまりありません。ただし水分の「補給」はできないので、入浴後やほかのスキンケアグッズで保湿した後のカバーとしての使い方がおすすめです。また、製品によって精製度(純度)が異なるので、パッケージを確認したうえで使い始めてください。
(文:久保秀実/監修:大越陽一先生)
※画像はイメージです
[*1]小児科54(13),p.1865,2013
[*2]小児科診療77(3),p.395,2014
※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました
※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます