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2023年12月01日 10:00 更新

映画『窓ぎわのトットちゃん』を子育ての参考にしたい - 多様性を認め、子どもの意欲を伸ばす教育とは

PR:東宝

みなさんは、大ベストセラー小説『窓ぎわのトットちゃん』をご存じですか? 黒柳徹子さんが書かれた自伝的小説で、ご自身が幼少期に経験したとても素敵なエピソードが書かれています。小説の表紙や挿絵になっているいわさきちひろさんのイラストも大変印象的で、やさしいタッチで描かれている女の子に見覚えのある方も多いかもしれません。

映画のオファーがひっきりなしだったという『窓ぎわのトットちゃん』が、アニメーションとして初めて映画化されることになりました。12月8日(金)から公開されます。今回はその映画をなんと、一足先に観させていただけることに! トットちゃんと同じ小学生の子どもを持つママライターが映画を通して感じたことをレビューしていきます。

窓ぎわのトットちゃん

『窓ぎわのトットちゃん』ってどんなお話?

今から約80年前、第二次世界大戦が終わる少し前の激動の時代。落ち着きがなく、授業の邪魔をしてしまう小学校1年生のトットちゃんは、小学校を退学になってしまうことに。新しい転校先のトモエ学園は、これまでの小学校とは全く違う、とても変わった方針の学校でした。元気いっぱいのトットちゃんが小林先生や学校の友だち、両親と温かく触れ合う姿から、感動と愛情が感じられるストーリーです。

ライタープロフィール
栃尾江美
ルールに縛られるのが苦手な男の子2人と、夫の4人暮らし。子育てに関するWebメディアで取材・執筆、コラム寄稿のほか、子育てに関する書籍の執筆や、編集協力など多数。こども哲学に興味があり、「こども哲学実践講座」(NPOアーダコーダ)を修了。こども哲学のファシリテーターも務める。ライター業のかたわら、子ども向けサービス「ゲームdeコーチング」を運営。

「やりたい!」が止まらないトットちゃんが魅力

トットちゃんの登場シーンは「切符ちょうだい」から始まります。駅員さんが分厚く硬い切符をはさみで切って回収するのを羨ましそうにするトットちゃん。駅員さんに物おじせずおねだりする様子は、まさにトットちゃんならでは。元気いっぱいの明るい女の子だということが冒頭のシーンですぐにわかります。

転校前の学校では、机の天板が開け閉めできることに感激し、授業中でもバタンバタンと大きな音を立てて遊んでしまいます。ほかにも、窓の外を通りかかるチンドン屋を学校に呼び込み、他の子どもたちを巻き込んで歌や演奏をしてもらう始末。楽しいことが大好きで、本当に子どもらしい振る舞いですが、集団行動が必要な場所では「迷惑」となってしまうのはたやすく想像できます。

窓ぎわのトットちゃん

天真爛漫で感受性豊かなところは、トットちゃんの大きな魅力。大人におませなことを言ったり、足が不自由な友だちに「どうしてそんな風に歩くの?」とまっすぐに聞いたりと、見ているとハラハラすることもありますが、そのまっすぐさを抑圧しない環境が映画の中にはありました。

空想が大好きなトットちゃんの頭の中を表現する様子は、まるでミュージカルを観ているかのよう。自由なトットちゃんの思考を表していて、ついこちらまで楽しい気分になりました。

「全部話してごらん」と、何時間でも子どもの話を聞く校長先生

前の学校を退学になり、トットちゃんが新しく転校した先は、「トモエ学園」。校長の小林先生は、トットちゃんとの初対面で「なんでも、話してごらん」と言います。小林先生と2人きりになったトットちゃんは、今頭で考えていることや思いついたことを脈絡なく話していきます。

窓ぎわのトットちゃん

小林先生はそんなトットちゃんに「次はなんの話をしようか?」といやな顔せず話すことがなくなるまで話を聞いていきます。

忙しい日常の中で、子どもの話をすべて聞いてあげられない瞬間があると思います。しかし、多くの子どもは自分のことを話して、誰かに聞いてもらって、興味を持ってほしい。トットちゃんと同じように、映画を観ている私も、小林校長先生のことがすぐに大好きになりました。

窓ぎわのトットちゃん

小林先生の教育方法は、驚くことばかりで、すべて尊敬の念に値します。もっとも印象的だったのは、トットちゃんが汲み取り式のトイレに財布を落としてしまった事件! なんとトットちゃんは、大きなひしゃくでトイレの汚物をくみ上げて外に出し、財布を探し始めたのです。匂いはすごいし、ハエもたかって、汚物が服にもついています。もし目の前でそんな事件が起こったら、ほとんどの大人は奇声を上げて止めにかかるだろうと想像しますが、小林先生の行動は驚くべきものでした。これはぜひ、映画を観て確かめていただきたいです。

本物の電車を教室として使用していたトモエ学園。ある日、新しい車両がやってくるという話を聞き「どうやって運ばれるか見たい!」とトットちゃんをはじめとする子どもたちは思いました。でも、電車が来るのはとても遅い時間だそう。「夜中だから無理だよ」と普通の大人は答えるでしょうが、この時も小林先生は違う対応をするのです。

小林先生を見ていると、私が親という立場で、これまでに幾度となく子どもの「~したい」をへし折ってきたと思い知らされました。それも、とても簡単に。これから大きくなろうとする小さな芽を、摘み取ってしまったのかもしれません。小林先生を少しでも見習って、「~したい」をすくすくと育てられる大人になりたいと感じました。

子どもらしさを取り戻す友だち

トモエ学園にはいろいろな子どもがいて、みんなとても仲良しです。その中で特に印象的だったのは、小児まひがあり、右足と左腕がうまく動かない泰明ちゃんです。

窓ぎわのトットちゃん

そんな泰明ちゃんを、トットちゃんは木登りに誘います。私には、トットちゃんの行動は少し強引な気がして、「余計に劣等感を持ってしまったらどうするの……」と感じてしまいました。

トットちゃんは、いったんは断られたものの、2人は休みの日に学校で待ち合わせをして木登りに挑戦します。待ち合わせに応じるところを見ると、本当は、泰明ちゃんも木登りがしたかったのですね。とはいえ、そのやり方も純粋ゆえにあまりに荒っぽく、大人の立場として観ていると、ケガでもするんじゃないかとハラハラしました。

ところがそれ以降、泰明ちゃんの行動は大きく変わっていきます。とても印象深いエピソードでした。

両親のやさしさ、温かさにも注目

トットちゃんの両親も、温かくとても素敵です。ヴァイオリン奏者のお父さんは、練習場所にトットちゃんを連れ、ドイツ人の指揮者とも触れ合う機会を与えます。裁縫が好きなお母さんは、いつもハラハラしながらもトットちゃんに自由に好きなことをやらせながら様子を見守っています。親子で過ごすおだやかな日常が、とても温かく感じられました。

窓ぎわのトットちゃん

ところが、幸せな描写ばかりではありません。戦争が始まり、食べ物は配給に。とても豪華なお弁当を作っていたお母さんも、お弁当作りがままならなくなります。おしゃれでセンスの良かった服も、彩りも味気もないものになっていきます。

しかし食べ物や着るものに困っている環境でも、ピリピリすることなくこれまでと同じように親子で温かく過ごす様子はとてもすばらしいと感じました。

親は、仕事や人間関係でストレスがかかったり、日々忙しすぎたりすると、子どもに対する言葉遣いがきつくなりがちかもしれません。辛い状況でもお互いへのやさしさを忘れない、トットちゃんの両親のように過ごせたら、と思いました。

映画全体が明るく描かれているところも、この映画の素敵なところ。個人的に私は花が好きなので、背景に書かれている草花には目を奪われました。たくさんの花が色鮮やかに表現されていて、映画の雰囲気を柔らかくしているように見えました。

「君は、いい子なんだよ」と自己肯定感をはぐくむ環境

子育てをする親として映画を観て感じたのは「子どもがこんな学校に通えたらいいな」ということです。物語の舞台は約80年前ですが、今観ても全く色あせていません。現代に生きる私でも、トモエ学園のような教育は理想的だと感じますし、当時も感激した大人が多くてベストセラーとなったのではないでしょうか。

お互いを思いやりながら、やりたいこと、好きなことをのびのびとできる環境。さらに、いろいろな問題を起こしても「君は、本当はいい子なんだよ」と言いつづけてくれる大人がいる。そうやって育った子どもは、自己肯定感がすくすくとはぐくまれ、多少の辛いことがあっても自分の力で乗り越えていけるのではないかと思います。

窓ぎわのトットちゃん

この映画を子どもたちが観たらどんな感想を持つのか、楽しみです。黒柳徹子さんの実話に基づいた小説が題材なので、子ども心に強く印象に残ったことばかりのはず。小林先生の振る舞いや、トットちゃんのお友だちとの付き合い方、戦時中の窮屈な日々、動物や人の命など、子どもでもなにか学び感じ取れることがあるでしょう。とても親しみやすい演出で、大人と子どもが一緒に楽しめる内容になっていると思います。

ぜひ、この冬はお子さんと一緒に映画『窓ぎわのトットちゃん』を観て、お互いの感想を伝えあっていただきたいです。

作品情報
作品タイトル:映画『窓ぎわのトットちゃん』
監督・脚本:八鍬新之介
共同脚本:鈴木洋介
キャラクターデザイン:金子志津枝
出演:大野りりあな 小栗旬 杏 滝沢カレン / 役所広司 他
主題歌:あいみょん「あのね」(unBORDE/Warner Music Japan)
制作:シンエイ動画 原作:「窓ぎわのトットちゃん」(黒柳徹子 著/講談社 刊)
公式サイト:https://ac.ebis.ne.jp/tr_set.php?argument=HL02euFd&ai=a656854c4cbbc1
X(旧Twitter):映画『窓ぎわのトットちゃん』公式アカウント
@tottochan_movie  
Instagram:映画『窓ぎわのトットちゃん』公式アカウント
tottochan_movie
コピーライト表記:©黒柳徹子/2023 映画「窓ぎわのトットちゃん」製作委員会
公開:2023 年12 月8 日(金)公開