てぃ先生、後藤仁美さんが小児科医と語る、全世界で25万人の患者がいる「軟骨無形成症」とは?
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出生児の1万人から3万人に1人の割合でみられ、全世界で25万人以上の患者さんがいると考えられている「軟骨無形成症(なんこつむけいせいしょう)」をご存じですか?
軟骨無形成症の当事者は、低い身長や日常のちょっとした場面で周囲の視線を気にするなど、さまざまな困難や孤立感を感じることがあります。このことについての知名度はまだ低く、適切な支援を受けられないケースも少なくありません。
2024年11月30日、BioMarin Pharmaceutical Japanはオンラインセミナー「市民公開講座 家族と共に学ぶ軟骨無形成症」を開催しました。
同セミナーは、軟骨無形成症についてより多くの方に知識を深めてもらうことを目的にしたもので、小児科専門医の北岡太一先生やカリスマ保育士のてぃ先生、そして軟骨無形成症の当事者でモデル・俳優として活躍する後藤仁美さんが登壇しました。本記事ではセミナーの様子をレポートします!
<登壇者プロフィール>
北岡太一 先生
小児科医。医誠会国際総合病院に勤務。前職の大阪大学医学部附属病院では軟骨無形成症をはじめとする骨系統疾患の診療に従事し、臨床研究や新規薬剤の治験に関わる。軟骨無形成症の子どもたちとの出会いは2004年。今ではその時子どもだった方々も成人に。
後藤 仁美(ちびた)さん
身長115cmの小さな体型と愛らしいルックスを活かして、2015年からモデルとして活動。2017年からは俳優として舞台や映像作品に出演。ドラマーとしての顔も持ち、東京2020パラリンピック開会式ではドラムを演奏。
てぃ先生
現役の保育士でありながら、SNSの総フォロワー数が200万人を超えるインフルエンサーとして活躍。テレビをはじめとする多数のメディアに出演し、「一番相談したい保育士」「カリスマ保育士」として紹介。著書は累計70万部を突破し、育児本カテゴリ1位を獲得。
骨の成長が妨げられる「軟骨無形成症」
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講演の冒頭で北岡先生は、「軟骨無形成症という言葉を目にした時、どんなイメージが浮かんだでしょう? 字面だけ見ると『軟骨の形成が無い疾患』と読み取れるかもしれませんが、軟骨が作られないわけではありません」と解説します。
そもそも、軟骨には「関節軟骨」と「成長軟骨帯(せいちょうなんこつたい)」があります。骨の成長に関わるのは「成長軟骨帯」で、軟骨無形成症の子どもは成長軟骨帯に問題が生じて、骨の成長が妨げられることで四肢が短く、低身長になってしまうのです。
軟骨無形成症の子どもは思春期での身長の成長スパートが無いため、成人になった際の平均身長は男性で131センチ、女性で124センチ程度と低身長にとどまります。北岡先生によれば、「通常の成長曲線から外れるので、軟骨無形成症の子どもの発育度合いは専用の成長曲線で評価する必要がある」とのこと。
また、軟骨無形成症の赤ちゃんは体が小ぶりなものの、頭囲の成長は妨げられずに頭はむしろ大きくなり“乳児期の首がすわるタイミング”が遅れるそうです。中には寝返りが先にできるようになった頃にようやく首がすわる子もいるとのこと。軟骨無形成症では運動発達が遅れがちですが、遅れが目立つ場合は、合併症の可能性に注意する必要があるそうです。
成人以降も合併症のフォローアップが重要
軟骨無形成症の合併症には、大後頭孔狭窄(だいこうとうこうきょうさく)、睡眠時無呼吸症候群(すいみんじむこきゅうしょうこうぐん)、脊柱管狭窄(せきちゅうかんきょうさく)、関節の変形などさまざまなものがあります。大後頭孔狭窄や睡眠時無呼吸は赤ちゃんの頃から、脊柱管狭窄は成人にかけて問題になり、注意すべき合併症は年齢によって変わってくるとのこと。
「脊柱管狭窄は歩行に支障をきたすものですが、乳児期早期の座位保持が腰の曲がりにつながり将来の脊柱管狭窄のリスクになる可能性があります。脊椎の手術治療を受ける人は年齢を経るごとに増加傾向にあると言われています。小児期だけでなく成人になって以降も合併症についてのフォローアップは大切で、小児科医だけでなくさまざまな専門性のある医師の診療が欠かせません」と北岡先生。
軟骨無形成症の疾患としての特徴に続き、話題は患者本人の人生や生活の質の向上にも及びました。
ヨーロッパで実施された8〜17歳の軟骨無形成症当事者の生活の質を調べた調査※では、骨延長術を受けた人は骨延長を受けていない人に比べて、身体的・社会的・情緒的な面で高いスコアを示したという結果が出たそうです。「情緒的な面においてスコアが高いのは、さまざまな困難を抱えながら生きる中で、支えを得ることが当事者の自信を高め、社会での適応力向上につながっているからではないか」と北岡先生は考察を述べました。
一方、成人の場合はどうでしょう。軟骨無形成症の成人の場合、就業において欠勤や生産性の低下に直面する事例が多くあり、軟骨無形成症に特徴的な症状や合併症のために、日常生活では困らなくても仕事場では困る場面があります。
昨今では成長ホルモンやCNP(C型ナトリウム利尿ペプチド)という薬、そして四肢延長術など、治療の選択肢が広がっています。治療を受けることで生活の質の向上は期待されます。しかし、充実した生活を得て、社会的な自信を勝ち取っていくためには、「日常生活、社会生活の中での周囲の人たちの理解と適切なサポートが一助になると考えます」と北岡先生はまとめました。
※Maghnie et al. Orphanet J Rare Dis. 18:56,2023.
「何かをしてあげる」のではなく、「違いを知る」ことが大切
後藤さんが感じた3つの課題
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後藤さんによれば、軟骨無形成症の当事者として生きる中で、日常の課題が大きく分けて3つあったそうです。1つ目は、周囲にじろじろ見られること。2つ目は、学校では、同級生たちと同じ速さで行動するのが難しく、迷惑に思われているんじゃないかと感じていたこと。3つ目は、洋服のサイズが合わないため友達と買い物をしても自分だけ服が買えず寂しい思いをしたこと。
「ジロジロ見てくるのは知らない人なので、常に温かく接してくれている家族や友人を心の支えに、『そのときだけ』と割り切るようにしています。また、SNSで活動を発信し続けたところ応援してくれる人が増え、知ってもらうことの大切さを感じています。洋服はお直しを活用し、体型を強みにしたファッションを楽しんでいます」(後藤さん)
てぃ先生が語る「外に出る」ことの大切さ
てぃ先生は、普段の仕事で軟骨無形成症などの身体的特徴のある子どもと接する機会は少ないものの、これまでの経験から「当事者には特別扱いを求めていない方もいるため、特別視して『何かをしてあげなきゃ』と考えなくてもいいのではないか」と話しました。
「大人が想像するよりも、子どもたちの間では愛にあふれたサポートがよく見られます。例えば、言葉の発達が遅いお子さんが何かを一生懸命に伝えようとしている姿があると、周囲の子どもが先生より先に気づいて『○○ちゃんがこうやって言おうとしているよ』と教えてくれたり、本人の言葉を代弁したりしようとする姿は珍しくありません。大人の過度な支援より、まずは子どもが自発的にサポートし合おうとする環境作りの方がより豊かな成長につながると考えます」(てぃ先生)
“世の中にはいろいろな特徴の人がいる”ことを子どもたちに理解してもらうためには、お子さんと一緒に外に出ることが一番の勉強とてぃ先生は考えます。なぜなら、家の中に居てばかりでは画一的な形や大きさのモノに囲まれてしまい、小さな違いに気づくことが難しいからだそう。
「外ってすべて、何もかもが違うんです。『いろんなお花があるんだね』『どんぐりもそれぞれ形が違うね』『いろいろな色の葉っぱがあるんだね』など、お子さん自身が外でさまざまな違いを発見することで、世界にはいろいろなものがあるということを自然に学んでもらうことができるんじゃないかと考えます」とてぃ先生は説明しました。
その話を受けて後藤さんは、「私も同じように思っていて、外に出ていろんな人や物に触れることで気づきがあるし、私のような軟骨無形性症の人のことも知ってもらえるし。世の中にはいろいろな人がいるってことを知れると思います」と共感を示しました。
背が高い人も、低い人も使いやすいバリアフリーを目指して
テーマは社会的なサポートに移ります。後藤さんは社会に出たときに、駅の券売機やATMなどの液晶画面の位置が高くて手が届かないことなどから、自分一人での行動の不便さを感じたそうです。
しかし、近年ではスマートフォンなどを利用したサービスが普及しているため、モバイルでチャージして運賃を支払えたりキャッシュレス決済を利用したりと技術進化で課題が解決される場面も多いそう。
「私のように軟骨無形成症の人は、外に出て何かをすることのハードルの高い人が多いです。でも、私みたいに小さい人が使いやすい世の中にしてしまったら一般的な身長の人が使いにくくなってしまいます。『みんなが使いやすい』ということをどうすれば実現できるかについて、世の中のみんなで考えていきたいと思っています」(後藤さん)
「優しくされて嬉しかった」がつながっていく教育を
子どもが成長するにつれて親の介入する機会が少なくなる中では、子ども同士でフォローし合う場面が増えてきます。
てぃ先生はそうした際の教育現場における注意点として、「こういうお友達がいるからサポートしよう」「手伝ってあげるのが当たり前」と配慮するのではなく、周囲の大人たちが普段から「ありがとう」や「助かっているよ」と伝えることが重要と指摘しました。
「優しくされたり、感謝されたりしたことによる『嬉しかった』という感情がきっかけとなって、『自分も誰かに優しくしよう』と思えるのではないでしょうか。個人的にも、『自分もやってもらって嬉しかった。だから軟骨無形成症のお友達にもこうしてあげよう』と思えるようになってほしいと思っています」とてぃ先生。
北岡先生は、保育園や学校の先生から「軟骨無形成症のお子さんにどう接したらいいか」という質問をもらうこともあったそうです。
「その際には可能な限り面談をしています。どんなところに困っているか、現在どのような対策ができているかは保育園や学校によって違います。先生ごとに気になることや、現場の実情に合わせた医療的なアドバイスが重要と考え、機会があればオンライン・オフラインを問わず話す場を設けるよう心がけています」と北岡先生は明かしました。
他者との違いに肯定感を持ち、自信を失わない接し方は?
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Q: 周りのお友達との身体的な違いに気づき、「私はどうして小さいの?」と聞かれた場合、親はどのように答えるべきですか?
後藤さん:正解はなく、その場の状況に応じて答えが変わると思います。私の場合、小学生の頃、「なんか私って体型が他の子と違わない?」と親に質問すると「小さくてかわいくていいよね」みたいに言ってくれて、他の人もそういってくれてあまり深く考えませんでした。でも、小学校高学年や中学生の頃にいろいろものがわかるようになって、「そういえば病名ってあるの?」って聞いて、具体的な病名などを教えてもらいました。なので、その子の気になり度合いや、気持ちで答えも変わってくるかなと思います。
てぃ先生:お話を聞いていて私もその通りだなと思いました。保育園では小さいお子さんの親族が亡くなったときになんて答えればいいか、という質問を親御さんからよく受けるのですが、私は「そのお子さんが今、何て答えて欲しいかが正解だと思います」と答えています。軟骨無形成症のお子さんからの質問にどう答えるかも、同じ視点で考えるといいかもしれません。子どもが質問するのは不安な気持ちが理由なことが多いです。事実を伝えることも大切ですが、不安な気持ちに寄り添った安心できる回答もお子さんにとって良い回答になると思います。
北岡先生:年齢に応じて、「何が聞きたいんだろう?」と考えて、返してあげることって大事ですよね。後藤さんのお話にもあったように、お子さんが大きくなるにつれて「なぜ、自分は他と違う?」「なぜ、こうした特徴なの?」とさまざまな疑問が出てきます。医師の立場からすれば、お子さんの疑問に答えられるよう親御さんには正確な知識を持ってほしいと思います。
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後藤さん:このイベントに参加したことで私も勉強になりました。「自分がこの体で良かった」と私は思っています。みんなと違うことが目に見えてわかる分、「違いをどうポジティブに捉えたら楽しくなるかな?」と常に考えています。軟骨無形成症の当事者の方が自分の強みを見つけたり、親御さんがお子さんの強みを見つけたり、今回のセミナーが親子で一緒に楽しく過ごしていけるきっかけになったら嬉しいです。
てぃ先生:知ることからすべては始まるなと思いました。軟骨無形成症のお子さんを育てている親御さんに伝えたいのは、お子さんの楽しいことや好きなことを見つけながら自分自身の楽しみを探していってほしいということです。そうすることで、より良い子育てにつながっていくんじゃないかと思います。
北岡先生:今回のセミナーで、少しでも軟骨無形成症について理解が深まっていただけたら幸いです。新しい治療法や薬の開発は進んでいて、成長過程にいる子供たちにとって未来はどんどん変わっていくと思います。これからもいろいろな情報を集めて、軟骨無形成症を知っていってほしいです。
今回のセミナーを通じて、参加者のみなさまは軟骨無形成症の知識を深め、当事者の声や専門家の視点から多くのことを学べたのではないでしょうか?
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