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2021年11月02日 12:10 更新

3歳児神話から自由になる! 愛情をかける大人は母親でなくてもいい『新・ワーママ入門』Vol.2

「保育園に預けるのはかわいそう?」「職場に迷惑をかけるかも」など、ワーママの悩みはつきないもの。でも、ちょっと考え方を変えたり工夫したりすることで悩みは解決できるんです!『 新・ワーママ入門』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)より、令和のワーママに役立つマインドやアクションを紹介します。

両立不安神話「3歳までは母親が子育てしないといけない」

かわいいわが子を大切に育てたい気持ちは、親になれば皆同じ。でも、働く女性たちは子育てに時間を長くかけられるわけではありません。「ずっと一緒にいられなくてごめんね」という罪悪感がムクムクと膨らんでいきます。

保育園が不足している現状では、復帰のタイミングは子どもが歳のうちに入園の準備をする家庭がほとんどですし、「できるだけ早く仕事復帰したい」という女性も少なくありません。
厚生労働省の調査によると、育休取得期間で最も多いのは「10カ月〜12カ月未満」で31.1%、次いで「12カ月〜18カ月未満」27.6%、「8カ月〜10カ月未満」12.7%(https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/71-27-07.pdf より)。7割以上の女性が子どもが1歳半未満で職場復帰し、子どもが0歳での復帰組も半数近くいることがわかります。

そんな実態から離れて女性たちを苦しめているのが、”3歳児神話”です。 「3歳までは母親が育てないと、子どもの発達や成長に影響がある」――そんな神話がまことしやかにささやかれ、プレッシャーを感じてしまうのです。

愛情をかける大人は母親でなくてもいい

この神話の真偽については、人によって意見が分かれるところですが、私は声を大にして「そんなことはありません!」と言いたいと思います。

人間の愛着形成のために、産まれてから数年間に身近な大人から愛情をたっぷり受けることが大切であることは、研究でも明らかになっています。
しかしながら、愛情を与える主体が"母親だけ”である必要はないということも同時に、研究で明らかになっているのです。
根拠は、厚生労働省が実施した保育条件と発達の関係についての追跡調査(平成16年厚生労働省研究班調査より)。その報告によると、1998年時点で夜間保育所80カ所に通う園児約3000人を対象に、5年後の2003年時点での発達の状況を調べたところ(有効回答数185人)、「保育時間の長さの違いによって、子どものコミュニケーション力や運動発達に差は生じない」ということがわかりました。

ただし、「家族で食事をする機会がどれだけあるかによって、コミュニケーション力に差異は出た」という結果も。これは、「親しい大人と面と向かって会話できる時間が重要」という意味であり、母親である必要性を説いていません。
孤食ではなく、パパや、保育園の先生、近所の大人など、親しい大人と今日あったことを話し合いながら食事をすることが、コミュニケーションに良い影響を与えるということなのです。

母親に過剰に子育ての役割を期待する3歳児神話。本来は多くの大人で担っていた役割が、高度経済成長期の"専業主婦奨励”の世の中で、女性たちだけのものになってしまったのかもしれません。
高度経済成長期の時代、一人で子育てを担われていた親世代の皆さんに深い敬意を感じながら、社会環境が変化した現代では、意識も子育てスタイルもアップデートする必要があると考えます。

みんなで子育ては、親子双方にとってプラス

子育てにどれくらい関わりたいかという価値観は人それぞれですので、「私は自分の時間を100%使ってわが子を育てたい」と心から願う人は、もちろんそのスタイルを貫いていただきたいと思います。

ただ、「ワンオペ育児」が社会問題化しているように、核家族の中で子育てを一人で抱えるのは本当に大変なことです。悲しい現実としては、他者の手を借りずに子育て(孤育て)をしていて産後うつになり自殺する方は2015〜16年で約92名にも上り、妊産婦の死因のトップと言われています(国立成育医療研究センターより)。またこの傾向に陥ってしまうのはワンオペ育児をしている方に多いと言われています。
それもそのはず。現代では経験がないまま子育てをしている人がほとんどなのです。平成15年版厚生労働白書では、「出産前に乳幼児のお世話をした経験がない」と65%以上が回答しています。

子育てははじめは誰もが初心者ですし、不測の事態がいつでも起こり得る一大プロジェクトです。200人以上のベビーシッターを経験してきた私の実感としても、一人で子どもと真剣に向き合う集中力が続くのは4時間がマックス。
ここぞという時には親がしっかり向き合うことが不可欠ですが、子育てにはできるだけたくさんの人の手と目があることが、親子双方にとってプラスになると強く感じています。

多くの人の手を借りること。親はラクになれるからいいとして、子どもにとっても本当にプラスなの?
そんな疑問を感じた方もいるかもしれませんね。答えはYESです。

人間は「社会的な動物」と言われ、集団の中での自己の位置づけや関わり方を学んでいきます。子どもは身近な大人をモデルとして、その言葉や行動を真似たり、吸収したりして成長していきます。
乳幼児だけではなく、小学校以降にも、多様な大人を知ることで、これからの社会をたくましく生き抜く力につながります。早くから親以外の大人やお兄さん、お姉さんたちに受け入れられて育った子どもは、物怖じせず社交的になる場合が多くあります。
愛着は、継続的に世話をしてくれる人であれば、複数の愛着対象に安定した愛着を形成することができるという研究結果もあるように、多くの安心できる大人に囲まれることで、「自分はいろんな人に愛されて育ってきた」「親以外の大人も自分を受け入れてくれた」という体験を多くすることができます。このような経験が多いほど、自己肯定感が高まり、新しいことにチャレンジしようとする精神も育つと、教育学博士の鈴木忠氏も述べています(『生涯発達心理学』有斐閣刊より)。

親にとっては、他人が自分と同じ目線で子どもを見守ってくれることに安心感を感じます。また、子どもに対して多様な生き方の選択肢の提供をすることができます。
スリールの受け入れ家庭の皆さんからよくいただくのは「学生が子どもを愛してくれて、子どもの成長を一緒に喜んでもらえるのが嬉しい」という言葉です。 自分やパートナー以外の人から「今日もお友達と元気に過ごしてましたよ」「今日はこんなおしゃべりをしてくれました」「この半年で、こんな行動が見られるようになりましたね」と日々の成長の気づきをもらえて、喜びを分かち合える。そんなやりとりを通じて、親になる喜びやわが子への愛着が一層育っていくものなのかもしれません。

社会の変化が激しい中、自分の人生だってどうなるかわかりません。ましてや、子どもたちの時代のことは、親たちでは予測不可能なことばかりです。だからこそ、親だけの価値観で子どもを育てるのではなく、多様な大人に出会わせていくこと自体が子どもの「自律」につながっていくのです。

(文:堀江敦子『自分らしい働き方・育て方が見つかる 新・ワーママ入門』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)より一部抜粋/マイナビ子育て編集部)

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多くのワーキングマザーたちの悩みに応える、新世代のワーママのバイブル。
著者の堀江敦子さんは、これまで200名以上の赤ちゃんのベビーシッターを経験し、1000以上の共働き家庭と出会い、1万人以上の仕事と子育てに悩む人へ研修や講座を提供。その中から導き出した、マインドセットとアクションが紹介されています。

仕事・家事・子育ては「みんなでやる」が、現代のスタイル。
すべてを完璧にこなすスーパーウーマンにならなくていい。
職場にも家族にも迷惑をかけちゃいけない、と気を張らなくていい。
少しのマインドセットで、アクションで、必ず変わる。
あなたらしい働き方・育て方を一緒に見つけていきましょう。

堀江敦子さんのプロフィール

スリール株式会社代表取締役社長。日本女子大学社会福祉学科卒業。大手IT企業勤務を経て、25歳で起業。両立支援や意識改革を得意とし、企業の研修・コンサルティング、大学・行政向けにライフキャリア教育を実施。「子育てしながらキャリアアップする人材・組織を育成する」をテーマに、人材育成事業を展開。内閣府男女共同参画会議専門委員、厚生労働省イクメンプロジェクト委員、東京都文京区ぶんきょうハッピーベイビー応援団委員など、複数行政委員を兼任。千葉大学教育学部の非常勤講師も務める。2013年日経ウーマン「次世代ガール25人」選出、2015年日経ビジネス「チェンジメーカー10」選出、2018年「第9回若者力大賞ユースリーダー賞」選出。

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