子供がいきなり嘔吐! 冬に多い「お腹の風邪」の基本的な対応、小児科医が教えます
毎年12〜5月は、非常に感染力の高い「ノロウイルス感染症」のハイシーズンです。いざという時に慌てたり、間違った感染対策で、家族じゅうが感染したら大変! そこで、嘔吐や下痢の正しい対処法を知っておきましょう。
特に広まりやすいノロウイルス
急に子供が吐いたり下痢したりすると、驚いてしまいますね。「嘔吐下痢症」は、ウイルスや細菌などによって消化器官に炎症が起こる病気です。他に「お腹の風邪」「胃腸炎」などと呼ばれることもあります。その他、ウイルスの名前で「◯◯感染症」と呼ばれることも。
ウイルス名で呼ばれる嘔吐下痢症で最も有名なのが、毎年12〜5月頃に流行する「ノロウイルス感染症」です。ノロウイルスには、汚染された牡蠣などの二枚貝を生や加熱不十分な状態で食べた時、感染者の糞便や嘔吐物が体内に入った時に感染します。糞便や嘔吐物が乾燥して舞いあがった場合にも感染してしまうため、広まりやすいのが特徴です。
嘔吐下痢症に効果的な薬はない
実際に感染すると、1日に10回くらい吐いたり、頭痛や発熱、腹痛などを伴ったりと激しい症状を起こすことがあります。迅速診断キットはありますが、保健適用は3歳未満と65歳以上のみが適応ですし、症状や状況から診断されることが多いでしょう。なぜなら、どのウイルスの嘔吐下痢症でも効果的な抗ウイルス薬はなく、対症療法しかないからです。
ですから、嘔吐下痢症になったら、家でゆっくり過ごさせ、脱水症にならないよう水分をしっかり与え、食べられるようなら通常通り食事をあげてください。2000年に 「Journal of Pediatric Gastroenerology and Nutrition 30(5)」に載った急性胃腸炎の治療の柱が参考になります。
<急性胃腸炎によい治療の9つの柱>
(1)脱水の水分補正には経口補液剤(Oral Rehydration Solution)を用いる
(2)使用ORSは低張液とする
(3)ORSによる脱水補正は急速(3〜4時間)に行う
(4)食事の再開は早く行い、固形食を含む正常食とする
(5)治療乳は不要
(6)希釈乳は不要
(7)母乳栄養児では母乳を続ける
(8)治療中の水分喪失はORSで補正する
(9)不必要な薬物は使用しない
食べられるなら、普通に食事を
ここにあるように水分は、できたらドラッグストアなどで購入できる経口補水液(OS-1)、またはリンゴジュースを水で2倍に薄めたものを、30分に50mlくらいのペースであげましょう。よくあるスポーツドリンクは糖分が多すぎて脱水の予防や治療には向きません。
乳児は、母乳の子は母乳を、育児用ミルクの子はミルクを満足するだけあげてください。そして幼児以上は、食べられるなら、脂っこい・冷たいものなどの消化に悪いものだけを避けて、普通に食事を食べさせましょう。食事をやめている時間が長くなると、かえって腸管の回復が遅れるからです。
最後に感染予防対策です。嘔吐下痢症にならないためには、食品をしっかり加熱し、手洗いをこまめにしましょう。手にアルコールを吹きかけるだけでは予防になりません。また、家族の誰かが発症したら、タオルや食器を共有しないようにします。汚物処理の際は、使い捨て手袋を使い、薄めた次亜塩素酸ナトリウム(市販の塩素系漂白剤2ml+500mlの水)でひたすように拭いてください。
森戸やすみ『小児科医ママの子どもの病気とホームケアBOOK』(内外出版社)
(編集協力:大西まお)