
【医師監修】ロタウイルス感染症とは? 原因や症状、対処について
5歳になるまでにほとんどの乳幼児が感染してしまうと言われているロタウイルス。嘔吐や下痢、発熱を繰り返し、脱水症状を引き起こしたり、重症化してしまうと入院が必要になるケースも……。今回はそんなロタウイルス感染症の原因や症状、対処すべきことや注意点など保護者にとって必要な情報をまとめました。
ロタウイルスの危険性


ロタウイルス感染症とは?
ロタウイルス感染症とは、乳幼児が感染しやすい胃腸炎です。特に初めて感染したときに、激しい嘔吐・下痢などの症状が出ることが多いです。場合によっては入院が必要になるケースも少なくありません。
毎年、年末ごろから感染が広まり始め、春先に流行のピークを迎えます。非常に感染力が強く、わずかなウイルスが体内に入るだけで感染してしまうのが特徴です。
赤ちゃんがなりやすいのはなぜ?
ロタウイルスは5歳までの乳幼児、特に生後6ヶ月〜2歳までの時期に最も感染しやすいといわれています。それは、ウイルスに汚染された水や食べ物を口に入れてしまったり、ウイルスが付着したものを口に入れてしまったことなどが原因で感染するから。赤ちゃんにとっては、おもちゃなどを舐めることなど日常的なこと。とくに保育園などの集団生活の場では、あっという間に感染が広がってしまうこともあるのです。
親にも感染するの?
乳幼児に発症が多いロタウイルスですが、大人に感染することもあります。しかし、重症化しやすい乳幼児とは違い、過去にロタウイルスに感染し、免疫のある健康な大人であれば、発症しても軽いムカつきや倦怠感、軽度の腹痛などで、症状も数日でおさまることがほとんどです。
ロタウイルス感染症の原因と症状、注意点
ロタウイルス感染症の症状
ロタウイルスに感染すると、2日〜4日程度の潜伏期間を経て発症し、下痢・嘔吐・発熱などが引き起こされます。また、下痢や嘔吐により脱水症状に陥りやすいので、注意が必要です。
乳幼児のロタウイルス感染に最も特徴的なものが便の色。白っぽく乳白色のような色をしている水便で、乳製品が腐敗したような鼻につくすっぱいにおいがします。
ロタウイルス感染症の症状は、1~2週間程度で治まることが多いのですが、重症化する場合もあります。
どこで感染? 感染経路や原因は?
ロタウイルスは感染力がとても強く、ロタウイルスに感染した人の便には1gあたり10億個のロタウイルスが含まれており、そのうち10~100個程度のウイルスで感染するほどだと言われています。
感染経路はウイルスに汚染された水や食べ物、ウイルスが付着したものなどを口に入れてしまったことなどが原因となる経口感染と考えられています。保育園などの集団生活の場で感染が広がることが多いでしょう。
気をつけたい合併症
ロタウイルス感染症に初めてかかった場合、症状は特に重くなりがちです。下痢や発熱・嘔吐に関して注意が必要なのはもちろんのことですが、ひどい下痢・嘔吐による脱水症状や、合併症として、けいれん、肝機能異常、脳症などが起こることもあります。
意識が朦朧(もうろう)としていたり、けいれん等の症状が見られたりしたら、すぐに小児科を受診しましょう。
ロタウイルスの治療法は?
病院へ行くべき? 家での対処法は?
下痢や嘔吐、白い水便などロタウイルス感染の兆候が見られたら、小児科を受診するようにしましょう。白い水便はロタウイルスに特徴的なものなので、便の状態をお医者さんに説明するために写真を撮っておくと診療がスムーズになります。
また、医療機関によっては二次感染を防ぐため、別室に通される場合もあります。予約を取る際にロタウイルス感染の疑いがあることを伝えておくといいでしょう。
ロタウイルス感染症の可能性がある場合、市販の下痢止め薬の使用は避けたほうがいいでしょう。下痢の中には止めてもいい下痢と、止めないほうがいい下痢の二種類があります。ロタウイルス感染時の嘔吐や下痢には、ウイルスを体外に排出するという大切な役割があるため、薬の使用によって排出を止めてしまうと、かえって症状が悪化する可能性があります。
どんな治療をするの?薬は?
現時点で、ロタウイルス感染症に特効薬は存在しないため、水分補給や栄養補給といった対処療法が中心です。脱水症状を防ぐため水分・栄養補給を行い、万が一脱水症状を起こした場合は、点滴もしくは経口補液(口から電解質溶液を与えること)などを行います。
入院する事もある?
通常は数週間程度で治りますが、ロタウイルス感染が重症化することもあります。特に初めて感染した場合は重症化しやすいことが知られており、注意が必要です。
口から水分がとれない、ひどくぐったりしているなど、症状が重くなったときには、すぐ医療機関を受診してください。水分・栄養の補給をするだけでなく、場合によっては入院治療が必要になるケースもあります。
ロタウイルス感染中の過ごし方
食事やミルクはどうする?
ロタウイルスに感染したとき、重要なのは水分補給。脱水症状を引き起こさないよう、こまめに水分を与えるようにしましょう。食事に関しては、食欲がない場合は無理に与えなくても大丈夫です。経口補水液など水分のみを少しずつ何度も与え、100cc程度飲めるようになったら、ゆるめのおかゆから食べさせ始めましょう。母乳を飲んでいる場合は、欲しがるだけ与えてあげましょう。
看病するときのポイント
繰り返しになりますが、まずはこまめに水分補給をしてあげましょう。一度に大量に飲ませると嘔吐をしてしまう可能性があるので、体重10kgにつき10mlを5分おきに様子を見ながら飲ませてあげてください。飲ませるものは経口補水液や薄めたスポーツドリンクなどがいいでしょう。
また、下痢が続くとおしりが赤くただれてしまったり、おむつかぶれを起こしてしまう可能性があるので、こまめにおむつを替えてあげましょう。
大人にもうつる? 二次感染を防ぐには
ロタウイルス自体は感染力が非常に強いため、大人にも感染することがあります。ロタウイルスは大人が感染しても症状はそんなに重くならないケースがほとんどです。感染者の便にはロタウイルスが含まれているので、おむつ替えをした後は必ずせっけんで手をしっかり洗いましょう。使い捨てのマスクや手袋をしてお世話をするとより安心です。
また、嘔吐物にもウイルスが含まれているので、嘔吐物が服に付着した場合は通常の洗濯とはわけて、次亜塩素酸ナトリウム液の消毒液につけてから洗濯をしてください。
ロタウイルスの予防接種
予防接種の効果や費用は?
ロタウイルスは、5歳になるまでの子供の多くが、一度は感染してしまうウイルスです。ただし、ロタウイルスの予防接種を行っておくことにより、ロタウイルスに感染したときに、重症化を防ぐことが可能と考えられています
ロタウイルスのワクチンは任意接種のため費用がかかりますが、自治体によっては助成金制度があるので、自己負担額を軽減させることができます。ただし接種できる期間が決まっているので、ロタウイルス予防接種のスケジュールなどをよく確認しておきましょう。
まとめ
ロタウイルス感染症は、5歳までにほとんどの子供が感染するありふれた感染症です。感染力が非常に強く、大人は感染してもほとんど症状が出ないことが多いのですが、乳幼児にはときに激しい下痢や嘔吐を引き起こし、重症化することもあるため、注意が必要です。決められた期間にワクチンを接種することで、重症化のリスクを下げることができます。また、ロタウイルス感染の可能性がある場合は、自己判断で下痢止めなどの薬を飲ませることは避け、小児科を受診するとともに、こまめに水分をとらせて、脱水症状を起こさないようにしましょう。
※この記事は 医療校閲・医師の再監修を経た上で、マイナビ子育て編集部が加筆・修正し掲載しました(2018.06.25)