公共の場で騒ぐ子どもを静かにさせる効果的な方法とは? |声かけ・接し方大全#4
通常学級に通う小中学生の中で、発達障害の可能性がある子は8.8%いるとされています(2022年、文部科学省調査)。そんな特性がある子どもたちへの対応をまとめた「発達障害・グレーゾーンの子がグーンと伸びた 声かけ・接し方大全 イライラ・不安・パニックを減らす100のスキル」(講談社)は、親としての“気づき”が満載です。
発達障害がある子、その可能性がある子、そうでない子……いろいろな子どもたちがいますが、「我が子のいいところを伸ばしたい」と思う気持ちは全ての親に共通しています。そんな方に知っていただきたいことを、元小学校教諭で現発達支援コンサルタントの小嶋悠紀氏の解説でお届けします。
第四回の今回は、「子どもがうるさいときは」「『勝ち』にこだわる子には」についてです。
無声音「シーッ」が効果的
公共の交通機関、授業中の教室、病院の待合室、冠婚葬祭など、「静かにしていなければいけない場所・タイミング」はたくさんあります。
でも、子どもが静かにできるとは限りません。空気が読めないため騒いでしまう子もいれば、声量の調整がうまくできず、大きな声で話してしまう子もいます。
ところが、子どもに負けじと大声で注意をしても、意外と効果はありません。それどころか、マンガのように注意した大人が悪目立ちしてしまう場合もあります。
子どもに黙ってほしいときは、人差し指を唇に当てて、無声音で、
とやってみてください。音はだんだん小さくしていき、それに合わせて、手を下げていきましょう。「手を下げる」行為を通じて、声量を下げるイメージを視覚的に伝えることができます。海外でもよく使われている方法ですが、とても効果があるのでおすすめです。
ゲームで「負ける経験」をさせる
マンガで紹介した事例は、実際にあったことです。こんなふうに、「勝ち」にこだわるあまり、たかがジャンケンでパニックを起こしてしまう子もいるのです。
運動会の徒競走の練習で、走っているうちにほかの子と差がついていき、三着になるのが確定したところで大声で泣き叫び始めてしまった子もいました。
勝負が始まった瞬間、その子の頭は「自分が勝ったイメージ」でいっぱいになり、負けた瞬間に見通しが崩れるので、混乱するのではないか──そう私は考えています。
もちろん、単に負けず嫌いな性格の子もいるでしょうが、いずれにしても「勝ちへのこだわりが強すぎる子」には、「負ける経験」を積ませて、慣れさせなければいけません。
私は、ゲームを使って次のように教えることにしています。
まず、UNOやトランプのようなカードゲームを用意します。
そして子どもとそのゲームで遊ぶのですが、ここで大事なのは、大人ができるだけ、子どもを「負ける寸前」まで追いつめることです。
そして、追いつめるだけ追いつめたあと、最後には勝たせてあげます。
この「追いつめて→勝たせる」を何度も何度もくり返しましょう。根気よく、何度もくり返していると、〈今日は子どもを負かしても大丈夫だ〉と思えるタイミングが、きっと見えてきます。そんなタイミングの判断は、たとえば、
・負けそうになるといつも表情が険しくなるが、今日はそうじゃない
・追いつめられるといつも目が吊り上がるが、今日はわりと穏やかだ
といったような場合で、そのときはためらうことなく、大人が勝ちにいきましょう。勝負がついたら、負けた子に、
「負けたときは、『ま、いっか』と言ってごらん」
と、気が楽になるスキルを教えてあげます。
そして次回、勝負して子どもが負けたとき、取り乱さず「ま、いっか」と言えたら、
「よく負けを受け入れたね! 『ま、いっか』と言えてえらい!」
とほめるのです。こんなふうに、ゆるやかに負ける経験を積ませてあげてください。
書籍『発達障害・グレーゾーンの子がグーンと伸びた 声かけ・接し方大全 イライラ・不安・パニックを減らす100のスキル』について
\教えたいことが確実に届く! 子どもが変わる! 成長する!/
これまで2000人を超える人の支援に関わってきた特別支援教育のエキスパート・小嶋 悠紀氏が送る「支援スキルの大全集」。イライラ、パニック、暴言・暴力など、解決の難しい問題にも効果があります。
✅ こだわり行動を終わらせて、切り替えてもらうコツ
✅ パニック寸前になっている子の見分け方
✅ 怒りの爆発を防ぐために、最初にかけたほうがいい一言
✅ 順番を守れない子に、順番の守り方を教える方法
✅ 不安を募らせがちな子との向き合い方
✅ 反抗的な言動を口論に発展させない「返し方」
など、多くの発達障害・グレーゾーンの人と関わるなかで磨き上げられた、子どもたちへの「声のかけ方」「接し方」、そしてアセスメントの100の方法が紹介されています。
<2児の母・マイナビ子育て編集者が読んでみた!>
事例がとても具体的にわかりやすく漫画やイラストで描かれており、「あーこれはやりがち」「こうすればよかったのか!」と反省しつつ、気づけば夢中で読んでいました。夫に共有したいページに付箋を立ててたら、本が付箋だらけに……!! イライラや不安を抱きつつ、手探りで子育てしている保護者にとって救いとなるヒントに溢れた一冊です。
著者|小嶋悠紀氏について
1982年生まれ、株式会社RIDGE SPECIAL EDUCATION WORKS代表取締役、発達支援コンサルタント、元小学校教諭。信州大学教育学部在学中に発達障害がある人を支援する団体を立ち上げ、代表を務める。卒業後は長野県内で教員を務めながら、特別支援教育の技術などをテーマに全国で講演を実施。県の保育士等キャリアアップ研修や、幼稚園・小学校・中学校・高等学校・特別支援学校の養護教諭むけの研修なども担当する。2023年より現職。直接の指導や支援会議への参加を通じてこれまで2000人をこえる子どもの支援に関わり、センサリーツール「ふみおくん」の開発にも携わった。おもな著作に『発達障がいの子供を教えてほめるトレーニングBOOK』『小嶋悠紀の特別支援教育 究極の指導システム1』(教育技術研究所)などがある。
■Instagram:@oshietekojit