15年経ち、我が子に言われて気づいた「結局、自分中心やった」12人産んだ助産師・HISAKOさん取材【1】
家族のため、子どものためにがんばっているのに、いつもイライラしてばかり。毎日これでいいのかな?と思っているママたち必見!「5万人を子育て支援して見つけた しない育児」の著者で、12人のママでもある助産師HISKAKOさんにママが笑顔になれる考え方をうかがいました。
お話をしてくださった方
HISAKOさん
(助産師・12人の母)
嫌いなことは最低限、好きなことはとことん!
――著書「5万人を子育て支援して見つけた しない育児」では「ママにとって心地のいい方法、ママが笑顔でいられるやり方を選んでほしい」という言葉が印象的でした。HISAKOさん自身がそのために実践していることや、しないでいることを教えてください。
HISAKO 私は、好きなことはとことんやります。みんなに「え、やりすぎ」って言われても、とことんやる! 例えば文章を書くのが大好きで、そういう仕事を与えられると徹夜でやっちゃうんです。まわりには「がんばりすぎだよ」「睡眠とりなよ」「こんなに早く仕上げなくてもいいのに」って言われるけど、私はやりたいんですよね。
「心地よい方法」「笑顔でいられるやり方」っていうのは、結局、したいなって思うことをとことん突き詰めていくこと。好きなことをやることは、がんばっているうちには入らないと思っています。
逆に、苦手だな、嫌だなと思うことはやらないでいますよ。例えば、アイロンがけは苦手で嫌い。保育園の運動会のゼッケンにアイロンをかけるのも嫌なくらいで。
苦手なことでは「主婦としてどうなの?」っていうこともやってしまいます。先日、講演会の衣装をスーツケースに入れて持っていったら、しわくちゃになってしまいました。普通はホテルでアイロンを借りるところだけど、当日の朝、私が何をしたか……そのまま洗面所に持って行って、ジャーっと水で濡らして。「大丈夫!乾く、乾く!」って。でも裾は水が滴(したた)ってボタボタで 笑
――その衣装は、乾きましたか?(心配)
HISAKO 乾きました! シワもちゃんととれましたよ。普通、そんなことしないですよね。でも、それをやってでも嫌いなことは最低限にする。一般的には「ありえへん」って思われるけど、私はそれで笑顔で元気でいられるから。それでOK。
さらけ出して力を抜くと、生きやすくなる
HISAKO 若いママさんたちは、自分のイケてない部分を話したらどう思われるんやろうって不安で、カッコつけちゃうことがありますよね。そこをさらけ出して「私、こんなんできへんねん、終わってるやろ! アハハ!」って。「でも私、それでめっちゃ機嫌良く生きてんねん!」って伝えることができるようになると、力が抜けて本当に生きやすくなりますよ。
――ママとして自分がどう思われるか考えてしまって、難しい人もいそうです。
HISAKO 私もそうできるようになったのは40歳超えてからなんですよ、実は。30代はね、カッコイイ助産師さんでいなければ、みんなの見本にならないと、ってずっと思ってた。そうせざるを得ない部分もあったかな。それが40歳を超えたら、もうどうでもよくなってきちゃって 笑 かっこいいところも、悪いところも見せられるようになったんです。そしたらすごい楽になって、笑顔でいられるようになって。子どもにもイライラしなくなって、穏やかでいられるようになった。ダメな自分も、私自身が認められるようになったからです。
こんな自分だけどOK! ママの自己肯定感
――自分のダメなところを、自分で認められるかがポイントですね。
HISAKO ママは完璧じゃなくていいんです。子どもたちも、完璧にしようとしているママに育てられているとしんどくなる。「このママに応えなくては」とか、「ママみたいに自分はできてない……」と思ってしまうんです。ママも、見返りを求めているつもりはないんだけど、「これだけやってあげてるよね?」って、してあげてるのに感が出てしまう。
ママさんたち、よく「パパにやってあげてる感をだされるとムカつく」って、「それ出さへんかったらかっこいいのに」って言いますけど、それと同じで。出しているつもりはなくても、子どもからみたら「ママがこんなにやってあげてるやんか、応えろよ」っていうプレッシャーがかかっている。すると「がんばるのはママ自身の満足のためにやっていることで、ぼくのことは何も想ってないよね」「誰もわかってくれない」みたいになっちゃったりね。
そんなことも、この15年くらいの子育てでよく分かるようになって。だから子どもに自己肯定感をあげてもらうために、自分のダメなところも語って、それを笑い話にしていくことにしました。そうすると、「こんなママでも一生懸命やってるから、ぼくもこれでええやん」と。「ダメなところばかりじゃなくて、こんな素敵なところもあるんやから、それはそれでええ」って。そうやって力が抜けて、失敗してもまたチャレンジしてみようって、なるかなって。それに気づいて実践できるようになったから、下の子どもたちはあきらかに上の5人とはちがって、自己肯定感が高いです。
――親自身が自分のダメなところを認めている姿を見せれば、子どもの自己肯定感も高くなりそうです。
HISAKO そうなんです。みんな子どもに自己肯定感が高くなってほしいっていうけれど、そう言うママたちの自己肯定感が低いですよね。子どもに求めるだけではなく、子どものダメなところも認めてあげないといけない。それに、がんばる自分を評価する、がんばる私がカッコイイ、っていうのは自己肯定感じゃないので。そうではなくて、いいところも悪いところも含めて、こんな自分やけどいいところもあるからOKかなって、ママ自身がまず思ってあげること。そうすれば子どもたちも同じように思うから、子どもの自己肯定感が上がっていくんです。
経験を積み重ねないと気づかないこと
HISAKO ママ自身が自己肯定感をあげるためにどうしたらいいかというと、答えは簡単なんですよ。「とにかく、待て」です。私は子育て歴15年目で40歳でそこに行き着いた。同じようにあと10年、15年子育てをやってみ。そうなるから。そのために何かするんじゃなくて、その時期がくるのを待って、ということです。がんばったところで、そんなんできへん! あきらめろーって 笑
――HISAKOさん自身も、自然とそうなったのですね。
HISAKO そうです、子どもってすごい洞察力や観察力があって。特に女の子は。うちの女の子たちは直球を投げてきますね。「ママは自分がかわいいんやろ?」「自分が満足するために子どもにこれをさせようとしてるんや」「ママが自分のペースで動きたいのに、それが崩されることにイライラしてるんやろ?」って。イタイけど、本当その通りですね。例えば、子どもがおしっこを漏らしたときって、漏らしたことに怒っているんじゃなくて、漏らされたことによって予定がくるったことにイライラしているんですよ。子どもが夜ぐずったら、子どもがぐずっていることではなくて、自分が眠れないことにイライラしている。結局全部、自分中心やったんやなって気がつきました。
――お子さんたち、鋭いですね。
HISAKO 子どもが12人いたら、そんなことを繰り返していくんですね。みんながそれぞれ、自分の視点で言ってくれるから。そこで気づきながら改善していって。ダメな自分を認められるようになったのが、だいたい子育て15年目のとき。子育ての真髄って、思春期ぐらいに入らないと見えてこないのでね。今、乳幼児を育てているママたちに、今の私と同じことをすればいいんだよって言ったって、頭では理解するけど、実践できるかというと、それはまた別の話。そこを、15年後にHISAKOさんが言ってたのはこれやったんやなって、思ってくれたらそれでOKです。今できなくてもいいし、イライラして怒り倒したって、ただこういう自分がダメやって、思うだけでいい。
陣痛を経験したことがない人に、陣痛の痛みはわからない。自分で経験して初めて、こんなに痛いんや、こんな感じなんやって気づきますよね。自己肯定感に関しても、経験を積み上げていかないと気づけないのは同じです。今の失敗や経験が気づきにつながっていくわけだから、おおいに悩んで。
悩むってことは、それだけ大事だってこと
――悩むことも、気づくまでの過程なのですね。
HISAKO 子育てで悩むってことは、それだけ守りたい大切な子どもだから。そこまで想っていなければ、そんなにイライラすることもないですよね。
ママ自身のお母さんに対してもそう。義理の母と実母では愛情がちがいます。姑さんだったら、距離を置くことができる。でも実母に対しては、何でわかってくれないのお母さん、何なんお母さん、って執着がとれないものです。夢中になって怒るのは、そこに無限大の愛があるから。それって素敵なことですよね。
ちなみにパパとの関係も同じですよ! 夫婦関係が冷めきっているっていう50代のママにパパのことどう思います?って聞いたら、「別に嫌いでも好きでもないです」っていうんです。そこに感情が何もなくて、“無”なんですって。それを聞いたら、20~30代のママたちが、「パパが理解してくれない!」「話を聞いてくれない!」って怒っているのは、そこに愛があって、執着があるからだなって。だからわたしはパパの不満を聞いていても、執着して好きなんやな、いいねいいね~ってなるんですよ 笑 何もネガティブじゃない。ポジティブしかないですよね。ぶつかり合いになってもそれを乗り越えていくことで、50代になったときに色々あったけどこの人といたら安心できるっていう、本当の夫婦になっていくわけやから。その過程をとばしたら、そのゴールにいけない。そう考えると、子どもにイライラするとか、怒鳴ってしまうとかも、それがあるから思春期になったときにうまく回せるわけです。
すべては必要があって今こうなっている。それをそうならないようにしようとするのではなくて、「そうなるのがあたり前、それでいいじゃないか」って思える気持ち。そこを模索していくのが得策ではないかと思うんです。
――家族でぶつかり合うことも、悩むこともいい、ということですね。
HISAKO そうでないと、今のわたしのようにはなれないです。私は激しかったからね 笑 成人している子どもにも言われます。「ママ、生まれ変わったよな。昔と別人やな」って。
(小声)鬼やったって、昔は。知らんけど。めちゃくちゃ怖かったらしいですよ。知らんけど。でもあの時代があったから、今の私があるので。
――何事も経験ですね。
インタビュー記事は第二回に続きます。
(解説:HISAKO、取材・文:佐藤華奈子)
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