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2021年01月09日 18:13 更新

【医師監修】これって溶連菌?子供に感染したらどうすればいいの?症状・治療・保育園など対処法

子供のかぜの原因の一つ、溶連菌(A群溶血性連鎖球菌)。かぜだけでなく、猩紅熱(しょうこうねつ)やとびひ、腎臓の病気を引き起こすことも。ただ、細菌感染症ですから抗菌薬の治療が有効です。処方された薬をきちんと使い、しっかり治しましょう。

溶連菌感染症ってどんな病気?

A群溶血性連鎖球菌の疑いがあり熱を計る子供
Lazy dummy

溶連菌感染症は、A群溶血性連鎖球菌という細菌によって起こる感染症です。

「球菌」とは、丸い球の形をしている細菌のことです。その球菌が連鎖している、つまり鎖のようにつながっているのが「連鎖球菌」です。そして「溶血性」とは、血液中の赤血球を壊す作用があるということを意味し、細菌の細胞壁の性質の違いから「A群」から「G群」に分けられています。

「溶血性連鎖球菌」は「溶連菌(ようれんきん)」と省略して呼ばれることもあります。単に溶連菌と言った場合は、A群溶血性連鎖球菌のことを指します。

A群溶血性連鎖球菌感染症は、子供の間で流行しやすい感染症ですが、大人にも感染することもあります。ただし妊婦さんに感染した場合、産褥熱の原因となることがあります。

なお、B群溶血性連鎖球菌は常在菌(多くの人の体に存在している細菌)の一種で、普段は健康上の問題になりませんが、母子感染などにより赤ちゃんに影響が現れることがあります。

のどの腫れや、猩紅熱、とびひなどを引き起こす

溶連菌は、子供ののどのかぜ(急性咽頭・扁桃炎)の原因の一つです。また、発疹が出現する伝染性膿痂疹(とびひ)や猩紅熱(しょうこうねつ)などの原因でもあります。

以下にそれぞれの症状をまとめます。

急性咽頭・扁桃炎

のどの痛み、扁桃腺の腫れ、発熱、頭痛、首のあたり(頸部リンパ節)の腫れと痛みなどの症状が現れます。舌が苺状に赤くなることがあります。

腹痛や吐き気・嘔吐などの消化器症状を伴うこともあり、また女の子では外陰や腟の炎症が起きることもあります。経過が長引くと、扁桃のあたりが化膿したり、中耳炎などの合併症が起きることがあります。

猩紅熱(しょうこうねつ)

咽頭炎(のどの痛み)に伴い、あるいはそれよりも早く、全身の皮膚に細かい赤い発疹が現れます。発疹はかゆみやヒリヒリした感じを伴います。

また、苺舌も見られます。数日たつと落屑(皮膚が破片のようになって剥がれること)が始まり、軽快します。

とびひ(伝染性膿痂疹)など皮膚や筋肉の炎症

溶連菌はいわゆる「とびひ」も起こします。伝染性膿痂疹(のうかしん)が医学的な病名ですが、一般的には「とびひ」と呼ばれています。皮膚に発疹が現れ、それが赤みのある水疱に変わり、時間がたつとかさぶたができます。

皮膚の症状では、顔や足などの皮膚が赤く腫れて、痛みや熱感を伴う「丹毒」や、皮膚の表面だけでなく皮下組織まで炎症が及ぶ「蜂巣炎(ほうそうえん)」を起こすこともあります。また、まれに筋膜(筋肉を包んでいる膜)や脂肪が壊死する「壊死性筋膜炎(えしせいきんまくえん)」を起こすこともあります。

その他、腎炎やリウマチ熱などを引き起こすことも

溶連菌による感染症(咽頭炎や扁桃炎、または「とびひ」などの皮膚感染症)が無治療の場合、この症状に続いて、急性糸球体腎炎という腎臓の病気が起こり、高血圧や蛋白尿・血尿がみられることがあります。

腎機能の低下は一時的で、予後は良いことが多いのですが、ときに腎機能障害が残ることもあります。

また、まれにリウマチ熱や劇症型溶結性レンサ球菌感染症を引き起こすこともあります。

溶連菌感染症の感染経路、潜伏期間、発生が多い季節

おもに飛沫と接触で感染する

溶連菌は、飛沫感染、接触感染などにより感染します。

飛沫感染とは、咳やくしゃみ、会話などによって口から飛ぶ病原体が含まれた水分を吸い込むことで感染する経路です。飛沫が飛ぶ距離より離れていれば(おおむね2メートル)感染する可能性は低くなります。

接触感染とは、病原体が手などに付着したまま口や鼻に触れることにより感染することです。

とびひも接触感染でうつります。そして、発疹がかさぶたになりそれが落屑(剥がれ落ちること)した後も、かさぶたに感染力が残っています。

このほか、食材を介してA群溶血性連鎖球菌に感染した例も報告されています。

潜伏期間はどのくらい? 流行る季節はいつ?

溶連菌に感染してから咽頭炎などの症状が現れるまで、2~5日ほど間があります。膿痂疹(とびひ)では、もう少し長く7~10 日です[*1]。

溶連菌による咽頭炎や扁桃炎の流行は、冬と、春から初夏にかけての年2回、ピークがあります。とびひに関しては夏に多発します。

冬の間、子供では高い保菌率

溶連菌による咽頭炎は、全国約3,000カ所の小児科医療機関から患者数が報告されることになっている感染症です。その調査によると、例年20~30万人の子供の患者が報告されています。

溶連菌による咽頭炎が流行する冬には、子供の15~20%が菌を保菌して(体内に菌を有して)いて[*2]、感染はしていても症状は出ないこと(不顕性感染)が多いと考えられています。

溶連菌の場合は、不顕性感染の場合は他人に感染させることは少ないと考えられています。ただし、明らかな咽頭炎が起きているのに自覚症状はない子供もいて、こういった場合は不顕性感染には該当せず、感染力はあると考えられています。

子供が溶連菌に感染したら

原因はウイルスでなく細菌! だから抗菌薬で治療する

咽頭炎や扁桃炎などのいわゆるかぜを起こす病原体の多くはウイルスですが、溶連菌は細菌ですから、抗菌薬を使って治療することができます。溶連菌による症状かどうか調べるために、検査することもあります。とびひなどの皮膚の症状に対しては外用(塗り薬)の抗菌薬も使われます。

なお、急性糸球体腎炎やリウマチ熱などの合併症を予防するために、症状が改善しても一定期間(咽頭炎や扁桃炎ではペニシリン系の抗菌薬の場合は10日間)は抗菌薬の服用を続けます[*3、4]。

回復まではどのくらいかかる? いつから保育園に行ってもOK?

溶連菌を原因とするどの感染症を発症したかにより異なりますが、例えば咽頭炎や扁桃炎では、化膿しなければ3~5日で解熱して1週間ほどで治癒します[*5]。猩紅熱の発疹は3~10日で軽快します[*6]。

溶連菌は、適切な抗菌薬により治療を開始すると24時間ほどで感染力がなくなります。ですから、治療開始後24~48時間程度経過していて、体調に問題がなければ登園・登校して問題ありません[*1]。

とびひについては、発疹からの浸出液がしみ出ないようにガーゼ等で覆ってあれば通園通学可能です。ただし、プールや水泳は控え、タオルなどは他人と共用しないようにしましょう。

溶連菌感染症 予防のためにできること

溶連菌感染症を予防するためのワクチンはまだ開発段階です。

ですから、飛沫や接触で感染しないよう、手洗い、マスク着用、うがいを行い感染予防するようにしましょう。

まとめ

溶連菌感染症の多くは抗菌薬により治療できます。ただし、治療が不十分だと、急性糸球体腎炎やリウマチ熱といった合併症が起きることがあります。それを防ぐため、医療機関で処方された薬は定められた期間、きちんと服用することが大切です。

(文:久保秀実、監修:武井智昭先生)

参考文献
[*1]厚労省「保育所における感染症対策ガイドライン (2018 年改訂版)」
[*2]医学書院「標準微生物学」126p
[*3]国立感染症研究所 IDWR 2012年第20号<注目すべき感染症>A群溶血性レンサ球菌咽頭炎
[*4]東京医学社・日本小児感染症学会編「小児感染症マニュアル2017」6、7p
[*5]医学書院「標準微生物学」127p
[*6]医学書院「標準皮膚科学」416p

※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

  • 本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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