
【医師監修】夜驚症とは? 原因と症状の現れ方、対応や治療について
子どもによくみられる睡眠障害に、「夜驚症(睡眠時驚愕症)」があります。子どもが睡眠中、急に泣き叫んだり暴れたりするもので、夜泣きとはまた異なるものです。今回は、症状が起こった時に適切な対応ができるよう、夜驚症の原因や症状、治療法などを詳しく紹介します。
夜驚症とは?


睡眠障害の一種である「夜驚症(睡眠時驚愕症)」。この名を初めて聞くママ・パパもいるかもしれません。夜驚症は子どもに多くみられる睡眠障害で、寝入ってからあまり時間が経たないうちに悲鳴などの症状がみられます。
夜驚症ってどんなもの?
実は、子どもの約25%がなんらかの睡眠障害を経験するといわれています[*1]。
子どもの睡眠障害のなかで代表的なものには、「夜驚症」、「睡眠時遊行症」などがあります。どちらも睡眠中に異常な行動を示すもので、詳しい症状については後述しますが、夜驚症では眠ってからしばらくすると、泣き叫んだり暴れたりします。症状は数分以内におさまることが多く、治まると子供は再び眠りにつき、目が覚めると何も覚えていません。
睡眠時遊行症では、眠っているように見える状態で室内を歩き回ったり、ベッドの上で飛び跳ねたりなどの症状が見られます。
これは「夢遊病」とも呼ばれており、聞いたことがある人も多いでしょう。5~12歳の子供の約15%が、睡眠時遊行症と考えられる行動を1回は経験したことがあるといわれています[*2]。
夜驚症が多い時期(年齢)はあるの?
夜驚症がよく起こる年齢にはいくつか説がありますが、脳の大脳皮質がある程度発達してくる2歳以降に起こり、もっとも多いのは3~8歳くらいとされています[*2, 3]。
夜驚症は子どもの1~6.5%程度[*4]が起こすと言われていますが、思春期になるころまでに自然におさまります。
夜驚症の原因は?
私たちが眠っているときの状態は、「ノンレム睡眠」と「レム睡眠」に大きく分けられます。ノンレム睡眠は脳の活動が低下して深い眠りに入った状態をいい、レム睡眠は脳の活動がわりあい活発で、夢を見たり血圧や脈拍が変動して、心身が目覚めの準備に入った状態をいいます。
夜驚症の症状はノンレム睡眠からの覚醒異常、つまり深い眠りから中途半端に目を覚ましてしまうことで起こります。睡眠時遊行症(夢遊病)も、同じようにノンレム睡眠からの覚醒異常で起こると考えられています。なお、夜驚症を起こした子どもの約1/3には、睡眠時遊行症もみられるとされています[*5]。
夜驚症を疑うポイントは?
子どもが夜中に突然、泣き出すことはよくありますね。泣き方が激しいと「夜驚症?」と心配になるかもしれません。夜驚症が疑われるときは、いくつかの特徴的な様子が見られるかどうかをチェックしてみましょう。
こんな症状が見られたら夜驚症かも
ぐっすり眠っていた子どもが夜中に突然目を覚まし、何かにおびえたように泣き叫んだり、手足をバタつかせて暴れたりするのが夜驚症のおもな症状です。たいてい眠りに入って数時間のぐっすり眠っているころに起こり、10~20分程度続きます[*1]。
症状が起こっている間は、親など周囲の人のことは目に入らず、なだめようとしても反応は鈍いでしょう。声をかけると話をすることもありますが、質問に答えるなど会話が成立することはまずありません。しばらくすると症状がおさまって何事もなかったかのように眠りにつき、翌朝、目を覚ましたときにほとんど覚えていないのも大きな特徴です。
夜驚症チェック
睡眠中の子どもに以下のような様子が見られるときは、夜驚症かもしれません。
・ぐっすり眠っていたのに、叫びながら突然起きる
・何かにおびえたり怖がったりするような様子を見せる
・上記に加え、心拍数や呼吸が速くなり汗をかいていることも
・泣き叫びながら歩き回ることもある
上記のような症状がみられたとき、どうすればいいかについて、次に解説します。
夜驚症が疑われる様子が見られたときは……


夜驚症が起こると、何とか早く止めなくては! と焦ってしまうかもしれませんし、治療を受けて早く治したいと思うかもしれません。夜驚症が疑われるときの対応のポイントや、医療機関での治療について知っておいてください。
親がとるべき対応は
夜驚症の症状が起こって子どもが泣き叫んでいるときは、半分眠っているようなもうろうとした状態です。そのときに、落ち着かせようと思って声をかけたり名前を読んだりしても、反応が悪かったりまったく反応しないことがほとんどなので、無理に目を覚まさせようとしなくてかまいません。
症状はいずれ治まりますから、ベッドや布団の上で泣き叫んでいるだけなら、黙ってやさしく見守ってあげましょう。動きまわったり暴れたりしても無理に止める必要はなく、室内の危ないものを片付けるなどしてけがをしないように注意しながら、落ち着くのを待ちます。症状が治まって再び眠ったら、静かに朝まで眠らせてあげましょう。
夜驚症の治療法は?
夜驚症の症状は衝撃的ですが、ほとんどの場合は子どもの成長とともに自然によくなっていきます。一度治まっても数年間は時々症状が起こることがありますが、通常は治療の必要はありません。
ただ、夜間何度も発作が起こったり、毎日発作を起こす場合は、かかりつけの小児科に相談してみましょう。たとえば扁桃腺の腫大など、子供の眠りを邪魔する要素がないかや、てんかんが隠れていないかなどのチェックが必要な場合があります。
夜驚症の治療で薬が必要になることはほとんどありませんが、回数が多くて睡眠不足がひどいような場合には、症状を軽くするため鎮静薬などの薬剤で発作を軽くしたり止めたりすることもあります。
夜驚症Q&A
ここからは、夜驚症にかんするよくある疑問に答えていきます。
Q. 夜驚症と親の育て方には関係がある?
A. 育て方とはまったく関係ありません
夜驚症は、生まれつきの脳の素質が関係していると言われています。親の育て方、接し方や、しつけの仕方などは原因ではありません。 もし、そのように言う人がいたとしても、気にしないようにしてくださいね。
Q. 夜驚症が起こるのにきっかけはある?
A. 日中の刺激的な体験が引き金になることも
夜驚症が、昼間に恐怖を感じたり、興奮、緊張するような体験をした日の夜に起こす子もいます 。
たとえば、テレビドラマや本の挿絵、事故を目にしたなどにより怖い思いをした、入園などで緊張した、旅行などの外出で興奮した、といった体験です。ただし、 低年齢の場合は、こうした誘因がはっきりしないことのほうが多いでしょう。
まとめ


夜驚症は子どもに多く見られる症状です。症状は激しいものの基本的には治療をしなくても自然に治っていくケースがほとんどなので、あまり心配しすぎないようにしましょう。
また、育て方とも関係なく起こるものなので、ママ・パパが自分を責める必要もありません。症状が起こっている間は落ち着いて対応し、あまりにも頻繁に起こったり症状が激しいときは、小児科や小児睡眠外来などで専門家に相談すると良いでしょう。
(文:村田弥生/監修:大越陽一先生)
※画像はイメージです
[*1]金子堅一郎編:子どもの病気とその診かた, p491-494, 南山堂, 2015.
[*2]徳島県医師会
[*3]MSDマニュアル:睡眠の問題
[*4]厚生労働省「健康づくりのための睡眠指針 2014」, p61
[*5]MSDマニュアル:小児の睡眠障害
※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました
※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます