
【医師監修】おしゃぶりにはどんな効果があるの? 歯並びへの影響は?人気のおしゃぶり4選
育児のお助けグッズ「おしゃぶり」。しかし、実際にどんな効果があり、どんな時に使えばいいのか、また注意が必要な点について、詳しく知らない人も多いのでは。おしゃぶりの持つ効果や上手な付き合い方などを確認してみましょう。
- おしゃぶりがもたらす効果
- 心が落ち着く、泣き止みやすくなる
- 眠りにつきやすくなる
- ママ・パパにもメリットが
- 乳幼児突然死症候群(SIDS)も予防できる?
- 「鼻呼吸や舌や顎の発達を促す」効果はほとんどなさそう
- 歯並びに影響? 依存性がある? おしゃぶりのデメリット
- かみ合わせの異常が起こりやすくなる
- おっぱいを嫌がることがある
- 親子ともに依存してしまうことも
- その他のデメリット
- 上手なおしゃぶりの使い方 ―「使う期間」がポイント―
- 使用開始は新生児からOK。ただし、清潔さを保って
- 1歳を過ぎたら、使うタイミングを限定
- 「2歳まで」に止めるのが望ましい
- 子供とのふれあいを大切に
- 赤ちゃんの成長を考えて作られた、人気のおしゃぶり
おしゃぶりがもたらす効果


「おしゃぶり」は赤ちゃんがしゃぶって遊ぶための玩具のこと。ゴム製の乳首のついたものが一般的です。おしゃぶりをくわえている赤ちゃんの姿はとても愛らしいものですが、見た目にかわいらしいだけでなくおしゃぶりを使うことで赤ちゃんにとってもメリットがあることがわかっています。
心が落ち着く、泣き止みやすくなる
赤ちゃんには「吸啜(きゅうてつ、またはきゅうせつ)反射」という、口に入ってきたものを無意識に強く吸い込む反射が生まれながらに備わっています。吸啜は赤ちゃんにとって自然な本能であり、「吸う」という行為は赤ちゃんにとって、心の落ち着きを得られる動作です。
「おしゃぶり」には吸啜反射から来る赤ちゃんの「吸う」欲求を満たして気分を鎮め、落ち着かせる効果があるといえます。
そして、おしゃぶりで赤ちゃんの心が落ち着くと、ぐずって泣き続けることが少なくなります。これもおしゃぶりがもたらすメリットのひとつです。
眠りにつきやすくなる
おしゃぶりには入眠を助けるという効果もあります。「眠りたいのにうまく眠れない」と、ぐずってしまうような時でも、おしゃぶりを吸うことで気持ちが鎮まり、赤ちゃんが眠りにつきやすくなると考えられています。
ママ・パパにもメリットが
おしゃぶりでメリットを得られるのは赤ちゃんだけではありません。赤ちゃんが泣き止みやすくなったり、眠りにつきやすくなったりすることで、ママやパパの子育てのストレスが減る効果も期待できます。
乳幼児突然死症候群(SIDS)も予防できる?
SIDSは、何の予兆や既往歴もないのに乳幼児がある日突然、命を落としてしまう原因不明の病気です。日本では乳児の死亡原因の第4位となっています[*1]。
SIDSは世界中で問題になっており、アメリカの小児科学会はSIDSの予防も含めた乳児の安全な睡眠環境に関する19の勧告を発表しました。そこでは、詳しいメカニズムは不明であるものの、「入眠時におしゃぶりを使用」することでSIDSの発生を抑えられる可能性があるとしています[*2]。
ただ、日本では、アメリカほどおしゃぶりは使われていないのにアメリカよりSIDSの発生率が低いと言われていたり、おしゃぶりとSIDS発生率の相関関係についてまだよく調べられていないため、SIDS予防におしゃぶりの使用はとくに推奨されていません。本当におしゃぶりにSIDSの予防効果があるかについては、もう少し検証が必要なのかもしれませんね。
「鼻呼吸や舌や顎の発達を促す」効果はほとんどなさそう
おしゃぶりの宣伝には時々「鼻呼吸や舌、顎の発達を促進する」という文言が使われていることがあります。しかし、そうした効果について現時点で医学的に検証されたものはないようです。
そもそも、新生児は口の中が狭いわりに舌が大きいので口呼吸は難しく、促さずとも自然に鼻呼吸をしています。もう少し大きくなって、鼻づまりなどの経験から口呼吸の習慣がついてしまった赤ちゃんに、おしゃぶりを与えて鼻呼吸を促せるかも疑問です。なぜなら、おしゃぶりで一時的に中断できたとしても、おしゃぶりを外してしまえばまた口呼吸に戻ってしまうからです。
また、舌や顎の発達についても、おしゃぶりによってしゃぶることに関する機能の発達が乳児期のわずかな間に促進されはしても、離乳期に入ると口、舌、顎はもっと複雑な動きを獲得していくといわれています。
おしゃぶりが鼻呼吸や舌、顎の発達にまったく影響しないとは言い切れませんが、これらの発達を促すといえるほどの効果はないと考えたほうがよさそうです。
歯並びに影響? 依存性がある? おしゃぶりのデメリット


物事にはいいことがあれば、その反面、良くないこともあります。おしゃぶりも例外ではありません。おしゃぶりのデメリットも確認しておきましょう。
かみ合わせの異常が起こりやすくなる
おしゃぶりを長期にわたって使用すると、かみ合わせに悪い影響を与えることがわかっています。
1歳6ヶ月~5歳までの子供1,120名と4~5歳の子供432名について、おしゃぶり、指しゃぶりと乳歯の噛み合わせとの関係を調べた2つの調査によると、おしゃぶりや指しゃぶりを長期にわたって続けた場合、上顎前突(出っ歯)や開咬(上下の歯がかみ合わず開いた状態)が起こりやすくなると報告されています[*3]。
おっぱいを嫌がることがある
赤ちゃんがママのおっぱいに慣れる前におしゃぶりを使い始めてしまうと、赤ちゃんがおっぱいを吸うのを嫌がってしまうことがあります。これは「乳頭混乱(にゅうとうこんらん)」と呼ばれる現象で、赤ちゃんがおっぱいでの授乳よりも哺乳瓶やおしゃぶりなどの人工乳首を好むようになってしまうことをいいます。
すべての赤ちゃんが乳頭混乱を起こすわけではありませんが、母乳育児を考えている人は念のため、母乳育児がしっかりと確立されるまでおしゃぶりは使わないほうがよいでしょう。
親子ともに依存してしまうことも
おしゃぶりは吸うだけで赤ちゃんの心が落ち着く効果がある、とても頼もしい存在です。しかし、その頼もしさゆえ、おしゃぶりに頼り過ぎてしまうことがあることにも注意が必要です。
赤ちゃんにとっておしゃぶりは習慣となりやすく、ママやパパがあやしたり言葉かけをしたりすることなく赤ちゃんを泣き止ませられるおしゃぶりに依存してしまうこともあるでしょう。安易なおしゃぶりの使用により親子のふれあいが減る可能性もあります。おしゃぶりを使っているときも、その便利さに頼りすぎないよう、できるだけ赤ちゃんとコミュニケーションをとるよう心がけるのがよいでしょう。
その他のデメリット
その他、おしゃぶりの使用により中耳炎にかかりやすくなったり、洗浄・消毒が不十分なおしゃぶりの使用で胃腸炎や口腔カンジダ症(鵞口瘡)にかかるリスクもあります。
上手なおしゃぶりの使い方 ―「使う期間」がポイント―
おしゃぶりを上手に使ってメリットを得るには、要点を押さえることが大切。どうやらポイントは「おしゃぶりを使用する期間」にあるようです。
使用開始は新生児からOK。ただし、清潔さを保って
おしゃぶりは新生児から使うことができます。ただし、そこで気を付けておきたいポイントが大きく2つあります。ひとつは使い始める時期。先ほどお伝えしたように「乳頭混乱」のおそれがあるので、母乳で育てることを考えている人は、赤ちゃんがママのおっぱいを吸うことに慣れてから使い始めるのがよいでしょう。
もうひとつは清潔にすること。洗浄・消毒が不十分な場合、不潔なおしゃぶりを介して赤ちゃんが胃腸炎や口腔カンジダ症(鵞口瘡)などにかかってしまう可能性があります。それらを防ぐためにも、おしゃぶりはこまめに交換し、使った後は洗浄や消毒をして清潔を保ちましょう。
なお、おしゃぶりに付属している製品説明や注意書きには、安全と衛生のため、およそ1~2ヶ月使用したら新しいものに交換するよう書かれています。使用の際はそうした説明文もきちんと確認しておきましょう。
1歳を過ぎたら、使うタイミングを限定
常におしゃぶりをしていると、どうしても言葉を発する機会が減ってしまいます。赤ちゃんの言語力は日々のやりとりや、親子のふれあいの中などから自然に育まれていくもの。赤ちゃんが言葉を発し始める1歳過ぎになったら、常時おしゃぶりを使用することは避けることをおすすめします。
寝る前や、あやしても泣き止まない時など、子供の成長と共におしゃぶりを使うタイミングを限定していくのがよいでしょう。
「2歳まで」に止めるのが望ましい
長期間にわたっておしゃぶりを使うと、かみ合わせに異常が起こりやすいことは前述の通りです。しかし2歳ころまでおしゃぶりを使うのをやめれば、多少のかみ合わせの異常は子供の成長に伴って改善される傾向にあることがわかっています。
かみ合わせへの悪影響を避けるためにも、2歳までにはおしゃぶりの使用を中止しましょう[*3]。
子供とのふれあいを大切に
おしゃぶりには子供の情緒を安定させる効果があるものの、それに頼りきってしまうのは避けましょう。おしゃぶりを使っている間も声かけをしたり一緒に遊んだり、できるだけ子供とのふれあいを大切にしてください。子供がして欲しいことやしたいことを満足させながら、時にはおしゃぶりで心の安定を与えるのが、おしゃぶりの上手な使い方といえるでしょう。
まとめ
おしゃぶりは赤ちゃんにとっても、ママやパパにとってもメリットのあるアイテムです。ただし、デメリットもあります。おしゃぶりを使用する場合は、メリットとデメリットを理解した上で適切に使い、育児をより楽しくしていきましょう。
(文:山本尚恵/監修:大越陽一先生)
※画像はイメージです
[*1]厚生労働省「乳幼児突然死症候群(SIDS)について」
[*2]「SIDS and Other Sleep-Related Infant Deaths: Updated 2016 Recommendations for a Safe Infant Sleeping Environment」
[*3]「おしゃぶりについての考え方」小児科と小児歯科の保健検討委員会(平成17年1月12日)
赤ちゃんの成長を考えて作られた、人気のおしゃぶり
赤ちゃんのお口の健康と発達を考えて作られた、人気のおしゃぶりを4点、紹介します。
ピジョン SkinFriendly(スキンフレンドリー)
座板に段差をつけることで肌との接触面を減らし、さらに大きな通気孔で口周りの通気性も◎。よだれかぶれしにくく、肌にやさしい工夫を凝らした独自設計のおしゃぶりです。「0~3ヵ月/S」「3~6ヵ月/M」「6~18ヵ月/L」の3サイズ展開。

ピジョン FunFriends(ファンフレンズ)
SkinFriendly同様、座板の段差など赤ちゃんの肌にやさしい独自設計に加え、デザインにもこだわったおしゃぶりです。豊富なデザインで、赤ちゃんの成長に合わせて楽しめます。

NUK(ヌーク) おしゃぶり キャップ付 ジーニアス
ドイツのメーカーが赤ちゃんのお口の健康と発達を考えて作ったおしゃぶり。授乳時の乳首にそっくりな形で、上あごにぴったりフィットします。「0~6ヶ月」「6~18ヶ月」の2サイズ展開。

コンビ teteo(テテオ) おしゃぶり 入眠ナビ
おやすみ時向けに設計されたおしゃぶりです。赤ちゃんの口から外れにくい、薄型・軽量・コンパクト設計。頬へのくい込みをやわらげ、あとがつきにくい形状になっています。おでかけに便利なプチケースも付いていて、電子レンジでの消毒が可能です。「S/0ヶ月~3ヶ月ころまで」「M/2・3ヶ月~10ヶ月ころまで」「L/8ヶ月~18ヶ月まで」の3サイズ展開。

※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました
※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます
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