妊婦がとりたい鉄分の多い食べ物は?貧血予防に役立つ効率的な食べ方も紹介【管理栄養士監修】
鉄分は特に女性にとって重要ですが、妊娠中はさらに意識してとりたい栄養素です。こんかいは妊婦の貧血予防の食事のポイントについてお伝えします。
妊婦にはなぜ鉄分の多い食べ物が必要なのか
妊婦は、妊娠していない時に比べて多くの鉄を必要とします[*1] 。妊娠初期から鉄を多くとる必要があり、妊娠中期・後期には非妊娠時の約1.5倍の鉄が必要とされています。
妊娠中は貧血になりやすい
特に妊娠後期は胎盤や胎児が鉄の蓄えを必要とするため、多くの鉄が胎児へと移行します[*2,3] 。また、妊娠中は体をめぐる血液量が増えて、いわゆる“血が薄くなる”状態になることもあり、多くの妊婦が貧血になりやすくなっています。
妊娠中の貧血によるリスク
妊婦が貧血になっても無症状であることも少なくありませんが、疲れやすくなる人もいます。貧血によって起こる立ちくらみやふらつきなどで、転倒の危険も考えられるでしょう。
また、貧血状態が続くと、低出生体重児のリスクも上がるとされています。
妊娠中の貧血については、以下の記事も参考にしてください。
▶︎妊娠中、貧血になりやすいのはなぜ? 主な症状と予防・改善の対策
貧血は鉄分の多い食べ物で予防できる
貧血は食事から鉄を補給することで防ぐことが可能です。貧血と診断され、鉄剤が処方された場合は医師の指示にしたがって服薬をする必要がありますが、日々の食事でも鉄分補給を心がけたいですね。
妊婦におすすめの鉄分の多い食べ物
食生活に取り入れやすい、鉄を多く含む食材を紹介します。
プルーン
ドライフルーツでよく食べられるプルーンには、鉄分が多く含まれます。
プルーンといえば鉄分豊富というイメージを持っている人も多いでしょう。プルーンでも“生のもの”と乾燥させた“ドライフルーツ”がありますが、ドライのプルーンの方が鉄分が多く含まれています。
■プルーンの鉄含有量(100gあたり)
・生プルーン:0.2mg
・乾燥プルーン:1.1mg
また、干しぶどうであるレーズン(2.3mg/100gあたり)やドライフルーツのあんず(2.3mg/100gあたり)、乾燥イチジクなどにも鉄分が多く含まれています。鉄分だけではなく、妊娠期のマイナートラブルである便秘・むくみの解消に役立つ食物繊維やカリウムも豊富に含んでいますよ[*4] 。ヨーグルトに混ぜたりしておやつなどに取り入れると良いでしょう。
ただ、ドライフルーツはカロリーが高めなのがちょっと気になります。その点、レーズンなどに比べて乾燥プルーンはカロリーが低めなのも嬉しいですね。
大豆食品
豆乳や豆腐などの大豆食品には鉄が多く含まれています[*4] 。
しかし、豆類には鉄が豊富に含まれる反面、鉄の吸収を邪魔するフィチン酸も多く含まれています。フィチン酸は玄米などの穀類にも含まれる物質で、鉄だけでなくカルシウムや亜鉛などの吸収も抑制するとされています。
フィチン酸による吸収抑制をビタミンCが改善するという報告もあります[*5]。豆腐をゴーヤと一緒にチャンプルーにするなど、大豆食品とを食べる時にはビタミンC豊富な食材と組み合わせるのがおすすめです。
緑黄色野菜
緑黄色野菜とは、β-カロテンを多く含む野菜(100g中600μg以上)のことです。β-カロテンは体の中で必要な分だけビタミンAに変換されるので、ビタミンAの過剰摂取に気をつけたい妊娠中にはぜひ積極的にとってほしい栄養素です。
そんなβ-カロテンが豊富な緑黄色野菜ですが、特に小松菜やほうれん草には鉄も豊富に含まれています[*4] 。野菜に含まれる鉄分はタンパク質やビタミンCと一緒にとると吸収率が上がると言われています。小松菜お肉と炒めるなど他の食材と一緒に料理してみてくださいね。
あさり・しじみ
ちょっと意外ですが、あさりやしじみなどの貝にも鉄分が豊富に含まれています[*4] 。
■あさりとしじみの鉄含有量(可食部100gあたり)
・あさり:3.8mg
・しじみ:15.0mg
同じ貝類でも、ホタテが2.2mg、サザエが0.8mg、はまぐりが2.1mg(全て可食部100g中の鉄含有量)であることと比較すると、あさりとしじみが鉄分豊富だということがわかりやすいですね。
味噌汁やスープなどの汁物にするほか、野菜を加えて蒸し料理にすると、旨味を存分に味わえるのでおすすめですよ。
効率的に鉄分をとるためにプラスしたい食べ物・栄養素
鉄分を多く含む食材のところでもご紹介していますが、鉄をより効率的に摂取するためにはいくつかポイントがあります。
果物でビタミンCをプラス
ビタミンCは野菜類などに含まれる鉄の吸収率をアップさせたり、鉄の吸収を低下させる成分の働きを弱めると言われています[*5]。上記の食材を取り入れる時に、果物をデザートとして摂取したり、ビタミンCを豊富に含む芋類などを合わせてとってみてくださいね。
赤身肉などでタンパク質をプラス
赤身肉にはそれ自体に多くの鉄が含まれますが、同時に野菜類などに含まれる鉄の吸収率をアップさせるタンパク質が含まれます。野菜とお肉を一緒に炒めると良いですね。
牛乳や乳製品でカルシウムをプラスするときは一工夫
鉄の摂取を考える時、実は乳製品に多く含まれるカルシウムは、鉄の吸収を阻害する可能性があります[*5]。
しかし、カルシウムも妊婦が意識してとりたい栄養素。加えて、乳製品には鉄の吸収を助けるタンパク質も含まれています。一度にとる量が多くなりすぎないよう、組み合わせてとってみてくださいね。
妊娠中の鉄分の多い食べ物に関するよくある疑問
妊婦に大切な鉄。気になることについて解説します。
鉄分の多い食べ物のとりすぎで過剰摂取になることはない?
鉄分は非常に吸収されにくい栄養素ですので、通常の食事の摂取で過剰になる心配はありません。
ただし、鉄以外の栄養素の過剰が心配になる場合もあります。例えば、レバーには鉄が多く含まれますが、多く食べすぎることでビタミンAの過剰摂取の心配があります。特定の食材に偏ることなく、色々な食品をバランス良く食べるようにしましょう。
鉄分の吸収が非効率になる食べ物もある?
カフェイン、カルシウム、ポリフェノール、フィチン酸などの成分は、鉄の吸収を阻害すると考えられています[*5]。
例えば、カフェインやポリフェノールを多く含むコーヒー・紅茶・緑茶などの飲料の飲みすぎには注意が必要です。また鉄を多く含む食材にこれらの成分が含まれることもあります。鉄のみを意識して食品を選択しても、思ったように鉄がとれているとは限りません。ポイントは上記で既にお伝えしている通り、様々な食品と組み合わせて食べることです。
つわりで鉄分の多い食べ物が食べられないときの対処法は?
つわりの時は食事をとること自体がつらい時期もありますよね。一時的な栄養のアンバランスを心配しすぎる必要はありません。つわりの時には食べたいもの、食べられるものを食べてくださいね。
まとめ
妊婦にとって鉄はとても大切な栄養素。ですが、食事はとても複雑で、鉄だけを意識しても理想通りに摂取できているとは限りません。大切なことはバランス良く色々なものを食べること。鉄の吸収にとってもそれが一番理にかなっています。鉄の重要性を知り、普段の食生活を振り返って、あまり食べてこなかった食品を楽しんでみてくださいね。
(文:奥野由 先生/監修:川口由美子 先生)
※画像はイメージです
[*1]厚生労働省:「日本人の食事摂取基準(2020年版)」策定検討会報告書 Ⅱ 各論 1 エネルギー・栄養素
[*2]内田季之. 「妊婦の貧血」. Medical Practice 36, no. 8 (2019年): 1219–22.
[*3]杉村基. 「妊婦で鉄剤をいかに使うか? 留意点は?」 薬局 71, no. 10 (2020年): 3143–48.
[*4]文部科学省:日本食品標準成分表2020年版(八訂)第2章(データ)
[*5]山本 憲朗, 石神 昭人 「生体における鉄の吸収動態とビタミンcの関係(企業のページ)」. ビタミン 88, no. 5–6 (2014年): 297–304.
※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます