<36週以降>臨月の「お腹の張り」は受診が必要?陣痛との見分け方や「要注意な症状」を解説【医師監修】
妊娠初期のころから、たびたび感じる「お腹の張り」。臨月に入れば、陣痛の張りなのか、そうではない張りなのか、見分け方も気になるところです。感じ方は人それぞれですが、中には注意したい「張り」もあります。今回は臨月に感じやすいお腹の張りについてまとめました。
臨月の「お腹の張り」はどんな時に起こる?
「お腹の張り」の感じ方は人それぞれで、あまり心配のいらない一時的な生理現象のこともあれば、中には何らかの問題が起きているサインの場合もあります。臨月のお腹の張りにはどのような原因が考えられるのか、見ていきましょう。
■「お腹が張ってる」時の感じ方
お腹の張りを感じるか、感じないかは個人差があります。お腹を触ってみて「硬い」「パンパンに張っている」と感じる人もいれば、圧迫されているような「キューッ」という痛みや、生理痛のような痛みを感じる人もいます。
■臨月とは
妊娠8ヶ月以降を妊娠後期と言いますが、中でも妊娠10ヶ月(妊娠36〜39週)のことを一般的に「臨月」と呼びます。臨月というともういつ産んでもOKなイメージですが、臨月の中でも37週未満に生まれてしまうと早産になってしまいます。
関連記事 ▶︎「正期産」とはいつ出産すること?
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1. 胎動で引き起こされるお腹の張り
臨月にはそれまで以上に子宮が大きくなることで、お腹の張りをより感じやすくなります。赤ちゃんの動きも力強くなるため、胎動のタイミングでお腹の張りを感じる人も多いようです。
▶︎胎動が激しい時の対処法や臨月の胎動の様子については以下の記事で詳しく解説しています。
2. 疲れやストレスからくるお腹の張り
動きすぎたり、長時間立っていたりしたあとに、お腹の張りを感じることがあります。このような「疲れ」だけではなく、ストレスや緊張、冷えたときになんとなくお腹が張っていると気づくことも。
しばらく安静にして治まるようであれば心配はいりませんが、無理をせず、心身ともに健やかに過ごすようにしましょう。
▶︎妊娠中のストレス発散法については以下の記事を参考にしてくださいね。
3. 便秘が原因のお腹の張り
妊娠中はホルモンの影響や大きくなった子宮が腸を圧迫することで便秘になりやすいことが知られています。そのため便秘が原因で、お腹の張りを感じる人もいます。
▶︎妊娠後期〜臨月の便秘の対処法については以下の記事にまとめています。
4. 前駆陣痛によるお腹の張り
妊娠10ヶ月の臨月ごろになると、出産に向けた体の準備として「前駆陣痛」と呼ばれる子宮収縮が始まり、お腹の張りを感じるようになります。
分娩の開始である「陣痛」は規則的に繰り返す痛みですが、前駆陣痛が起きる間隔は不規則であるという違いがあります。
▶︎臨月の腹痛の原因については以下の記事で詳しく解説しています。併せてご覧ください。
5. 異常発生によるお腹の張り
お腹の張りがしばらく安静にしていて治まるようであれば心配はいりません。しかし、「出血や痛みを伴う」「30分以上張りが治まらない・ずっと張っている」「張りがいつもより強い」「胎動が弱い・消えた」というような自覚症状を伴うときは何らかの異常が起きている可能性もあります。
中には切迫早産や、胎盤がはがれる「常位胎盤早期剥離(じょういたいばんそうきはくり)」の症状を示していることもありますので、必ずかかりつけの産科へ連絡しましょう。上記の症状の例に限らず、何かいつもと違う感じがするようであれば、産科に連絡してまずは相談してみるのがいいでしょう。
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心配ないお腹の張りと、陣痛や危険な状態との⾒分け⽅
臨月にお腹の張りを感じると、陣痛かどうかが最も気になるところ。陣痛と、そうではない張りの見分け方についてまとめました。
「陣痛」と「問題のないお腹の張り」の違い
いざ分娩が始まると、赤ちゃんを外へ押し出すために子宮の収縮が強くなります。この痛みを伴う子宮の収縮が「陣痛」と呼ばれるもの。
陣痛はいったん始まると、自分では止めることができず、収縮(陣痛発作)と休止(陣痛間欠)が繰り返して起こります。
1時間に6回以上(周期が10分以内)の痛みやお腹の張りが規則的に起こるようになると、陣痛が起こって分娩が始まったと考えられ、時間がたつにつれて短い間隔でより強い痛みを感じるようになります。
陣痛の最大の特徴は、子宮の収縮と休止が繰り返し、規則的に続くこと。臨月になると前駆陣痛を感じることもありますが、痛みが周期的に繰り返さないのであれば、陣痛ではありません。
▶︎陣痛の始まりの痛みについては以下の記事で解説しています。
「陣痛」と「危険なお腹の張り」の違い
突然の激しい腹痛や、出血を伴うお腹の張りがあったときは何か異常が起きているサインかもしれません。すぐに医療機関へ連絡しましょう。
お腹の張りが気になるときの対処法
張ったお腹が気になるとき、何か自分でできる対処法はあるのでしょうか。なるべくお腹が張らないようにする予防法も含めてご紹介します。
シムスの体位で横になる
お腹が張っている、と感じたときは、横になって休むとよいでしょう。妊娠中はシムスの体位を取ると楽になると言われています。
シムスの体位(シムス位とも言います)は体を横にして、上側の腕と足を前に出して軽く曲げた姿勢です。この姿勢を取るとリラックスして休め、お腹の張りも楽になると言われています。
普段から無理をしない
動きすぎが原因で、お腹が張ることもあります。無理をしすぎず、お腹が張っているな、と感じたら休むようにしましょう。
便秘を解消する
妊娠中はホルモンの影響と、大きくなった子宮が腸を圧迫することで便秘になりやすいと言われています。
特に臨月は子宮がより大きくなって便が停滞しやすくなり、便秘のためにお腹が張っていると感じることも増えるかもしれません。
水分を十分にとるなどして便秘の解消に努めましょう。また、便秘が続く場合は、自己判断で便秘薬を服用することなく、医師に相談しましょう。
好きなことに没頭する、ストレスを減らす
お腹の張りの感じ方は人それぞれです。早産や陣痛の始まりなどを気にするあまり、お腹の張りを過敏に感じ取ってしまうこともあるかもしれません。妊娠中の何らかの異常ではない場合は、何か夢中になれることや好きなことで気を紛らわせ、あまり神経質になりすぎないようにしましょう。
また、ストレスが原因でお腹の張りを感じる人もいます。ストレスをできるだけ減らせるよう、心おだやかに過ごしたいものです。
お腹の張りを感じた時間を記録する
陣痛かどうかを見極めるには、痛み・張りが周期的に起きているかどうかを確認することです。子宮の収縮があったときは開始と終了の時間をメモし、一定の間隔で繰り返し起こっているかどうか、チェックしてみましょう。
産科へ連絡する
妊娠中はお腹が張りやすいため、多くは心配する必要のないものですが、休んでも張り続けていたり、出血があったり、痛みがどんどん強くなってきたりするときは、何らかの異常を示すサインかもしれません。迷わずかかりつけの産科へ連絡するようにしましょう。
まとめ
臨月になると妊婦さんはおなかの張りを感じることが増えますが、感じ方や頻度は人それぞれ。予定日が近づくにつれ、前駆陣痛と呼ばれる子宮の収縮でお腹が張ることもありますが、お産につながる陣痛が周期的に痛みを繰り返すのに比べ、前駆陣痛は不規則に起こる、という違いがあります。
ほかにも臨月には、いくつかの要因でお腹が張ることがありますが、ほとんどはしばらく安静にしていれば治まるもの。あまり不安に思わなくていいですが、急激な痛み、出血を伴う、張りがいつまでも治まらない、いつもと違う張りを感じるなどの場合は、すぐ産院へ連絡するようにしましょう。
出産が近づくと、おしるしなども見られることがあります。そんな時も慌てず、何か困ったらかかりつけの産科の指示を仰ぎましょう。
(文:剣崎友里恵、監修:中林稔先生)
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公益社団法人 日本産科婦人科学会『Baby+』
※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました
※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます