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【医師監修】妊娠初期につわりが急になくなる理由は? 流産? 受診すべき?
妊娠初期の代表的な症状である「つわり」。妊婦さんにとって悩みの種である一方、急になくなったら「赤ちゃんに何かあったのでは?」と不安になってしまうかもしれません。ここでは、つわりが急になくなることと流産の関係、それ以外の原因も考えられるのか、つわりが急になくなったときの対処法について解説します。
妊娠中につわりが急になくなると流産?
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つわりは妊娠初期に起こる代表的な不調のひとつです。多くの場合、妊娠経過とともに徐々に治まっていきますが、中には「急につわりの症状がなくなる」ということもあります。急につわりがなくなった場合、どんな原因が考えられるのでしょうか。
つわりが急になくなるのは流産の兆候のひとつ
それまであったつわりが急になくなった場合、それが「流産」の兆候である可能性も否定できません。
いったん妊娠を確認できたものの、赤ちゃんの成長が残念ながら、途中で止まってしまうのが流産です。じつは流産には、その段階や状況によって、自覚症状がある場合と、そうでない場合とがあります。
子宮の内容物がいままさに外に排出されている「進行流産」という状態の場合は、多量の出血やひどい腹痛などの症状が現れます。ですから、妊婦さんは流産の可能性にすぐ気づくことができます。
赤ちゃんの成長が止まる「稽留流産」
しかし、成長の止まった赤ちゃん が子宮内にとどまっている「稽留流産(けいりゅうりゅうざん)」という状態では、目立った自覚症状のないことが多く、健診などで超音波検査を行うまで、気付かないケースも少なくないのです。
この場合、多量の出血や腹痛といった目立つ症状は普通ありませんが、「つわりの消失」が自覚症状としてみられることもあります。
稽留流産したら必ずつわりがなくなるわけではない
ただし、稽留流産によってつわりがなくなるかどうかは人それぞれです。中には稽留流産していても、つわりの症状が続く人もいます。なぜこのように、つわりがなくなる人と続く人がいるのかについては、「hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)」というホルモンの影響である可能性が考えられます。
つわりが生じる原因はまだ詳しくはわかっていませんが、その要因のひとつとして、妊娠すると急激に分泌されるhCGの血中濃度が関わっていることがわかっています。hCGは、妊娠中の女性に特有のホルモンで、男性や妊娠していない女性では基本的につくられません。
稽留流産とは、おなかの赤ちゃんの成長が止まってしまうことですが、それと同時に胎盤の働きがストップしてhCGが分泌されなくなれば、つわりはなくなると考えられます。しかし、赤ちゃんの成長が止まっても胎盤の働きはある程度維持され、hCGが分泌され続けることもあります。この場合は、稽留流産をしていても、つわりが続く可能性もあります 。
つわりが急になくなっても必ずしも流産ではない
なお、つわりを急に感じなくなった原因が、必ずしも流産であるとは限りません。じつは妊娠初期に「つわりの症状を急に感じなくなった」という場合でも、赤ちゃんが問題なく成長していることは多いのです 。
つわりの急な消失をもたらす原因のうち、流産以外で考えられるものについては、このあと詳しく説明します。
流産以外にもある、つわりが急になくなる原因
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流産以外につわりが消失する原因には、以下のようなことが考えられます。
ホルモンバランスの変化
個人差があるものの、つわりは、だいたい妊娠5~6週ごろに始まり、8~10週ごろにピークとなって、それ以降徐々におさまっていくケースが多い ようです。
つわりを起こすと考えられている要因はいくつかありますが、先ほども説明したように、hCGというホルモンの分泌が大きく関わっている可能性があります。つわりの症状の強弱とhCGの分泌量の増減はほぼ一致しており、hCGの分泌量が多いと、症状も強く出る傾向にあるからです [*1]。
hCGは妊娠初期にはその分泌量が急激に増えますが、妊娠10週ごろをピークに、その後は妊娠15週ごろまでに急減します[*2]。
つわりが急になくなった場合、このhCGをはじめとしたホルモン分泌のバランスが変化したために、症状を感じなくなった可能性も考えられます。
メンタルの安定
実は、つわりはホルモンなどの変化だけでなく、悩みなど精神的なストレスの影響も受けるとも言われています。
さきほど解説したようにだいたい妊娠中期に入るまでにはhCGの分泌量は減ってきますが、「妊娠初期の終わり~中期のはじめころ」には、妊娠生活に慣れ始める妊婦さんも多いのではないでしょうか。
そのため、ホルモンバランスの変化とともにメンタル面での負担が軽くなり、ある日急につわりの症状を感じなくなる、という人も中にはいるかもしれません。
流産かどうかを見極めるには
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つわりが急になくなったからといって、流産しているとは限らないと解説しました。では、つわりの急な消失で流産かどうか不安になった場合は、どんな点を確認すればよいのでしょうか。
不正出血や下腹部痛があるかどうか
その場合、
・いつからの出血か
・固形物が混じっているか
・おなかの痛み、張りはあるか
・出血の量、色、におい
ただし出血があっても、流産とは無関係な場合もあります。
また、実は性器以外(外痔核、尿道口、外傷)から出血をしていることもあります。自覚症状だけで流産かそうでないかを見分けるのは難しいので、念のため医療機関に相談しておくと安心です。
不安であれば医師に相談を
出血や腹痛といった症状がなくても、つわりがなくなったことに不安を感じる場合は、かかりつけの産婦人科医に相談しましょう。
「たいしたことじゃないから」と相談するのを遠慮していると、不安を抱えたまま過ごすことでストレスもたまります。気になること、不安なことをその都度相談するのは大切なことです。
まとめ
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つわりがなくなることは、それに伴うつらさがなくなるという、うれしさがある一方、急な体調の変化にかえって不安を感じる人もいるでしょう。
つわりが急になくなることの原因は、流産であることもあれば、そうでないこともあります。まずは、つわりの消失以外の症状の有無を確認し、気になることがあれば、必要に応じて医師などに相談してください。なんとなく不安を感じながら過ごすより、気になることは遠慮なくかかりつけの産婦人科に相談しながら、心穏やかに妊娠期間を過ごしていきましょう。
(文:山本尚恵/監修:窪麻由美先生)
※画像はイメージです
※この記事は、マイナビウーマン子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました
※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます