【医師監修】おしるし後のお風呂は入っていい? 入浴のタイミングや注意点も解説
出産が近づいたときに起こる「おしるし」。出産が始まるとしばらくお風呂に入れなくなりますが、おしるしの後、お風呂には入っても良いのでしょうか。注意したいこととあわせて解説します。
そもそもおしるしってどんなもの?
「おしるし」は出産前にみられる少量の出血が混ざったおりものです。分娩が近いことを知らせる兆候の一つで「産徴(さんちょう)」とも呼ばれます。
おしるしのしくみ
妊娠中、子宮頸管の付近は粘液で満たされています。また胎児と羊水は卵膜に包まれていて、卵膜は子宮壁に張り付いています。
出産が近づきお腹の張りも増え、胎児が下がってくると、卵膜の一部が子宮壁から剥がれて出血します。その出血が粘液とともに排出されたのが「おしるし」です。
よく「おしるしの後1~2日で出産」といわれますが、実際は個人差が大きく、出産が始まるまでもっと日数がかかることもあり、おしるしが2~3日続くこともあります。また、人によっては陣痛開始後にみられることもあれば、まったくないままお産になることもあります。
おしるしでの出血の特徴
おしるしは血液と粘液が混ざったもので、茶褐色からピンク色に見えることが多いようです。
サラサラした多量の出血があった場合や、血の塊(凝血塊)がみられる場合、お腹の張り、激しい腹痛が続くときはほかの原因も考えられるのですぐに病院に連絡をしてください。
おしるしがきた後にお風呂に入っても大丈夫?
さきほど説明した通り、おしるしが来てもすぐに陣痛が始まるとは限りません。おしるしのようなものがあったけど、陣痛はない。そんな時、入院するまでの間のお風呂はどうすればいいのか気になりますね。
出産前に入浴しておきたい妊婦は多い
おしるしが来たら出産が近づいている証拠。入院すると出産が終わって落ち着くまで体を洗えないし、産後はしばらくシャワーのみとなります。出産前に湯船にゆっくりつかっておきたい、と思うのも当然です。
おしるしだけなら入浴はOK
そうは思っても、出産を控えた身体に何か変化があったら入っていいのか不安になりますよね。でも、おしるしだけで破水や陣痛がないのであれば、普段通りの生活をしてOK。入浴も問題ありません。
とはいえ、臨月はいつお産になるかわからない時期。このあと紹介する注意点に気をつけて、無理のない範囲で済ませてください。お腹の張りや胎動などで、何かいつもとちがう、様子が変だと思うことがあれば病院に連絡を。
破水か判断がつかないときは入らない
おしるしは卵膜が子宮壁からはがれることで起こりますが、卵膜自体が破れて羊水が外へ流れ出るのが「破水」です。通常は分娩が進んでから起こりますが、「前期破水」といって陣痛の前に起こることもあります。
破水後は、卵膜の破れたところから細菌が入って赤ちゃんに感染する恐れがあるため、入浴はできません。前期破水の場合、すぐに入院が必要となります。破水で出てくる羊水の量は人によってさまざまで、尿もれ程度の少量のこともあれば、流れ出るほど量が多いこともあります。破水が疑われるときは清潔なナプキンをあててすぐに病院に連絡をしてください。
おしるし後にお風呂に入るときの注意点
おしるし後のお風呂も、臨月になってからと同様に次のことに気をつけて入りましょう。
長湯や熱いお湯での入浴は避ける
42℃以上の熱いお湯に入ると交感神経が刺激されて血圧が上がってしまいます。お湯の温度は40~41℃くらいにしましょう。ただし、適温であっても、長時間入浴をすると血管が拡張して血圧が下がります。
すると脳へまわる血液の量が少なくなって立ちくらみを起こしたり気分が悪くなったり、ひどい場合は倒れてしまう可能性もあります。妊娠中はのぼせやすいので、長湯は避けて、湯舟に入る時間は10分以内にしてください[*1]。
また、気温の急激な変化は血圧の乱高下を招くので、寒い時期は入浴前に脱衣所と浴室を十分暖めましょう。食後すぐの入浴は避け、浴槽から急に立ち上がらないようにするのも大切です。
水分補給は十分にする
妊娠中は血液が固まりやすい状態になっています。これは出産による出血に備えた体の自然な変化と考えられていますが、そのために妊婦さんは通常時より血液中に血の塊(血栓)ができやすくなっています。
入浴で汗をかくと体内の水分が失われてさらに血液が固まりやすくなるので、しっかりと水分補給をしましょう。入浴前にコップ1杯の水を飲み、入浴中・入浴後もこまめに水分を摂るようにしてください。立ちくらみの予防にもなります。
転倒に気を付ける
臨月はお腹が大きくなっているので足元が見えにくく、重心も変わるので慣れた自宅の浴室であっても転倒には注意が必要です。転倒してしまうと、その刺激で破水が起きたり胎盤が剥がれたりする可能性もあります。
家に誰かがいる時間帯に入浴する
家に1人でいるときは避けて、誰かがいるときに入浴するようにしましょう。立ちくらみや足をすべらせて転倒したときなどに、誰にも気づかれないでいると適切な処置を受けるのが遅れてしまうからです。
まとめ
おしるしがあった後のお風呂について紹介しました。分娩の進み方はもともと個人差が大きいうえ、特に初産であれば、破水やその他の出血などとの区別が難しく、判断に迷うこともあるでしょう。自分や家族ではどうしていいかわからないときや不安なことがあったら、遠慮せずに産院に連絡を入れて、指示を仰ぐようにしましょう。
(文:佐藤華奈子/監修:浅野仁覚先生)
※画像はイメージです
[*1]東京医学社「周産期医学」増刊「周産期相談300 お母さんへの回答マニュアル」,1998,p.184
※この記事は、マイナビウーマン子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました
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