【医師監修】臨月の下腹部痛…これってなに?前駆陣痛と陣痛、その他の痛みの原因
臨月と呼ばれる妊娠10ヶ月に入ると、出産の日はもうすぐ。赤ちゃんに会えるのは楽しみだけれど、陣痛がいつ始まるかドキドキ不安な人も多いのではないでしょうか。一方で、臨月に感じるお腹の痛みすべてが陣痛ではありません。今回は臨月の下腹痛について、陣痛とその他の痛みとの見分け方も含めて解説します。
臨月に下腹部が痛い原因は陣痛?
臨月ごろになると、いつ、どういうタイミングで陣痛が始まるか、気になる人も多いのではないでしょうか。また、お腹が痛いと「もしかして陣痛?」と思うことでしょう。
まずは「陣痛」とはどのようなものなのかを知り、あわせて「それ以外で臨月に起こりやすい腹痛・起こる可能性のある腹痛」のケースを確認しましょう。
ケース1. 陣痛|痛みが周期的に起こる
陣痛とは、赤ちゃんを母体の外へ出そうとする子宮の収縮が繰り返して起こるものです。痛みを伴う子宮の収縮が起こったあとは、いったん収縮が休止しますが、再びまた収縮が始まります。この収縮と休止が交互に繰り返される状態が陣痛です。
陣痛は自分の意思ではコントロールできず、いったん始まると分娩が終わるまで止めることはできません。
陣痛の感じ方には個人差があり、進行具合も人それぞれですが、通常は分娩が進むにつれて痛みはどんどん強くなっていきます。ママにとっては痛みを伴うつらい陣痛ですが、赤ちゃんを外へ出すために必要なものです。
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ケース2. 前駆陣痛|不規則な痛みが起こる
臨月に子宮が収縮するような腹痛を感じると、「これが陣痛?」と思ってしまいますよね。間違いやすいのが「前駆陣痛」と呼ばれる子宮収縮の痛みです。
出産日が近づくと感じるようになる「前駆陣痛」と、分娩の始まりとなる「陣痛」、これらにはどのような違いがあるのでしょうか。それぞれの特徴についてまとめました。
陣痛と前駆陣痛の違いは「周期的かどうか」
前駆陣痛と陣痛の大きな違いは、痛みが周期的に起こるかどうかです。
前駆陣痛の場合は痛みの間隔が不規則。一方、陣痛の場合は子宮が収縮して強い痛みを感じる時間と子宮収縮が止んで痛みがおさまる時間が交互に繰り返し、周期的に起こります。
・痛みの長さの違い
前駆陣痛の場合は痛みが続く時間も不規則です。陣痛は子宮口全開の時点で、平均的な持続時間は1分ほどです[*1]。
・痛みの強さの違い
前駆陣痛の痛みはさほど強いものではなく、安静にしていれば耐えられる痛みであることが多いものです。
陣痛の場合は、分娩開始からだんだんと痛みが強くなります。子宮口が全開になり、赤ちゃんの頭が見え隠れするようになるころ痛みはピークに。赤ちゃんが無事に母体の外へ出ると、痛みは無くなります。
ケース3. 出産間近の影響|赤ちゃんの位置や便秘による痛み
出産日が近づくにつれて、少しずつ赤ちゃんの頭が子宮の下へ下がってきます。そのことで恥骨や股関節に痛みを感じたり、骨盤が押されることで痛みを感じたりする人もいます。
ほかにも妊娠中はホルモンの影響や、大きくなった子宮で腸が圧迫されて便秘になる人もいます。そのため便秘が原因の腹痛を感じる人もいるようです。
ケース4. 異常発生|切迫早産や常位胎盤早期剥離による痛み
陣痛ではない痛みで、一時的なお腹の張りや痛み、前駆陣痛の場合は心配はいりません。しかし、中には注意したい腹痛もあります。過剰に心配する必要はありませんが、万が一のため、臨月に気を付けたいお腹の痛みについても知っておきましょう。
■妊娠37週未満の下腹部痛:切迫早産の可能性
臨月に入っても妊娠37週未満での出産は早産となります。37週未満であるにも関わらず、規則的な下腹部痛、性器出血があるときは、切迫早産の可能性があります。
出産予定の産院へ速やかに連絡しましょう。
関連記事 ▶︎切迫早産とは?なりやすい人の原因と症状
■急激な下腹部痛:常位胎盤早期剥離の可能性
胎盤は通常、赤ちゃんが母体の外に出てからはがれ落ちますが、妊娠中や分娩経過中にはがれてしまうことを「常位胎盤早期剥離」と言います。
発生頻度は全分娩の0.5~1.3%なので極度に心配する必要はありませんが、急激な腹痛や性器出血を伴う腹痛には注意しておきましょう[*2]。
関連記事 ▶︎胎盤ってどんなもの? 前置胎盤・常位胎盤早期剥離などのトラブル
まとめ
臨月に入ると、赤ちゃんに会える日は間もなく。いつ陣痛が来て出産が始まるかドキドキして、ちょっとした痛みでも不安になってしまう人が多いかもしれません。
陣痛は反復して起こる規則的な痛みが特徴なので、不規則に起こる前駆陣痛やそのほかの痛みとは違います。突然の強い腹痛や、破水や出血などほかの症状を伴うときは何か問題が起きていることもあります。
何か気になる症状があるときは、すぐ医療機関へ連絡しましょう。
(文:剣崎友里恵、監修:中林稔先生)
※画像はイメージです
[*2]医療情報科学研究所/編・2014年・『病気がみえるvol.10 産科 第3版』・メディックメディア・P114
池ノ上克・鈴木秋悦・髙山雅臣/編・2004年・『NEWエッセンシャル産科婦人科』・医歯薬出版
※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました
※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます