
【医師監修】胎教はいつから?音楽や絵本での胎教の効果とは
妊娠がわかると「胎教」に興味が湧く人も多いのでは。胎教はいつごろから始めるのがよいのでしょう。また胎教というと音楽を聴かせたり、絵本を読んだりするのが一般的ですが、それらには一体どのような効果があるのでしょうか。
胎教とは


まず胎教とはそもそもどんなものなのかと、その効果、行う時期などについて紹介します。
胎教ってどんなもの?
「胎教」は「教える」という文字が入っていることから「胎児への教育」と捉える人も多いかもしれませんが、どちらかというと「妊婦さんが」絵画や音楽で芸術に触れたり心穏やかに過ごすことで、お腹の中の赤ちゃんに良い影響があるように願う考え方を指して、昔から使われてきた言葉のようです。
そこから発展して、妊婦さんやその周囲の人がお腹の赤ちゃんとコミュニケーションを取ろうとすることを胎教と呼ぶこともあります。お腹の赤ちゃんに向かって話しかける、本を読み聞かせる、音楽を聴かせる、お腹を軽くたたいて合図をするなど、さまざまな方法で胎児とコミュニケーションをはかることも、胎教と考えてよいでしょう。
胎教の効果とは?
ところで胎教には、赤ちゃんにとって良い効果が本当にあるのでしょうか。
これについては詳しいことがわかっておらず、お腹の赤ちゃんにクラシック音楽や川のせせらぎ、オルゴールの音などを聴かせることで、赤ちゃんの頭が良くなるなど、直接的に何か良いことがあるのかどうかは不明です。
なお、クラシック音楽というと、その昔、「モーツァルトを聴くと、頭が良くなる」という説が話題になりましたが、現在では否定的な意見が多いようです[*1]。
ただ、妊婦さんのほうで、心地よい音楽によって気持ちが安らいだり、本の読み聞かせやコミュニケーションをはかることで赤ちゃんとの一体感が高まることはあるでしょう。
つまり、赤ちゃんに対してというより、ママがリラックスできることが、胎教による直接的なメリットといえるのかもしれません。
胎教はいつから?
「つわりが治まったら」とか「安定期に入ったら」などと言われることもありますが、胎教はいつごろから始めるのがよいのでしょう。
音楽や読み聞かせなど、お腹の赤ちゃんに音を聴かせることを考えた場合、胎児の聴覚の発達が完了する時期がひとつの目安になるかもしれません。
ヒトの内耳にある「蝸牛(かぎゅう)」という聴覚に関わる重要な器官は、妊娠24週(妊娠7ヶ月)までにだいたいできあがるといわれており、この頃から胎児は子宮の中に伝わる音に対して反応を示すようになります[*2]。
しかし、先ほどもお伝えしたように、胎教は赤ちゃんのためというより、そもそもママのために行うものともいえます。そのため、赤ちゃんの成長時期にこだわらず、好きな時期から胎教を始めてよいのではないでしょうか。「妊娠○ヶ月までに始めるべき」や「この時期になってからスタートすべき」といったことはあまり気にせず、好きな時期から始めてOKです。
胎教の定番!音楽・絵本


「胎教をしたいなら好きに行っていい」と言われると、逆に戸惑ってしまう人がいるかもしれません。何を選んだらいいのか迷ってしまうという人は、胎教の定番や人気のある音楽、絵本などの中から選んでみてもよいでしょう。
おすすめはクラシック? 胎教に人気の音楽
胎教で聴かせる音楽というと、クラシックを連想する人が多いのではないでしょうか。大手通販サイトでも、胎教音楽のジャンルではクラシック音楽やオルゴールが人気のようです。
それら人気の音楽を胎教で聴くのももちろんOKですが、それ以外でもママが好きな音楽であればジャンルに決まりはありません。クラシックにこだわらず、好きな音楽を聴いてリラックスしましょう。
読み聞かせアプリも!胎教に人気の絵本
胎児は声の抑揚(よくよう=上がり下がり)やリズムなどはわかるものの、大人が聞いているように言語として音を聞き分けることはできないようです。それもあってか、胎教として読み聞かせる絵本では、物語を楽しむというより言葉のリズムを楽しむような内容のものが人気となっています。
最近ではプロが絵本の読み聞かせをしてくれるアプリもあります。そういったものを使って、赤ちゃんと一緒に絵本を聞いて楽しむママもいるようです。
音楽・絵本以外にもあるおすすめの胎教方法


音楽を聴いたり、本を読み聞かせたりするほかに、こんな胎教の方法もあります。
話しかける
お腹の赤ちゃんに話しかけることも、胎教のひとつです。赤ちゃんはお腹の中でもママやパパの声を聞いています。
その日の出来事やその時の気持ちなどをやさしく話しかけてあげるのがおすすめです。そうすることで、気持ちが落ち着き安らいだり、赤ちゃんの存在がより身近なものに感じられるでしょう。
歌をうたう
歌うことには心を癒やす効果があるといわれています。歌うことで副交感神経が優位になり、心がリラックスしたり、ストレスの緩和が期待できるのです。
ママがリラックスするのが胎教の基本。歌うことはそれにぴったりといえますね。ママの楽しそうな歌声は、お腹の赤ちゃんも喜んで聴いてくれるのではないでしょうか。
散歩をする
歩くことは血流を促し、ストレス緩和にもつながるとされています。妊娠中、医師から安静などの指示が特にない場合は、散歩などで歩くこともおすすめです。
歩きながら、目にとまった景色などを、お腹の赤ちゃんに教えてあげましょう。ママが歩くことによる振動とともに、やさしい話し声も心地よいリズムとして赤ちゃんに伝わることでしょう。
お腹をさする
お腹をなでるといった、妊婦さんのほとんどが無意識に行っている動作も、実は胎教のひとつと言っていいかもしれません。お腹をなでると、その音や振動などが赤ちゃんにも伝わります。
胎動が始まっている時期であれば、タイミングによっては赤ちゃんが胎動を返してくれるかもしれません。
胎教に悪い・悪影響なものとは


では、胎教に良いことの逆、胎教にとって悪影響となることには、どんなことがあるのでしょうか。
ママのストレスは赤ちゃんに悪影響
妊婦さんがストレスを抱えることは、赤ちゃんの健康に悪影響を与えるというデータが報告されています。
妊娠中のストレスや不安と、生まれてくる赤ちゃんの情緒や行動面との関係を調べた調査によると、妊娠中に強い不安があった妊婦さんから生まれた子供は、生後81ヶ月(6歳9ヶ月)時点で多動や情緒不安定などの傾向が強かったことがわかっています[*3]。
これは、ママがストレスを感じると過剰に分泌されるコルチゾールという物質に、胎児が長期間さらされることが一因となっているのではないかと考えられています。
そのためにも、妊婦さんはなるべくならストレスや不安を抱え込まないように妊娠期間を過ごすことが大切です。ストレスを感じたら、こまめに発散することを心がけましょう。
普段からストレス発散・リラックスを心がけよう
ストレスの発散やリラックスを心掛けるのは、妊娠中に限らず、普段から大事にしておきたいことです。体の疲れは「だるい」「(体が)重い」などの症状が現れるため、気付きやすい傾向がありますが、心の疲れにはついつい気付かず、無理をしてしまうこともあります。
わけもなくイライラしたり、やる気が出なかったりなど、心の疲れを感じたときは、例えば呼吸をゆっくりしたり、気持ちを書き出してみたり、誰かに愚痴ったりして、ストレス発散やリラックスを意識してみるとよいですね。適度に体を動かしたり、音楽を聴いたり歌を歌うなど自分にとって楽しいことをして気分転換するのも効果的です。
実は、妊娠中、心に不調をきたす妊婦さんは少なくありません。何かおかしいと感じたら、ひどくなる前に市町村の相談窓口やかかりつけの産院の助産師さんなどに少し勇気を出して相談してみてください。妊婦さんの様子が心配な周囲の人も、そういった専門家にできるだけ早く相談してください。きっと力になってくれるはずです。
まとめ


音楽を聴いたり、絵本を読んだりすることだけが胎教ではありません。声をかけたり、お腹に手を当てたりなど、多くの妊婦さんが無意識のうちにやっていることも立派な胎教のひとつです。ここで解説したように、胎教に赤ちゃんの頭が良くなるなどの効果があるかどうかはよくわかっていません。それよりも、限りある赤ちゃんと一心同体の生活をより楽しむための方法のひとつとして、無理のない範囲で試してみてくださいね。
(文:山本尚恵/監修:浅野仁覚先生)
※画像はイメージです
[*1]The Harvard Gazette: Muting the Mozart effect
[*2]『AMERICAN ACADEMY OF PEDIATRICS Committee on Environmental Health Noise: A Hazard for the Fetus and Newborn』PEDIATRICS Vol. 100 No. 4 October 1997
[*3]「妊産婦メンタルヘルスケアマニュアル ~産後ケアへの切れ目のない支援に向けて~」公益社団法人 日本産婦人科医会(平成29年3月)p12
※この記事は、マイナビウーマン子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました
※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます