【医師監修】赤ちゃんの中耳炎 | 見分け方のサインと3つの予防法
中耳炎は赤ちゃんがかかりやすい病気なので、新生児を子育て中のママは最低限の知識を押さえておきましょう。適切な治療を行わないで慢性化してしまうと、聴力低下などになってしまったりすることがあります。赤ちゃんが中耳炎になったときに出すサインや、治療法、ホームケアの方法などについて紹介します。
- そもそも中耳炎ってどんな病気?
- 中耳炎の「中耳」ってどこにあるの?
- 中耳炎はどんな病気なの? 原因は?
- 中耳炎の種類
- どうして赤ちゃんは中耳炎になりやすいの?
- こんなときは中耳炎かも? 赤ちゃんの仕草やサイン
- 赤ちゃんの中耳炎は大人が気づいてあげることが大切!
- 赤ちゃんの急性中耳炎のサイン
- 赤ちゃんの滲出性中耳炎のサイン
- 赤ちゃんの中耳炎はどうやって治療するの? 薬はあるの?
- 急性中耳炎の治療法は?
- 中耳炎のホームケアはどうすればいい?
- 耳だれはやさしく拭き取って
- 耳が痛そうなときはどうすれば良いの?
- お風呂に入れても大丈夫?
- 中耳炎の赤ちゃんを飛行機に乗せたらダメ?
- 中耳炎から赤ちゃんを守る予防策3つ
- 赤ちゃんの風邪に注意!
- 鼻水をたまったままにするのはNG!
- ミルクを寝かせて飲ませていませんか?
- まとめ
そもそも中耳炎ってどんな病気?
※画像はイメージです
中耳炎の「中耳」ってどこにあるの?
耳は、外側から「外耳(がいじ)」「中耳(ちゅうじ)」「内耳(ないじ)」という3つの部分から成り立っています。このうち「中耳」というのは、鼓膜の奥にある空洞のことで、外耳から入って鼓膜を振動させた音を、増幅して耳の一番奥にある内耳に伝える役割をしています。
中耳炎はどんな病気なの? 原因は?
中耳炎は、細菌やウイルスが中耳に入り込み、炎症を起こしたり、滲み出た液体がたまったりする病気です。お風呂やプールの水が耳の中に入ることで中耳炎になると思う人もいるようですが、直接的な原因とは言えません。中耳の入り口には鼓膜が張っているので、鼓膜が正常なら外から水が入ることはありません。中耳炎の原因になる細菌やウイルスは、鼻の奥に通じている耳管を通って中耳の中に入り込みます。
中耳炎の種類
中耳炎には、いくつか種類がありますが、代表的なのは、「急性中耳炎」と「滲出性(しんしゅつせい)中耳炎」です。
・急性中耳炎…中耳に急性の炎症が起こった状態のことです。風邪などのウイルスや細菌の感染症が原因で、鼻やのどについた細菌やウイルスが中耳に入り込むことで起こります。生後6ヶ月までに約半数、1歳までに約8割、2歳までに約9割の赤ちゃんが1回は中耳炎にかかると言われているので用心しましょう。
・滲出性中耳炎…鼓膜の奥の中耳腔に液体が溜まった状態のことです。主に鼻の調子が悪い場合や耳管の働きが低下した場合になりやすく、また急性中耳炎が治っていく過程で滲出性中耳炎になることもあります。
どうして赤ちゃんは中耳炎になりやすいの?
中耳炎は、大人がかかることはそれほど多くありません。しかし子供には、ごくありふれた病気で、特に2歳頃までには非常に多く見られます。その主な理由として、次の2つのことが考えられます。
・耳の構造の問題
中耳と鼻やのどをつなぐ耳管は、成長にするに従って、細く長くなり、角度がついていきます。しかし、小さいうちは、太く短く、角度が水平に近いので、風邪などをひくと、鼻やのどで増殖した細菌やウイルスが中耳に入り込みやすいとされています。
・免疫力が低い
赤ちゃんは、お腹の中でお母さんから免疫をもらって生まれてくるので、生まれたばかりの頃は、あまり感染症にかかりません。しかし、生後6ヶ月くらいになると、お母さんからもらった抗体が少なくなるため、細菌やウイルスに対しての抵抗力が低下します。免疫力が発達する2歳頃までは、感染症にかかりやすい傾向があるのです。
こんなときは中耳炎かも? 赤ちゃんの仕草やサイン
赤ちゃんの中耳炎は大人が気づいてあげることが大切!
一般的に急性中耳炎になると、発熱、耳の痛み、耳だれなどの症状が現れます。一方、滲出性中耳炎の場合は、難聴や耳の閉塞感(詰まった感じ)が主な症状です。
しかし、赤ちゃんの場合は、痛みや耳の不快感を言葉で伝えることができないので、周囲の大人が異変に気づいてあげることが、早期発見のカギになります。
では、具体的に赤ちゃんがどんな様子だったら、中耳炎の可能性があるのでしょうか? ここからは、赤ちゃんの中耳炎のサインをご紹介していきます。
赤ちゃんの急性中耳炎のサイン
・なかなか熱が下がらない
・機嫌が悪い
・理由がよくわからないのにグズグズする
・夜泣きをする
・耳をやたらに触る
・耳だれが出る
赤ちゃんの滲出性中耳炎のサイン
・話しかけても、振り向かない、返事をしない
滲出性中耳炎の症状は、難聴(音が聞こえにくくなる)だけなので、赤ちゃんが泣いて訴えるようなことはなく、気づきにくいのが特徴です。聞こえが悪い期間が続くために言語の発達に影響が出る場合もあります。
赤ちゃんの中耳炎はどうやって治療するの? 薬はあるの?
赤ちゃんが中耳炎かもしれないと思ったら、できるだけ早く耳鼻科に連れていきましょう。病院では、次のような治療を行います。
急性中耳炎の治療法は?
急性中耳炎の治療は、重症度によって治療内容が変わり、抗菌薬や痛み止めの使用のほか、軽度の場合は3日ほど経過観察することもあります。膿がたまって痛みがひどい場合や高熱の場合は、鼓膜を少し切って膿を出すことも。
急性中耳炎の治療で注意したいのが、症状が軽減したように感じたからといって、処方された抗菌薬の服用を途中でやめたり、通院をやめたりしないこと。自己判断で治療をやめてしまうと、滲出性中耳炎や反復性中耳炎(何度も急性中耳炎を繰り返す病気)などに移行してしまうことも。耳鼻咽喉科で医師に診てもらって治ったといわれるまで治療を続けましょう。
滲出性中耳炎の治療法は?
滲出性中耳炎の治療には、「中耳炎を引き起こしている鼻やのどの病気に対する治療」と「滲出液をなくして聞こえを良くするための耳の治療」があり、両方を並行して行っていきます。
・鼻やのどの病気に対する治療
鼻の中やのどはできるだけ清潔にしましょう。鼻水が多いと感じたときにはこまめに吸い出してあげます。鼻水をためないことが大事です。また、必要に応じて抗ヒスタミン薬などの内服薬を使用する場合もあります。
・耳の治療
症状が軽い場合は、鼻から空気を送って滲出液を排出する「耳管通気」を行ったり、内服薬で経過をみたりします。症状が重く、なかなか水が抜けない場合には「鼓膜切開」を行います。
また、薬を使った治療や鼓膜切開を繰り返しても、滲出液がたまってしまうという場合は、鼓膜にチューブを入れる手術を行います。
中耳炎のホームケアはどうすればいい?
耳だれはやさしく拭き取って
耳だれが出ているときは、清潔なガーゼや綿棒でやさしく拭き取り、耳の周りを清潔にしてあげてください。ただし、耳の奥まで拭く必要はありません。
耳が痛そうなときはどうすれば良いの?
急性中耳炎の痛みは、冷やすことでやわらげることができます。痛みが激しくて泣き叫んでいるような場合は、水で濡らして絞ったタオルやタオルにくるんだ保冷剤などを使って、耳の後ろを軽く冷やしてあげましょう。ただし、氷などでキンキンに冷やすと、かえって痛みが強くなることがあるので注意しましょう。夜間などすぐに病院にかかれないときには、まず手持ちの痛み止め(アセトアミノフェン系)を飲ませても良いでしょう。
お風呂に入れても大丈夫?
体が温まると炎症が悪化してしまうので、「熱があるとき」「鼓膜を切開したとき」「耳だれがひどい」ときは、お風呂に入れないようにしましょう。軽いシャワー程度なら問題ありません。
中耳炎の赤ちゃんを飛行機に乗せたらダメ?
やむを得ない場合は仕方ありませんが、中耳炎が治らないうちはできるだけ飛行機は避けた方が安心です。
中耳炎から赤ちゃんを守る予防策3つ
赤ちゃんの風邪に注意!
中耳炎は、風邪に続いて起こりやすい病気なので、風邪を予防することが中耳炎予防につながります。赤ちゃんに風邪をうつさないように、家族の人は、うがい・手洗いをしっかり行い、風邪が流行っているときは、人混みに行かないようにしましょう。また、赤ちゃんが風邪をひいてしまったときは、早めに治療を受けさせてあげてください。
鼻水をたまったままにするのはNG!
赤ちゃんが風邪をひいて鼻水を出しているときは、鼻水で呼吸が苦しい、眠れないという症状がある場合には市販の「鼻水吸引器」を使って、こまめに吸引してあげましょう。耳鼻科で鼻を吸ってもらうことも効果があります。また、鼻をかめる場合は、両方同時ではなく、片方ずつ鼻をかませてあげることが大切です。特に、黄色い鼻水を出しているときは、細菌に感染している可能性が高いので注意しましょう。
ミルクを寝かせて飲ませていませんか?
赤ちゃんを仰向けに寝かせたままミルクを飲ませると、ミルクが耳管を通じて中耳に流れ込んでしまい、中耳炎になることがあります。ミルクを飲ませるときは、頭を起こした姿勢をとらせるようにしましょう。
まとめ
中耳炎は、赤ちゃんがかかりやすい病気なので、日頃から様子をよく観察し、おかしいと感じたら、なるべく早く耳鼻科に連れて行ってあげてください。長引く熱も発症のサインです。また、発症したら完全に治さないと再発を繰り返す恐れもあるのでご注意下さい。滲出性中耳炎は、聴力低下につながることもあるので、医師の指示に従って、根気よく治療を続けるようにしましょう。
※この記事は 医療校閲・医師の再監修を経た上で、マイナビ子育て編集部が加筆・修正し掲載しました(2018.08.20)
※記事の修正を行いました(2019.06.11)