
【医師監修】妊娠中の尿の悩み|尿に混ざっている白い浮遊物の正体は?
健診の度に採尿をする妊娠中。何気なく尿をとって白い浮遊物を見つけると、何か異常があるのか、病気ではないか気になってしまいますね。ここではその浮遊物の正体や尿が白くにごる原因、考えられる病気について説明します。
尿に混ざっている白い浮遊物の正体とは


ふわふわした白い綿のようなものが混ざっている、または白くにごっている尿を「混濁(こんだく)尿」といいます。正常な状態とは異なりますが、必ずしも病気とは限りません。これはいったい何が原因で起こるのでしょうか。
尿が白くにごる原因
健康な人でも、尿のpHや温度などにちょっとした変化があると尿中の塩類(ミネラル)が析出し、混濁尿になることがあります。その場合は特に異常ではありません。
食べたものの影響で白くにごることがある
一般に尿のpHは「動物性食品を多く摂ると酸性」に、「植物性食品を多く摂るとアルカリ性」に傾くといわれています。
尿が酸性に傾くと、肉類などに多く含まれる尿酸塩が析出しやすくなるので、これが白濁の原因に。尿がアルカリ性に傾くと、炭酸塩やリン酸塩などが析出しやすくなり、尿がにごります。これらの塩類も食品や飲料によく含まれています。
なお、尿がアルカリ性に傾いて白濁している場合は、尿に「お酢」を加えると透明になります。酸性に傾いて白濁している場合は、自宅ではなかなか試しづらいですが、尿を加熱するとにごりが消えます。
また、尿路結石の原因として知られる「シュウ酸」を多く含む食品を摂り過ぎると、尿中にシュウ酸カルシウムの結晶ができやすくなります。これが尿のにごりの原因になることもあります。
シュウ酸が多い食品・飲料には、ほうれん草などの葉菜類、タケノコ、玉露や抹茶などのお茶、紅茶、コーヒー、バナナ、チョコレート、ココア、ピーナッツ、アーモンドなどがあります。一時的に尿がにごることは心配ありませんが、シュウ酸の摂り過ぎによる混濁尿が長く続くと尿路結石の原因となるおそれもあるので注意しましょう。
正常な尿の色と状態
正常な尿は「淡黄~黄褐色」をしています。黄色の素になるのは、寿命がきた赤血球が肝臓で分解された際にできる「ビリルビン」です。ビリルビンは体に不要なものなので尿と一緒に排出されますが、その際に一部が酸化して「ウロクロム色素」という黄色の色素に変化します。
この色素の排泄量はほぼ一定なので、「尿の量が多ければ薄い黄色」に「尿の量が少なければ濃い色」になります。たとえば水分をたくさん摂ったときや汗をあまりかかなかったときは尿量が多くなって淡い色に。逆に起床時や汗をたくさんかいた後などは濃い色になります。
また、排出直後の尿にはあまり臭いはありません。しばらく放置すると、尿に含まれる尿素が細菌によって分解されることで「アンモニア臭」が発生します。
炎症が起きている可能性もある
尿路に細菌が入ると、炎症が起きて尿中に白血球が大量に混ざり、尿が白濁します。正常な尿にも白血球は含まれますが、多くはありません。白血球によってにごった尿を「膿尿(のうにょう)」といいます。膿尿は尿路感染症の症状のひとつです。
おりものが混ざっているケースも
尿自体の色は正常でも、おりものが混ざることで白い浮遊物が見えたり、にごって見えたりすることも。妊娠するとおりものの分泌量が増え、週数が進むにつれて増加する傾向があるので、尿に混ざることも十分考えられます。
白い浮遊物が混ざる場合に考えられる主な病気


女性は尿道が短い、腟に細菌が定着しやすいなどのことから、尿道口から細菌が入りやすく、尿路感染症にかかりやすいといわれています。また、妊娠中は尿路が子宮に圧迫されることで尿が停滞したり、ホルモンの影響で膀胱が弛緩して尿管からの逆流が起きたりすることから、さらにかかりやすくなります。念のため、尿に白い浮遊物が混ざる病気もチェックしておきましょう。
膀胱炎
尿は腎臓の「腎盂(じんう)」という場所で作られたあと、腎臓と膀胱をつなぐ「尿管」、尿を溜めておく「膀胱」、膀胱と尿道口をつなぐ「尿道」を通って排出されます。腎臓も含めた尿の通り道を「尿路」といいます。
尿路に細菌が入って増殖し炎症を起こすことを「尿路感染症」といい、炎症が起こる場所によって「膀胱炎」「腎盂腎炎」にわけられます。
膀胱炎では普通発熱はなく、「膿尿」のほかに「排尿時の痛み」「残尿感」「頻尿」といった症状があらわれます。炎症がひどくなると「血尿」が出ることもあります。
腎盂腎炎
細菌が膀胱から尿管を通って腎盂に達し、増殖すると「腎盂腎炎」になります。「38℃以上の高熱」が出て、「腎臓がある場所(背中の背骨の左右)に痛み」が生じます。腎盂腎炎でも白くにごった尿が出て、炎症がひどいと血尿が出ることがあります。
最初は膀胱炎だったものが悪化して腎盂腎炎になることもあります。とくに妊娠中は膀胱炎から腎盂腎炎になりやすいと言われています。腎盂腎炎になると流産や早産など、ママと赤ちゃんに大きな影響を及ぼすこともあります。
腎臓結石・尿管結石
尿中の成分が固まってできた結石が尿路にとどまっている状態を「尿路結石症」といいます。結石はほとんどが腎臓でできて、尿と一緒に尿管、膀胱へと流れていきます。
そのまま排出されればよいのですが、排出されないまま尿路のどこかにとどまると尿が詰まるようになり、「痛み」や「残尿感」「尿がなかなか出ない」といった症状があらわれます。また血液混じりの白くにごった尿が排出されます。
結石がある場所によって、「腎臓結石」「尿管結石」「膀胱結石」「尿道結石」にわけられますが、大半は腎臓結石か尿管結石です。尿管結石は激しい痛みを伴いますが、腎臓結石では痛みはほとんどありません。
まとめ

尿に白い浮遊物がある場合や、白くにごっている場合に考えられる原因や病気を紹介しました。病気でなくても尿に浮遊物が見られることは実はよくあるのですが、妊娠中は尿路感染症にもかかりやすい状態です。毎回の妊婦健診で尿の状態はチェックされていますが、気になる症状があったら、早めの受診を心がけましょう。
(文:佐藤華奈子/監修:直林奈月先生)
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※この記事は、マイナビウーマン子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました
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