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2021年10月12日 17:15 更新

【医師監修】妊娠初期の腰痛はなぜ起こる? その特徴と対処法

妊娠中に腰痛で悩まされる妊婦さんは少なくありません。妊娠後期の腰痛はよくあることですが、実はまだお腹が目立たない妊娠初期のうちから腰痛になることもあります。妊娠初期の腰痛の特徴や、腰痛になったらどうすればいいかお伝えします。

妊娠初期の腰痛はなぜ起こるの?

腰痛の女性

まず、妊娠初期に腰痛が起こる原因を知っておきましょう。

「リラキシン」というホルモンの影響

妊娠初期に起こる腰痛の原因としてまずあげられるのが、「妊娠期特有のホルモンの影響で関節がゆるむ」ことです。

赤ちゃんができると、妊娠初期から「リラキシン」というホルモンが分泌されるようになります。このホルモンには、子宮が大きくなっていくことに備えたり、お産の際、赤ちゃんが産道を通りやすくするために、「関節をゆるめる働き」があります。

リラキシンが分泌されると、その影響で骨盤の前方にある「恥骨結合」と、後方にある「仙腸関節」がゆるみます。その結果、骨盤が不安定になり、腰痛を起こしやすくなるのです。

骨盤の構造(イメージ)
骨盤の構造(イメージ)

子宮を支える靭帯や膜が引っ張られるから

もう1つの原因は、「子宮を支える靭帯や膜が引っ張られる」ことです。

妊娠初期にも子宮が大きくふくらむ準備はすでに始まっています。この準備として子宮への血流が増えて筋肉が伸びる時に、子宮を支える靭帯や膜も引っ張られます。そのことが原因で腰痛を感じる人がいる可能性もあります。

妊娠初期の腰痛が起こる時期と特徴

妊娠3ヶ月ごろのエコー写真

妊娠初期に腰痛が起こる場合、いつごろから始まる可能性があるのでしょうか。また、痛み方には何か特徴があるのでしょうか。

妊娠3ヶ月ごろから始まる可能性あり

関節をゆるめるホルモン「リラキシン」は、妊娠初期に分泌量が高くなると言われており、妊娠3ヶ月ごろにはすでに分泌され始めています[*1]。

そのため、妊娠3ヶ月ごろから腰痛が始まってもおかしくはありません。

腰からおしりや脚の付け根の痛み

妊娠初期の腰痛は、おもに「不安定になった骨盤」と「子宮を支える靭帯や膜が引っ張られること」によって起こると考えられます。そのため、

・腰~おしりにかけて
・脚のつけ根


辺りが痛みやすいかもしれません。

妊娠初期に腰痛があったら何か影響はあるの?

疑問がある女性のイメージ

妊娠初期の腰痛は、赤ちゃんやこれからの体調に影響するのでしょうか?

赤ちゃんのことは心配しないで

ママの腰痛そのものが、赤ちゃんに影響するかもと心配する必要はありません。
ただし、腰痛対策の薬や湿布の中には胎児に影響する可能性のあるものがあります。妊娠中は、湿布であっても自己判断で購入して使うのはやめましょう。

でもあまり悪化させないように

妊娠初期に始まった腰痛は、その後も続くことがあります。妊娠中期、後期にはお腹が大きくなることで、立ったり歩いたりする際、バランスを取ろうとして腰をそらすようになります。そのため、腰回りにさらに負担がかかるようになるからです。

もし妊娠初期に腰痛が起こったら、できるだけ長引かせない・悪化させないようにしておくと安心です。腰痛対策はこのあと解説します。

妊娠初期の腰痛対策

腰痛の女性

ここからは、妊娠初期に腰痛で悩まされたときの対策を解説します。

痛む動作を控える

腰痛があるときは、まずは、痛みを感じやすい動作や姿勢をできるだけ控えましょう。

また、急な動きをすると不用意に腰に負担をかけてしまうので、立ったり座ったりするときはゆっくり動きます。長時間同じ姿勢でいるのは避け、1時間に最低1回は伸びなどで体を動かすのも大切です。

自己判断での薬や湿布は控える

湿布薬

妊娠中は、腰痛でつらくても、自己判断で痛み止めを飲んだり湿布を貼ったりするのはやめましょう。こうした薬や湿布の中には、妊娠中に使えないもの、お腹の赤ちゃんに影響を及ぼす可能性がある種類もあるからです。

腰痛が続いてつらいときには、かかりつけの産婦人科に相談して妊娠中に使える薬を処方してもらうのがおすすめです。

ひどい/続く/他の症状もある場合は早めに受診

ひどい腰痛や痛みがなかなか治まらずつらい場合は、あまり我慢せず早めに受診しましょう。

なお、腰痛というと何もしなくてもしばらく安静にしていれば治まるイメージがあるかもしれませんが、腰痛だけでなく発熱もある場合は、「腎盂腎炎」などの病気が原因で腰痛が起こっている可能性もあります。腎盂腎炎は膀胱の中の細菌が尿管を上がり、腎盂で炎症を起こす病気です。この場合は抗菌薬(抗生物質)による治療が必要です。

腰痛だけでなく熱もある場合はとくに、できるだけ早めにかかりつけの産婦人科などに相談し、適切な治療を受けましょう。

仕事が辛い人は「母健連絡カード」を活用して

腰痛が続いて、仕事がつらい妊婦さんに知っておいてほしいのが、「母健連絡カード(母性健康管理指導次項連絡カード)」です。

「母健連絡カード」は、働く妊産婦さんが医師から受けた診断や指導を職場の事業主に伝えるためのカードです。このカードを提出された事業主は、通勤の緩和や勤務時間の短縮、仕事内容の調整など、適切な措置を講じる必要があります。

腰痛で仕事に支障があると感じたら、医師に相談してみましょう。なお、母健連絡カードの様式は母子手帳に載っているので、それをコピーして使用もできますし、下記のサイトからダウンロードすることもできます。

妊娠初期の腰痛にできるホームケア

ジョギングする女性
Lazy dummy

妊娠初期に腰痛で困ったら、まずは産院で相談してください。治療を受け、ひどい腰痛が治まったら、次のようなホームケアも試してみましょう。

骨盤ベルトを使ってみる

妊娠中も使える「骨盤ベルト」で不安定になっている骨盤周辺を支えると、腰痛改善につながります。

詳しくはかかりつけの産婦人科で、医師や助産師に相談してみましょう。

日ごろから軽い運動をする

運動不足で筋肉が衰えると、かえって症状が長引くこともあります。体調のいい日には、ウォーキングや軽いストレッチなど、妊娠中でもできる運動をしましょう。運動によって血行が改善することで、腰痛が落ち着くこともあります。

冷えを避け血行を良くする

体が冷えると筋肉がこわばり、腰痛が強くなりやすいものです。腰痛が気になる時は、足腰をあまり冷やさないようにし、ぬるめのお風呂にゆったりつかったりして血行を改善しましょう。

まとめ

妊娠初期の女性

妊娠初期の腰痛は、リラキシンというホルモンが分泌されることや、子宮を支える靭帯や膜が引っ張られることで起こやすくなります。腰痛そのものはお腹の赤ちゃんには影響しませんが、その後も続く妊娠生活を快適に過ごすために悪化させないように心がけましょう。

腰痛が起こったら痛みを感じやすい姿勢や動作は控えます。またひどく痛んだりなかなか治らない場合、発熱など他の症状も伴う場合は、早めに受診しましょう。腰痛で仕事がつらい時には、母健連絡カードを医師に発行してもらい職場との交渉に使うのもおすすめです。

ホームケアでは、軽い運動や骨盤ベルトの使用などが痛みの緩和の助けになるでしょう。腰痛はできるだけ悪化させない、長引かせないようにして、快適なマタニティライフを送ってくださいね。

(文:大崎典子/監修:齊藤英和 先生)

※画像はイメージです

※この記事は、マイナビウーマン子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

  • 本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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