【医師監修】双子で男女になる確率は? その特徴と出産方法
「赤ちゃんが男女の双子だったらいいな」と思っているママやパパのために、男女の双子が生まれる確率を調べてみました。また、男女の双子の特徴や出産方法、育児についても紹介します。双子が生まれやすくなると噂の食べ物についても、どんなものがあるのか、それははたして本当か、解説します。
男女の双子が生まれる確率は?
日本では、どのくらいの確率で「男女の双子」が生まれているのでしょうか。
日本では双子の20%程度かそれ以上
日本では、双子の赤ちゃんは「全分娩のうち約1%」の確率で生まれてきます。2019年に生まれた双子の赤ちゃんは、全国でおよそ9千人でした[*1]。
そして、正確な確率はそのときどきで多少変わる可能性はありますが、日本では、双子のうち「20%程度かそれ以上」の割合で男女の双子がいると考えられます。これは「一卵性」と「二卵性」の割合から推測した確率です。
男女の双子は基本的に「二卵性」
双子は、1つの受精卵が分離して双子になる「一卵性双胎」と、2つの受精卵が子宮の中で一緒に成長する「二卵性双胎」の2種類に分けられます。
つまり、「一卵性」の場合はもともと同じ受精卵なので、通常は「同じ性別」になります。一方、「二卵性」の場合は「性別は異なることもあれば同性のことも」あります。
そのため、男女の双子のほとんどは「二卵性」です。
不妊治療の一般排卵誘発や体外受精などの生殖補助医療の治療が始まっていない1960年台以前の日本では、双子のうち一卵性双胎が占める割合は約60%、二卵性双胎が占める割合は約40%だったと言われています[*2]。これをもとに、一卵性はすべて同性の双子になると仮定して計算すると、双子の中での性別の組み合わせとその確率は、
・男の子×男の子 約40%
・女の子×女の子 約40%
・男の子×女の子 約20%
となります。
現在は二卵性がさらに増えている
ただし、上記の一卵性と二卵性の割合を示した研究より新しい報告には、日本の二卵性の出産率は不妊治療(一般排卵誘発や生殖補助医療)の普及により近年上昇しており、一卵性以上としているデータもあります[*3]。
正確な割合はわかりませんが、二卵性の割合が増えているのであれば、男女の双子が生まれる確率は、いまでは20%よりもっと高くなっている可能性もあります。
双子を妊娠する方法ってあるの?
双子の赤ちゃんがほしい、産み分け方法が知りたいというママやパパのために、双子の妊娠方法があるかどうか調べました。
医学的に根拠のある方法はない
自然妊娠で双子の赤ちゃんが生まれやすくなるという、医学的に根拠のある方法はありません。
不妊治療の胚移植で複数の受精卵を子宮に戻したり、排卵誘発剤を使用すると双子を妊娠する確率は上がります。実際、日本では排卵誘発剤が保険適用になった1970年代後半から全分娩件数に対する双子分娩の割合が上がりました[*4]。
でも、2008年に、日本産科婦人科学会が胚移植で移植する胚を「原則ひとつ」とする会告を出して以来、その割合は減少し、ここ10年ほどはほぼ横ばいになっています。そもそも不妊治療は赤ちゃんをなかなか授からないときに受けるものなので、双子を妊娠するために利用することはできません。
双子妊娠はリスクがある
双子の赤ちゃんはとてもかわいらしいですが、妊娠・出産の際、さまざまなリスクは高くなります。
双子を妊娠すると、1人を妊娠しているときよりも早産、妊娠糖尿病や妊娠高血圧症候群、子宮内胎児発育遅延、胎児形態異常、子宮内胎児死亡などのさまざまな合併症が起こりやすくなります。さらに、羊膜や胎盤の状態によっては次のような別のリスクが上がる可能性もあります。
1絨毛膜双胎は「双胎間輸血症候群」になりやすい
「1絨毛膜双胎」とは、2人で1つの胎盤を共有しており、血管がつながった状態のことで、一卵性の双子で起こることがあります。
この場合は、血液循環のバランスが崩れやすく、どちらかの胎児に血液が多く流れるなどのトラブルが起こりやすくなります。これを「双胎間輸血症候群」と言います。この状態であることがわかったら、胎盤の中の血管をレーザーで焼いて閉じ、血液のアンバランスを治す手術などが必要になります。
1絨毛膜1羊膜双胎は「臍帯相互巻絡」になりやすい
1絨毛膜双胎のうち、同じ羊膜の中に2人が包まれている「1絨毛膜1羊膜双胎」の場合は、へその緒が絡む「臍帯相互巻絡(さいたいそうごけんらく)」も起こりやすくなります。臍帯相互巻絡が起こると、突然、胎児機能不全が起こったり死亡に至る可能性が高まります。
このように双子妊娠中は1人の妊娠よりもさまざまなリスクがあるので、妊娠中は慎重に経過を観察する必要があります。中でも1絨毛膜の場合は、とくにしっかりと管理することになります。
男女の双子はどのくらい似ているの?
さて、双子というとそっくりなイメージがありますが、男女の双子の場合も似ているものなのでしょうか。
遺伝的には「半分」同じ
男女の双子は、ほぼ「兄弟姉妹」のようなものです。
すでにお伝えしたように、男女の双子のほとんどは2つの受精卵から生まれた二卵性です。別々の卵子と別々の受精卵の組み合わせからできたため、普通の兄弟姉妹と同じように、遺伝的な類似性は約50%です。
そのため、よく似た兄弟もいればあまり似ていない兄弟もいるように、男女の双子の場合は、似たところもあれば似ていないところもあるでしょう。
性格は似たところもあれば違うところも
性格も、似ているところもあれば違うところもあるといった感じになるでしょう。
性格の違いは、およそ50%が遺伝子から、残りの50%程度が環境から生まれると言われています[*5]。ただし、性格に関わる遺伝子はたくさんあると考えられますし、父親と母親から半分ずつランダムに伝わるため、片方の親だけと同じ遺伝的な素質になることはありません。
また、双子であれば親や家庭といった環境(共有環境)は同じはずですね。でも、環境には同じ家庭の子でも共有しない「非共有環境」というものもあり、これは簡単にいえば親以外との人間関係、お友達との付き合いなどを指します。
実は、遺伝的にはほぼ同じなはずの一卵性の双子でも性格に違いが出てくるのは、非共有環境の影響が大きいと言われています。男女の双子であれば、お友達付き合いにはなおさら違いが出ることが多いのではないでしょうか。
このように、いろいろな要素が複雑に絡み合って性格は形作られていきます。ですから双子であっても、性格上似ているところもあれば、違うところも見られるようになるのです。
男女の双子の子育ては大変?
双子のお世話は大変だといいますが、男女の双子はどうなのでしょうか? 双子の子育て風景を見てみましょう。
お世話が倍かそれ以上に!
双子のお世話は倍になると思いがちですが、倍以上大変という人も少なくありません。これは双子の性別に関わらず言えることです。
特に大変なのが「睡眠」と言われています。
2人同時に寝かしつけるのは大変ですし、1人が寝たのにもう1人が泣いて起こしてしまうこともあります。特に生後8ヶ月ごろより前は2人の睡眠・覚醒リズムがなかなかそろわないので、ママやパパも睡眠不足になりがちです。
男女の双子では「発育発達の差」が出やすい
また、一卵性や二卵性でも同性の場合に比べて、男女の双子では、はいはいやつかまり立ち、歩き始めなど、「発育発達の進み方」にかなり差があることも多いという報告があるそうです[*6]。発育発達の違う赤ちゃん2人を同時にお世話するのは、かなりの困難です。
発育発達が同じくらいでも、外では2人バラバラの方向に進んでいったり、離乳食でたくさんまわりが汚れてしまったり、1人をあやし終わったらもう1人が泣き出したりと、小さなころほどお世話の苦労は絶えないことでしょう。
多胎子育てサークルに参加しよう
そんな双子の育児ではとくに、家族で協力することはもちろん、ママやパパの健康を守るためにも、地域の子育てサービスなどを積極的に利用してほしいところです。
各地域では、双子や三つ子などのファミリーによる多胎の子育てサークルが活動しているので、参加すると実体験に基づいたためになるアドバイスをもらえるかもしれません。
なお、子育てサークルにはのんびりしたものから活動的なものまで、さまざまなものがあります。まずは見学してみて、自分に合ったところを選んで参加してくださいね。
男女の双子の出産は?
男女の双子の出産は、1人の出産に比べてどんなところが違うのでしょうか。
双子は帝王切開が多い
双子の分娩は、胎盤や羊膜の状態によりますが、帝王切開となることがよくあります。実際、ある調査では双子のおよそ70%が帝王切開での出産だったと報告しているものもあります[*7]。
病院によって前後しますが、たいていは37~38週ごろに計画的に帝王切開を行うことになります。医療機関によって幅がありますが、双子の場合はだいたい妊娠後期に入ると、医師と相談のうえ出産の方法と日時を決めることが多いようです。
なお、赤ちゃんやママに不測の事態が起こって必要となった場合は、決められた日より早く緊急帝王切開が行われることもあります。
条件を満たせば経腟分娩が可能なことも
ただし、双子の場合は必ず帝王切開になるということではありません。条件を満たせば、経腟分娩が可能なこともあります。経腟分娩OKとなる条件は、医療機関によって多少異なることもありますが、だいたい以下のようなポイントが揃っている必要があります。
(1)2人とも「頭位」になっている
双子の2人ともが分娩のときに「頭位(赤ちゃんの頭が下、おしりが上になっていること)」となっている確率は、全体の42%くらいです[*8]。
病院によっては、「妊娠34週以降」「後に生まれてくる子の推定体重が2000g以上」などの条件が揃っていれば、先に生まれてくる子のみが頭位の場合でも経腟分娩できることもありますが、両方とも頭位を経腟分娩の条件にしている医療機関のほうが多いようです。
(2)分娩時期が32~34週以降
医療機関によって条件となる週数は異なります。
(3)双子がともに推定体重1500~2000g以上
医療機関によって条件となる体重は異なります。
(1)~(3)の他にも、「帝王切開や子宮手術をしたことがない」などの条件がつくこともあります。
なお、条件が揃って経腟分娩予定の場合も、ママや赤ちゃんに異常が起これば緊急帝王切開を行うことになります。
いずれにしても、分娩方法にこだわるより、ママと赤ちゃんたちの両方が元気な状態でお産を終えることが大切です。でも、経腟分娩が気になる、どんなふうに帝王切開をすることになるのかなど疑問があるなら、積極的に産院に聞いてみてくださいね。
双子を妊娠しやすくなる!? ジンクスがある食べ物
ここからは、双子を妊娠しやすくなると噂の食べ物について紹介します。また、それは本当なのかについても解説します。
乳製品
アメリカの研究には、動物性の食品、特に「乳製品」を取っている女性は、菜食主義の女性と比べて双子がいる確率が約5倍高いと報告しているものがあります[*9]。
「牛乳に含まれているインスリン様成長因子(IGF)が排卵を増やす」可能性があり、それの影響ではないかと考えられていますが、くわしいことはよくわかっていません。
ヤムイモ(やまいも)
世界には、双子がとくに多く生まれている人種や地域があります。
中でもナイジェリア南西部のヨルバ族では、双子の出生率が「2.8~5.0%」と高めです。また、ヨルバ族のなかでもヤムイモを主食にしている村落部の人の方が、さまざまなものを食べる都市部の人よりも多く双子が生まれていたという研究があるそうです[*10]。
ヤムイモには植物エストロゲンがたくさん含まれており、それが双子の出生率に影響していると考える人もいますが、はっきりしたことはよくわかっていません。
ただし、先祖がナイジェリアのこの地域の人々では、食生活が変化したのに、依然として双胎の出生率が高いため、双胎率の高い原因は遺伝の可能性もあります。
穀物などの複合炭水化物
でんぷんや食物繊維といった「複合炭水化物」が双子の妊娠につながるという説もあります。
「複合炭水化物」は、玄米やそば粉、大麦、雑穀、トウモロコシなどに含まれています。すぐにエネルギーになる「単純炭水化物(ブドウ糖、果糖、ショ糖など)」に比べて、消化されてエネルギーになるまで時間がかかります。
単純炭水化物ばかり食べていると血糖値が急上昇・急降下して乱れがちになるので、排卵を妨げる可能性があるとは言われています。そこから拡大解釈した人がいたようですが、複合炭水化物を摂れば双子妊娠の確率は上がるのかどうかはよくわかりません。
葉酸
1996~1998年に米・テキサス州で葉酸の摂取を強く勧めたところ、1年あたり2.4~4.6%も双子が生まれる率が高まったという報告があり、葉酸の摂取が双子の妊娠率を高めるのではないかと言われたこともあります[*11]。
ただし、これに対してはアメリカ疾病予防管理センター(CDC)が2003年に「葉酸の摂取と双子ができることとは関連性がない」とはっきり否定しています[*12]。
とはいえ、葉酸は妊娠前から妊娠中に十分に摂取しておくことで赤ちゃんの神経管閉鎖障害発症のリスクを下げることはわかっています。妊娠を考えているママは、ぜひ葉酸のサプリメントを摂っておいてくださいね。
どれもはっきりした根拠はない
ここまでで紹介した食品は、双子が生まれるのを増やすという「噂」のあるものです。でも、どれも本当にその食品を摂取することで双子の出生率が上がるのか、どのくらい摂ればそうなるのかなど、はっきりしたことはわかっていません。
双子を妊娠したいからと、ここで紹介したような食品ばかり食べていると栄養が偏って、かえって逆効果になる可能性も。妊活中は健康な体づくりのために、さまざまな食品をバランスよく摂る食生活を心がけていきましょう。
まとめ
現在の日本では、不妊治療の一般排卵誘発や生殖補助医療の普及で、双子のうち約20%以上が男女の組み合わせと考えられます。男女の双子はほぼ二卵性なので、性格や見た目はそっくりというよりも、兄弟姉妹に近く、似ているところもあれば違ったところもあると考えられます。
男女の双子に限りませんが、双子は妊娠中から分娩まで、慎重に経過を観察していく必要があります。また、産後も1人の赤ちゃんを育てる以上に大変なことは多いでしょう。
双子を妊娠しやすくなるという食べ物の噂はありますが、残念ながらどれもはっきりした根拠はありません。「双子の赤ちゃんが欲しい!それも男女の組み合わせで!」と願うのはもちろん自由ですが、本当にそうなるかどうかは運次第。妊娠希望の人は、食事を含めできるだけ生活習慣を整えて、赤ちゃんが来てくれる日を待ちましょう。
(文:大崎典子/監修:齊藤英和 先生)
※画像はイメージです
[*1]e-Stat人口動態調査 人口動態統計 確定数 出生 単産-複産(複産の種類)別にみた都道府県別分娩件数2019年
[*2]村越毅:多胎妊娠―妊娠・分娩・新生児管理のすべてー, メジカルビュー社, 2015.
[*3]病気が見えるvol.10産科 多胎妊娠 発生頻度, 150p , メディックメディア, 2018.
[*4]吉村やすのり 生命の環境研究所 わが国における多胎出産―Ⅰ
[*5]「性格は遺伝で決まるって本当ですか?」日本心理学会
[*6]日本多胎支援協会 乳幼児期の情報(最初の1年)
[*7]岐阜県立看護大学育成期領域・ぎふ多胎ネット:ふたごナビ
[*8]国立成育医療研究センター 多胎妊娠外来
[*9]AAAS NEWS RELEASE 20-MAY-2006: Study finds that a woman's chances of having twins can be modified by diet
[*10]Nylander PP. : The twinning incidence of Nigeria, Acta Genet Med Gemellol (Roma) . 1979;28(4):261-3.
[*11]”Rates of twinning before and after fortification of foods in the US with folic acid,Texas, 1996 to 1998” Waller, DK, Tita, AT, Annegers, JF. Paediatr Perinat Epidemiol 2003;17:378–83.
[*12]“Study Finds No Link Between Taking Folic Acid and Having Twins” January 27, 2003 CDC, Press Office
※この記事は、マイナビウーマン子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました
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