【助産師解説】産後すぐ授乳で乳首が痛い!痛みの原因と8つの対策
授乳により乳首が痛くなる原因と、解消するための対策を助産師さんが解説! 初めての授乳では、気づいたら乳首が痛くて…ということも。母乳育児をあきらめなくてもいいように、正しい授乳方法と痛みの対処法をチェックしましょう。
<体験談>授乳で乳首は痛くなった? どんな痛み?
授乳での乳首の痛み、母乳育児をやめる原因にも
授乳中の姿勢や赤ちゃんの乳首のくわえ方によっては、吸わせるたびに乳頭が痛くなったり、場合によっては傷ついてしまうこともあります。特に、出産直後は授乳に慣れていない上、頻回授乳が必要なので乳首が痛くなりやすく、痛みの程度によっては授乳が困難になってしまうことも。実際に、乳頭の痛みは母乳育児をやめる2番目に多い原因とされており[※]、乳首の痛みで母乳育児を断念せざるを得なかったという先輩ママは少なくありません。
授乳で乳首が痛くなる主な原因
生まれたての赤ちゃんの口はまだ小さく、おっぱいを上手に吸えないこともあります。乳首も吸われる刺激にまだ慣れていないので、出産直後の授乳による乳頭の痛みは珍しいことではありません。慣れていくとともに痛みも治まっていきますが、この他の理由で痛くなっている場合は、痛みが長引くこともあります。授乳による乳頭の痛みの主な4つの原因を見ていきましょう。
授乳姿勢(ポジショニング)がNG
乳首を痛めやすい大きな原因のひとつに、授乳姿勢(ポジショニング)があります。ポジショニングが悪いと赤ちゃんが乳首をうまくくわえられないので、結果的に乳首を痛めやすくなります。
くわえさせ方(ラッチオン)がNG
ポジショニングが悪かったり、赤ちゃんがまだ乳首を上手にくわえられないなどの理由で正しくないラッチオンで吸わせてしまうと、乳首を痛めてしまいます。
おっぱいを吸うときに唇も巻き込んでいる、赤ちゃんの頬にくぼみがある、吸うときに舌打ちするような音がする、授乳終了後の乳頭が平らになっていたり、すじができている、授乳中や授乳後に痛みを感じるという場合は、ラッチオンがうまくできていない証拠です。まめにチェックして正しくくわえさせるよう努めましょう。
時々、赤ちゃんの舌小帯短縮(ぜつしょうたいたんしゅく)によって、乳首の痛みが起こることがあります。その場合でも、姿勢や含ませ方を工夫することによって改善されることがあります。
離し方(授乳後のおっぱいの離し方)
授乳終了のタイミングやおっぱいの離し方を間違えても、乳頭を痛めやすくなります。というのも、まだ吸っているのに無理に離そうとしてしまうと、乳首を傷つけてしまうことがあるためです。授乳を終えるタイミングは、できるだけ赤ちゃんが満足して自ら離すのを待つようにしましょう。
どうしても途中でやめたいときは、清潔にした指を赤ちゃんの口の端から入れておっぱいと赤ちゃんを離しましょう。くれぐれも、吸い付いたままの状態で引き抜くことのないよう注意してください。赤ちゃんが口を開けるよう鼻をつまむという方法を耳にすることもありますが、これはNG。必ず指を入れて、赤ちゃんの負担にならないようやさしく口を開いてください。
その他
上記の他、感染などによっても乳頭が痛くなることがあります。主な感染症や症状には、以下のようなものがあります。
・乳頭にできた傷口への細菌感染
・カンジダ感染症
・レイノー現象(授乳直後に乳首が虚血のため真っ白になり、強い痛みを感じる)
など
乳首の痛みとともに灼熱感や紅斑などが見られるときは、感染症などの疾患が疑われます。乳首の痛みが2週間以上続くときも感染の可能性があるので、産婦人科を受診してください。
産後すぐの授乳の痛み、いつまで続く?
痛みの持続期間は、ポジショニングや赤ちゃんのくわえ方など、その理由によって変わってくるので一概にどれぐらいとは言い難いです。ただ、授乳に不慣れなことによる乳首の痛みであれば、一般的に出産後3~6日にピークを迎え、その後徐々に解消していくことが多いです。場合によっては痛みが長期間続くこともあるので、何が原因かを見極め、それに合った対策をすることが大切です。
授乳で乳首が痛いときの対処法
それでは、痛みを引き起こす原因別の正しい対処法について見ていきましょう。
飲ませ方の対策
授乳姿勢やくわえ方が正しくないと、乳首の痛みがなかなか治りにくいです。上手に授乳できているかわからないという方は、正しい飲ませ方をおさらいしましょう。
<対策1:乳輪をやわらかく>
まず、赤ちゃんにおっぱいをふくませる前に乳輪部分に圧をかけてやわらかくしておきましょう。伸展しやすくすることで赤ちゃんが吸いやすくなり、乳首への刺激も少なくなります。特に、おっぱいが張ってしまっているときは、マッサージで乳輪をやわらかくしておくと、赤ちゃんが深く含みやすくなります。
<対策2:正しい姿勢>
乳輪がやわらかくなったら、体を起こした状態か背もたれにもたれかかった状態で赤ちゃんにおっぱいを含ませましょう。腰をクッションで支えたり、足台を使ったりして、リラックスできる姿勢で座りましょう。慣れていないときは往々にして前かがみになってしまうものですが、これだと赤ちゃんが乳首を深くくわえにくく、ママも無理な姿勢で疲れてしまいます。ママが赤ちゃんに向かっていくのではなく、赤ちゃんをママに近づける姿勢。これが、赤ちゃんが自分で乳首をくわえようとする力が発揮されやすい、正しい授乳姿勢(ポジショニング)です。
<対策3:正しい吸い付かせ方>
正しい姿勢をとったら、赤ちゃんに乳首をしっかりくわえさせましょう。
正しくラッチオンさせる(吸い付かせる)には、乳輪がほとんど隠れるくらい赤ちゃんの口を大きく開け、奥までしっかりくわえさせることが大切です。乳首ではなく、乳房をくわえさせるという意識を持つといいでしょう。このとき、赤ちゃんの下あごが乳房に触れているか、下唇が外側に少しめくれているかもしっかりチェックしてください。この3つが全てそろうことが、正しいラッチオンの基本です。正しいラッチオンができていれば、授乳中に痛みを感じません。
<対策4:片方だけが痛い場合>
ただ、気を付けていてもどうしても乳首が痛んでしまうこともあります。どちらかの乳首が痛んだときは、もう片方の乳房から先に授乳するようにしてください。痛みが早く治まりやすいです。
乳首の傷への対策
乳首に傷や亀裂ができてしまったときは以下の4つの方法で手当てし、傷の悪化を防ぎましょう。
<対策1:乳頭に母乳を塗る>
母乳には殺菌や保護作用があるため、授乳後に母乳を塗ることで傷の悪化予防や早い改善が期待できます。
<対策2:ラノリン油などの保湿剤を塗る>
母乳の代わりに保湿剤を塗布してもいいでしょう。乾燥を防ぐことで傷の悪化を予防できます。保湿剤を塗った患部に小さく切ったラップを当てておくと、下着や服に直接触れることがなくなるので、より効果的です。ただし、ラップを使用する際は長期間続けないようにしてください。感染の原因になる可能性があります。
保湿剤は、赤ちゃんの口に入っても安全なものを選びましょう。低刺激で安心な保湿剤には、ラノリン油(「ランシノー」「ピュアレーン」などの名前で市販)、馬油などがあります。
<対策3:ブレストシェルを使う>
ブレストシェルとは、乳頭が衣類とこすれないよう保護する、ドーム状になったシリコン製の保護材です。授乳時以外はずっと着用できるので、傷口を乾燥と摩擦から防いでより早い改善につなげることができます。
<対策4:創傷被覆材を使う>
創傷被覆材(そうしょうひふくざい)とはドレッシング材とも呼ばれるもので、傷口を覆って湿潤環境を作る(乾燥から守る)ことで、傷のより早い治癒を促す保護材です。傷を治すための最適な環境を作るため、痛みの軽減にも役立つとされています。
ただし、傷口に細菌が感染している場合は創傷被覆材を使うと菌の繁殖を助長させてしまう可能性があります。使用は傷の状態をよく見てから検討しましょう。気になるときは、かかりつけの医師に相談してください。
まとめ
母乳育児をスタートしたての頃は、乳首に痛みを感じる方が多いです。乳頭痛の予防・緩和にはポジショニングとラッチオンの見直しがもっとも効果的なので、上手に授乳できているか心配という方は、正しい姿勢と飲ませ方をおさらいしましょう。また、痛みの程度や持続期間によっては薬での治療が必要なこともあります。痛みがひどい、長引くという場合は、かかりつけの産婦人科医や助産師に相談しましょう。
(文・構成:マイナビ子育て編集部、監修・解説:坂田陽子先生)
※画像はイメージです
[※]Duffy, EP. et al. Positive effects of an antenatal group teaching session on postnatal nipple pain, nipple trauma and breast feeding rates. Midwifery. 13(4), 1997, 189-96.
※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、助産師の監修を経た上で掲載しました
※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます