
アゲハチョウって幼虫から育てられる?専門家が教えるアゲハチョウの育て方
昆虫の観察は子どもの自由研究にぴったり。特にアゲハチョウは、幼虫から育てれば蛹から成虫になるまでの変化も観察できます。「アゲハチョウの幼虫を育てるのは難しそう」と思うかもしれませんが、きちんと環境を整えれば、自宅での飼育も可能。ここでは、専門家監修のもと、アゲハチョウの幼虫の育て方をご紹介します。
- アゲハチョウの幼虫は自宅で飼育できる?
- アゲハチョウの生態
- アゲハチョウの種類
- アゲハチョウの幼虫が羽化して成長するまで
- アゲハチョウの幼虫の見つけ方
- 見つけやすい時期
- アゲハチョウの幼虫が多い場所
- アゲハチョウの卵を探すには
- アゲハチョウの幼虫の飼育で必要なもの
- 準備するもの
- 飼育するための室内環境
- アゲハチョウの幼虫のエサ
- アゲハチョウの幼虫の変化と育て方・お世話の仕方
- 卵~幼虫の時期までの育て方
- 幼虫~蛹の時期までの育て方
- 蛹~成虫になる時期までの育て方
- アゲハチョウの幼虫の飼育における注意点と対策
- エサの農薬
- 寄生虫
- 水滴
- アゲハチョウの幼虫の飼育を楽しむポイント
- 飼育記録をつけよう
- 飼育の過程を写真におさめよう
- まとめ
アゲハチョウの幼虫は自宅で飼育できる?

春になると見かけることの多いアゲハチョウ。
大きな羽でひらひらと舞うアゲハチョウを見つけると、子どもも大喜びしますよね。
せっかくなら、幼虫から育てて子どもとアゲハチョウの飼育を楽しんでみませんか。
アゲハチョウの幼虫の飼育は、そう難しくありません。必要な環境やエサを用意すれば、自宅でも飼うことができます。
アゲハチョウを幼虫から飼育することで、チョウがどのような変化を経て成虫になるのか、その生態のしくみを学べるほか、観察する習慣、わからないことがあれば調べる習慣も身につきますよ。もちろん、夏休みの自由研究にもおすすめです。

子供のころに生き物に触れるのは、情操教育にとても良いと言われます。命の尊さと、それを扱う責任、そういった経験は、大人になってから他者を思いやる心の原点に繋がります。
アゲハ蝶は卵→幼虫→蛹→成虫と、とても速いペースで多くの変化があり、多感なお子様に、生き物の神秘を様々な形で見せてくれます。
鋭い爪や牙もなく、小さいお子様にケガの心配も少なく、初めての昆虫観察に向いている生き物と言えると思います。
アゲハチョウの生態

具体的な飼育方法の前に、まずはアゲハチョウの生態についてご紹介します。
アゲハチョウの種類や成長過程を知ることで、飼育への興味もより高まりますよ。
アゲハチョウの種類
チョウの中でアゲハチョウはひとくくりにされることが多いですが、アゲハチョウにもさまざまな種類があります。
その中でも特に知られており、見つけやすいのが「ナミアゲハ」と「キアゲハ」。2種を飼い、比較しながら観察するのもおすすめです。
ここでは、この2種の特徴、見極め方をご紹介します。
ナミアゲハ


一般的に「アゲハ」といわれているのがナミアゲハです。
ナミアゲハの成虫は縞模様がはっきりとしているのが特徴。特に前部の羽の付け根部分に注目しましょう。前部の羽の付け根がはっきり縞模様になっているのがナミアゲハです。
幼虫は全体的に緑色。大きくなると目玉のような模様が出てきます。
キアゲハ


ナミアゲハと混同されやすいのがキアゲハ。
キアゲハを見極めるときも、ナミアゲハと同じく前部の羽の付け根部分に注目しましょう。ナミアゲハは縞模様だったのに対し、キアゲハは薄い黒色に塗りつぶされたようになっています。
幼虫は体全体に縞模様があるのが大きな特徴。成虫に比べると、幼虫はナミアゲハとの差がわかりやすいでしょう。
アゲハチョウの幼虫が羽化して成長するまで

アゲハチョウは、実に短い期間で卵から孵化、幼虫、成虫へと変化を遂げていきます。ただその期間は卵から生まれた季節によっても異なり、秋に蛹になったアゲハチョウは蛹のまま冬を越して春頃成虫になります。
以下は、夏に飼育した場合の成長サイクルになります。
産卵(4~5日)
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孵化
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幼虫(15~18日)
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蛹(10~12日)
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成虫(2週間)
幼虫から飼育する場合、どれくらいの期間で幼虫から蛹になり、その後どれくらいで成虫になるかを把握することで、それぞれの変化を見逃さず観察できます。
7月中に幼虫を見つけて飼育すれば、夏休み期間中に羽化の様子を見ることも可能。自由研究で取り入れる際の参考にしてください。
アゲハチョウの幼虫の見つけ方

成虫のアゲハチョウはよく見かけても、幼虫は見つけたことがない人もいるのでは。続いては、アゲハチョウの幼虫の見つけ方について解説します。
見つけやすい時期
アゲハチョウは1年に3~4回産卵時期があり、ナミアゲハの場合は春、夏、秋に産卵するタイプがいます。
産卵後4~5日で孵化して幼虫になるので、春~秋が見つけやすいと言えるでしょう。
アゲハチョウの幼虫が多い場所
ナミアゲハの幼虫は柑橘系の植物をエサとしています。
そのため、幼虫を探すときはミカンやユズなど柑橘系植物の枝を注意深く見てみましょう。葉がかじられている形跡があれば、近くに幼虫がいる可能性があります。
孵化したばかりの幼虫は緑色でなく茶色で大きさは2mmほど。とても小さく地味なので見逃しやすいかもしれません。
幼虫を見つけたら、幼虫がついている葉や枝ごと採集して持ち帰りましょう。幼虫だけとろうと指でつまむのはNG。幼虫はデリケートなため、弱ってしまう原因になります。

ナミアゲハの最初の幼虫が茶色いのは、鳥の糞に擬態し、捕食者である鳥から狙われるのを防いでいます。
アゲハチョウの卵を探すには
アゲハチョウを卵から採取・観察したいという場合も、柑橘系の木で探すのがおすすめ。新しい葉の裏側に産みつけられていることが多いので、裏側を探してみましょう。
産卵後すぐの卵はわずか1mmほど。よく注意して見てみてください。

アゲハ蝶の集まりやすい、柑橘系の木があるところは、私有地が多いのでトラブルにならないように注意が必要です。
庭に柑橘系の木を植えることで、毎年シーズンにアゲハ蝶が庭に来てくれるかもしれません。
卵での持ち帰りは、アゲハ蝶ではない有害な生き物が自宅で孵化するリスクもあります。初めての飼育であれば、卵ではなく幼虫から飼育することをおススメします。
アゲハチョウの幼虫の飼育で必要なもの

アゲハチョウを幼虫から成虫まで育てるには、しっかりと準備を整えることが大切です。
準備するもの
アゲハチョウの幼虫をつかまえたら、次のものを用意しましょう。どれも家庭で簡単に用意できます。
飼育用のかご
飼育用のかごは、虫かごやプラスチックケースを使用します。
虫かごは、水槽型で蓋に網目がついているものがおすすめ。全体が網目になっているタイプは、幼虫の糞が網目から落ちてしまうので避けたほうがよいでしょう。
虫かごが無い場合は大きなタッパーでも代用可能です。

密閉してしまわないように、蓋に空気が通るように、数カ所穴を開けておくとよいでしょう。
割りばしなど木の棒
羽化する際に成虫がつかまれるよう、木の棒を用意します。つかまるものがないと、チョウが下に落ちて羽が広がりきれず、飛べなくなってしまう可能性があります。
ティッシュペーパーやキッチンペーパー
幼虫を入れるケース内の底に、ティッシュペーパーやキッチンペパーを敷きましょう。ペーパーが余分な湿気を吸い取り、湿度が適度に保たれます。
飼育するための室内環境
幼虫は室内で飼育するのがおすすめ。室外だとヤドリバエなどの寄生虫に寄生されてしまう可能性があります。
室内は高温多湿に注意。エアコンを使用するのは問題ないので、エアコンで温度・湿度調整してもよいでしょう。

室内に置く場合に、窓際などの日の当たる場所にはおかないように気を付けましょう。虫かごの中がとても暑くなってしまい、アゲハ蝶にとってとても危険です。
アゲハチョウの幼虫のエサ
幼虫のエサは、アゲハチョウの種類によって異なります。
ナミアゲハの幼虫はミカンやユズなど柑橘系の植物が主な食糧。キアゲハの幼虫はニンジンやセリなどセリ科の植物を食します。
エサは常に切らさないように注意しましょう。
アゲハチョウの幼虫の変化と育て方・お世話の仕方

準備ができたら、いよいよ幼虫の飼育開始。変化も観察しながら飼育しましょう。成長過程に合わせて、お世話の仕方も変化していきます。
卵~幼虫の時期までの育て方

アゲハチョウの幼虫は通気性のよい虫かごや容器で育てます。
卵から孵化したばかりのアゲハチョウの幼虫は、小さくて丸くてまるで鳥の糞のような姿。4mmほどの小さな幼虫が、エサを食べてどんどん大きくなっていきます。
ここで食べさせるエサは、もともと幼虫がいた(卵が産みつけられていた)柑橘系の木の葉と同じもの、もしくは同じ種類の木の葉がおすすめ。食べていたエサが途中で変わると、幼虫が慣れるまで食べてくれないことがあります。
また、幼虫を飼育するうえでは、エサを切らさないことがとても大切。エサの葉がなくなりそうになったりしおれてしまっていたりしたら、すぐに新鮮な葉に変えてあげましょう。
エサをもりもり食べて育った幼虫は、大きく成長するために4回脱皮し、体の色も緑色に変化していきます。

餌の葉は、枝ごとかごに入れておき、枝の切り口を、水につけておくと長持ちします。小さなタッパーなどに水を入れ、そこに枝をさすとよいです。しかし大きすぎる水容器は、幼虫がおちて溺れる危険がありますので注意が必要です。
幼虫~蛹の時期までの育て方

孵化してから15~18日ほどたち大きく成長したアゲハチョウの幼虫は、蛹になる場所を探し始めます。
蛹になる前は、体から余分なものを抜くため、糞が水っぽくなるのが特徴。また、体内の余分なものを排出したことで、体が透けて見えるようにもなります。
体が透けるようになり、蛹になる場所を求めて容器の中を動き回るようになったら、蛹になる時期が近づいている証拠。頻繁に動き回るこの時期は、容器のふたが開いていると脱走してしまうこともあるので注意してください。
蛹になるための場所を見つけると、そこに糸を張って体を固定させ、動かなくなります。
蛹になる場所は容器の壁やふたの裏、エサとして置いておいた植物の枝など。ただ、そのままだと羽化した際に脚で捕まることができず、落下してしまうことがあります。
そうなると羽がうまく開けず羽化に失敗してしまうことがあるので、落下しないよう、蛹が入るくらいのポケットを紙でつくり、そこにそっと移動させてあげると安心です。

蛹は、頑丈そうに見えますが、幼虫の姿から成虫の姿に変わるためにとても複雑な細胞変化を繰り返している段階であり、中身は非常にデリケートです。
ゆすったり掴んだりすると、羽化が出来なくなってしまいます。この時期は特に慎重に扱うよう心掛けてください。
蛹~成虫になる時期までの育て方

蛹になったアゲハチョウは、暖かい時期であれば10日~2週間ほどで羽化します。
羽化が近づいた蛹は中の成虫が透けて見えるようになります。また、羽化する時間は早朝~昼がほとんどです。羽化を見逃さないためにも、蛹が透けてきたらこまめに観察しましょう。
蛹の殻をやぶって出てきたアゲハチョウの羽は小さく縮まっていますが、10分ほどで大きく広がります。
羽化している最中のアゲハチョウはとても柔らかく、少しの刺激で死んでしまうことも。触ったり振動を与えたりしないように注意してください。
羽が広がり、アゲハチョウがしっかり飛べるようになるまではおよそ半日ほどかかります。じっくり観察しながら見守りましょう。

お子さん主体でお世話をするときも、保護者の方が毎日監督してあげてください。変化の早い生き物ですが、普段のお世話に喜んでいる姿などを見せてくれる生き物では無く、小さなお子さんは、リアクションの無さに退屈してしまい、世話を続けたがらないことも多いです。
アゲハチョウの幼虫の飼育における注意点と対策

アゲハチョウの幼虫はとてもデリケート。成虫まで育てるには、注意点もしっかり把握しておきましょう。
病気
アゲハチョウの幼虫も、人間と同じく病気にかかることがあります。様子がおかしい、体の色がくすんでいる、というときは病気の可能性があります。
複数の幼虫を飼育している場合、ほかの幼虫に影響をきたさないよう、病気が疑われる幼虫は別の容器に隔離してください。
エサの農薬
エサとして与える葉っぱを外から採取してきた際、その葉に農薬がついていて幼虫が死んでしまうケースがあります。
自宅で栽培している無農薬のエサだったとしても、外から飛散してきた農薬がついている可能性が。幼虫に与えるエサは、丁寧に洗ってからあげるようにしましょう。
寄生虫
野生のアゲハチョウの多くは、羽化に失敗し死んでしまいます。その大きな原因となるのが、ヤドリバエやヤドリバチといった寄生虫。
これらの寄生虫は、大きくなったアゲハチョウの幼虫の体内に寄生し、アゲハチョウが蛹になったときを見計らって殻を突き破り出てくるという恐ろしい習性をもちます。
寄生虫の被害から守るためにも、幼虫は室内飼育がおすすめ。
飼育用の幼虫を外から採取してくる際も、寄生されている可能性が低い、小さい幼虫を採ってくるのがよいでしょう。
水滴
幼虫を飼育する容器が密閉されていると、中に水滴が発生し、小さい幼虫は溺れてしまう可能性があります。
幼虫の飼育には、通気性のよい容器を選んでください。

人が気にならないようなことが、小さな生き物には命に係わることが少なくありません。
摘まみ上げるようなことでも、命を落としてしまう可能性もあります。
アゲハチョウの幼虫の飼育を楽しむポイント

ただ飼うだけでなく、蛹から成虫になるまでの様子を観察できる幼虫の飼育は、子どもにとっても貴重な体験になるはず。親子でより楽しむためのポイントをご紹介します。
飼育記録をつけよう
見て観察するだけでも十分ためになりますが、飼育記録をつけると成虫になるまでの過程がより詳しく把握でき、学びにも役立ちます。観察した時間やその日の天気・温度、幼虫の様子・変化などをノートに記しましょう。
ものごとを記録する習慣づけにもなりますよ。
飼育の過程を写真におさめよう
飼育の様子をノートに記録するとともに、成長過程を写真におさめておくのがおすすめ。視覚的な変化がよりわかりやすくなります。
羽化の様子などは、動画で撮っておくのもよい記録になるでしょう。

幼虫の間だけでも、変化のある生き物で、ただその変化を楽しむだけでも面白いです。
アゲハ蝶の幼虫だけが持つ特徴として、危険を感じると角を出して臭いにおいで攻撃します。
幼虫を怒らせる必要があり、なかなか体験する機会はないかもしれませんが、幼虫のときにしか見られない、嗅げないことなので、ぜひ経験してほしいです。
小さな生き物が、自然を生き抜くために手に入れた武器です。それも、生き物の神秘です。
まとめ
アゲハチョウは幼虫さえ見つけることができれば、自宅で飼育や羽化させることが可能です。
うまく羽化させられたときの喜びは、大きな成功体験となって子どもの好奇心・チャレンジ精神の育成に役立つでしょう。
親子で観察したり調べたりすれば、よいコミュニケーションにもなります。ぜひ子どもと一緒に楽しんで飼育・観察してみてくださいね。