電車の音に耳をふさぐ。服のチクチクで泣き出す——感覚過敏の子の脳では何が起こっているのか
電車の音に耳をふさぐ、服のタグが“痛い”ほど気になる——こうした感覚過敏は珍しいことではありません。国立障害者リハビリテーションセンターが行った調査で、発達障害のある人の感覚の問題のうち“最もつらい”と回答が多かったのは聴覚、さらに自閉スペクトラム症(ASD)では触覚の問題を訴える割合も高いことが示されています(※)。
強い刺激だけでなく、複数の音や光が同時に入るだけで疲れやすくなるケースも多く、日常生活に大きな影響を及ぼします。本記事では、子どもの脳で何が起きているのか、そして大人にできる関わり方を、児童精神科医・さわ先生がわかりやすく解説します。
※国立障害者リハビリテーションセンター「発達障害のある人の感覚の問題の実態が明らかに〜発達障害のある人で感覚の問題が顕著に生じるのは『聴覚』であるが、自閉スペクトラム症のある人では『触覚』の問題も無視できない〜」
\子どもの“困った”行動に悩むすべてのママ・パパに/
YouTube登録者数10万人超、SNSでも注目を集める児童精神科医・さわ先生が、発達ユニークな子どもたちが感じている「困りごと」と、周囲の大人にできる関わり方をやさしく教えてくれる一冊です。
今回は、音や匂い、まぶしさなどに敏感な子が思っていることについて、書籍『児童精神科医が子どもに関わるすべての人に伝えたい「発達ユニークな子」が思っていること』(日本実業出版社)から一部抜粋してお届けします。
音がうるさくて耐えられない!
子どもの困りごと
音や匂い、まぶしさなどの感覚過敏がある
その子にとっては苦痛な感覚がある
ASDの特性を持つ子のなかには、感覚の問題を抱えているケースが多く見られます。
物音や光のまぶしさ、洋服の肌触り、味や食感などに対して非常に敏感だったり、その反対に非常に鈍感であったりと、ほかの人とはちがう感じ方をしていて、場合によっては日常生活に支障をきたすほどの苦痛やストレスを感じていることがあるのです。
わが家の長女も、0歳のころから車に乗っていると西日がまぶしくて泣き叫んだり、魚を焼く匂いがした瞬間にわぁっと泣き出して、ベランダに飛び出していったりしたときには私もとても驚きました。
以前、診察室に来た子のなかには、食事をする際、家族の咀嚼音(食べる音)が気になって、耳栓をしないと食事ができないという子もいました。
これらは、本人が我慢強さが足りないとか我慢ができないという問題ではなく、そもそも脳のなかの情報を処理する仕組みがちがうために起こることだと言われています。
ほかの人と同じ情報を受け取っていても、脳が異なるとらえ方をすることがあり、その結果、まわりとちがう受け取り方や反応になってしまうのです。
生活に支障をきたすほどに感覚が非常に敏感なことを「感覚過敏」と言います。特定の音に反応する「聴覚過敏」、特定の肌触りに反応する「触覚過敏」、まぶしさなどに反応する「視覚過敏」などがあります。
感覚過敏の例
感覚過敏の例は、それぞれありますが、ある程度、共通しているものもあります。
・教室でほかの生徒がおしゃべりしていると、耳のなかで大きな音が鳴り響いているように感じて、耐えられなくなる
・電車の音がこわくて、電車に乗れない
・学校のチャイムやベルの音を聞くと頭が痛くなる
・エアコンの音や、ほかの生徒が立てる音が気になって、授業に集中できない
・太陽の光がまぶしくて、苦痛を感じる
・白い紙やノートを見ると、目がチカチカして文字がうまく読めない
・洋服のタグや縫い目がチクチクして、不快感や苦痛を感じる
・お湯が肌に触れる感覚が気持ち悪く感じるので、シャワーやお風呂が苦手
・匂いに敏感で、特定の匂いを嗅ぐと気持ちが悪くなる
・人に軽く触られるだけで、不快感や痛みに襲われることがある
・人と接触するのが苦手で、満員電車に乗れない。親子でもハグができない
このように、ちょっとした刺激にも敏感に反応してしまう子もいます。
トイレにあるハンドドライヤーの風や音をこわがる子も多いです。わが家もそうでした。
見方によっては、ほかの人より解像度高く刺激を感じ取ってしまうとも言えるでしょう。
こうした感覚は1人ひとり異なっていますし、規則的でもありません。
たとえば、運動会の短距離走のスタートを知らせるピストルの音はこわいと感じるのに、電車には乗れるという子もいます。大きな音がすべて苦手というわけではないのです。
ですから、周囲も「この子は大きな音が苦手」と固定観念を持たないことも大事です。
発達ユニークな不登校の子で、ふだんは聴覚過敏があるにもかかわらず、大好きなアイドルのライブには行けるという例もありました。
このようなケースだと、親御さんとしては「単にわがままなのではないか」とか「好きなことなら我慢できるのか」と感じてしまうこともあるかもしれません。
ただし、無理に克服させようとすると、本人にさらなる苦痛やストレスを与えることにもつながります。
やはり、その子にしかわからない感覚があって、なかなか他人が理解できることではないのですよね。「その子にとっては、そうなんだ」と、理解することが大切です。
児童精神科医のつぶやき
感覚過敏は特性によるもの。無理に克服しようとすると、さらなる苦痛やストレスに
続きはぜひ書籍でご覧ください。
※本記事は、『児童精神科医が子どもに関わるすべての人に伝えたい「発達ユニークな子」が思っていること』<著:精神科医さわ/日本実業出版社>より抜粋・再編集して作成しました。
