【医師監修】放置してもいい? 赤ちゃんが泣き止まない時の3つの対処法
お腹が空いているわけでもオムツが汚れているわけでもないのに、いくらあやしても泣き止まない赤ちゃん。何をしてもダメで、放置したくなるときもありますよね。赤ちゃんが泣き止まないときはどうすればいいのか、今一度考えてみましょう。
赤ちゃんが泣くのはなぜ?
月齢によって理由が異なることも
赤ちゃんが泣く主な理由は、実は月齢によって少しづつ変化します。それは、赤ちゃんの情緒は月齢が進むにつれて徐々に発達していくから。泣く理由は以下のように変化していくでしょう。
0~3ヶ月
新生児にまず芽生える感情は「興奮」で、それから少し遅れて「不快」を覚えるようになり、続いて「快さ」を感じるようになると言われています[*1]。そのため、このころには、お腹が空いた、暑い、お腹がいっぱいで苦しいなど、不快を訴えて泣くことが多いでしょう。
3ヶ月~
このころになると、「興奮」「快適」「不快」がはっきりしてきます。泣くときには、上記のような理由に加えて、眠いのに眠れない、構ってほしい、退屈といった感情を表す泣きが始まるとも言われています。
6ヶ月~9ヶ月
このころの赤ちゃんは「興奮」「快適」「不快」に加え、「怒り」「嫌がる」「恐れ」といった感情も抱くようになると言われています。また、人を区別できるようになり、人見知りや後追いによる泣きも始まることがあります。
このほか、消化のために腸が活発に動くことでお腹に不快感がある、歯が生え始めてムズムズするといった理由で泣くこともあります。
理由がわからないことも多い
理由があって泣いていれば、それが解決すれば泣き止みます。でも何をしても泣き止まないとき、どうして泣き続けるのか、その理由はわかっていません。数々の研究から赤ちゃんはとくに生後1~2ヶ月に泣きのピークを迎えること、そのときは何をしても泣き止まないことがわかっています[*2]。
なお、これは世界中の赤ちゃんに共通していて、親の関わり方は関係ありません。発達の過程で泣きが始まり、ピークの時期が過ぎれば泣く時間も減っていきます。
赤ちゃんが泣いた時の対処法
赤ちゃんが泣き出したら、焦らず次のように対処しましょう。
1. 要求があって泣いていないか確かめる
母乳やミルクをあげる、オムツを替える、暑がっていないかチェックをするなどして、要求があって泣いていないか確かめましょう。その他、抱っこをしてほしくて泣いている可能性もあるので、抱っこしてあやしてみましょう。
2. 赤ちゃんが落ち着きそうなことをする
ママのお腹の中にいたときを再現してあげると、赤ちゃんが落ち着くことがあります。具体的には、「おくるみで包む」「ビニールをクシャクシャする音やテレビの砂嵐の音(ホワイトノイズ)を聞かせる」などの方法を試してみます。
3. 泣き止まなくても焦らず、いろいろ試す
泣き止まないことで親の方が焦ったり不安になったりしていると、ますます赤ちゃんは泣いてしまいます。落ち着いていろいろな方法を試してみましょう。
「背中をトントンする」「子守歌を歌う」「窓から外の景色を見せる」「お気に入りや新しいおもちゃを見せる」「ドライブする」など、思いつく方法をやってみましょう。
「抱っこやおんぶで5~10分程度歩く」ことも効果があるといわれています。哺乳類の赤ちゃんは、移動中に泣いて敵に見つかることを避けるために、親に口でくわえて運ばれるときに泣き止む習性があることがわかっています。人間の赤ちゃんも、抱っこして歩いて移動すると心拍数が下がって落ち着き、泣き止むことが多いそうです[*3]。
泣き止まない赤ちゃん、放置しても大丈夫?
できる限りやってみても泣き止まないと親の方が限界になり、もう放置してもいい?と思うこともあるでしょう。次のように考えてうまく対処していきましょう。
泣き止ませよう!と必死にならなくて大丈夫
よく「赤ちゃんは泣くのが仕事」といわれますが、泣いてストレスを解消していることも考えられます。赤ちゃんが理由もなく泣き続けるのは、脳が発達する過程で自分ではどうにもできない不快や困難が出てくるからとも考えられています。
もちろん痛い・苦しいなど、実際に体に異変があって泣くこともあるので後述のポイントもチェックし、異常がなければ、何が何でも泣き止ませよう、と思わなくて大丈夫。その状態がずっと続くわけではなく、やがて泣き止んで寝てしまいます。泣きすぎで赤ちゃんの体調が悪くなることも、俗にいうサイレントベビーになることもありません。
そもそも赤ちゃんの泣き声は、うるさく聞こえるようになっているといわれています。もし泣き声が耳障りなものでなかったら、大人が赤ちゃんにすぐに近寄りお世話をしようとしなくなってしまうかもしれません。泣き声が親のストレスになるのは、赤ちゃんが生きていくためにある程度必要なことなのです。
長時間の放置は危険
ただ、いずれ泣き止むなら放置しっぱなしで大丈夫かというと、それはおすすめできません。
赤ちゃんを長時間放置することで、乳幼児突然死症候群のリスクが高まる「うつ伏せ寝」になったとき見逃してしまう、吐いたものや近くに置いていたものによる窒息などの異常に気付くのが遅れる危険があります。自分で動ける月齢の赤ちゃんなら、落下による事故の可能性も。赤ちゃんを長時間放っておくのはやめましょう。
でも短時間その場を離れるのは問題ない
イライラしたときは、10~15分程度、いったん離れて休憩することもおすすめです[*3]。その際は赤ちゃんを安全な場所に仰向けで寝かせたうえで、目の届く範囲に移動します。そしてお茶を飲む、電話やオンラインで誰かと話すなどしてリフレッシュしましょう。
限界がくる前に周囲を頼ろう
泣き止まない赤ちゃんに毎日つきあうことは、誰にとっても大変なことです。ママとパパで協力しあうことはもちろん、頼れるようであれば祖父母にも手伝ってもらいながら乗り越えましょう。
近くに頼れる人がいない場合は、「保育園の一時預かり」や「ベビーシッター」を利用する、各自治体の運営する「子ども家庭支援センター」に相談してショートステイで預かってもらったり、「ファミリーサポートセンター」に登録して近所の人の手を借りるといった方法で、赤ちゃんのお世話を手伝ってくれる人を探しましょう。ママやパパが追いつめられていては、赤ちゃんに優しくすることはできません。赤ちゃんのために周囲を頼ってください。
家庭では泣いたときのルールを決めることで、ひとりに負担が偏ることを防ぐことができます。夜泣きは交代で対応する、夜に何度も泣くときはパパがドライブに連れていくなど、各家庭でやりやすいルールを作り、大変さを家族で共有しましょう。また、ずっと赤ちゃんと2人きりという状況が続くときは、できるだけ大人と話すようにしましょう。地域の保健センターや子育て支援センターなどでも育児相談を行っています。積極的に利用しましょう。
赤ちゃんが泣き止まないとき受診が必要なケース
泣き止まない=病気やケガがある、というわけではありませんが、次のような症状や泣き方には注意してください。
受診の目安
元気に泣いているのであれば基本的に急な受診は不要ですが、次の場合は速やかに受診してください。
・急に泣き止んでぐったりしている
・おう吐や血便がある
・耳をさわる、耳だれがある
・顔色が悪く不機嫌
・オムツ替えのときに足を痛がる
・おまた(陰のう、股のつけね)が腫れている
また発熱しているときは、赤ちゃんの月齢やほかの症状の有無によって緊急度が異なります。下記も参考に受診しましょう。
泣いたり泣き止んだりを繰り返す、またはおう吐や血便がある場合
なお、泣き方に特徴がある病気に「腸重積」があります。腸重積は早急な受診が必要です。腸重積の場合、初期には数分間の腹痛のあと、15~20分ほど痛みが落ち着くことが多いと言われています。
この間は泣き止んで機嫌が良くなることもありますが、徐々に痛みの落ち着く時間が短くなります。赤ちゃんが膝を抱え込むように膝を曲げて不機嫌に泣いているときは、腹痛があるかもしれません。痛みがあると皮膚は蒼白になります。また、「腸重責」では、時間の経過とともにおう吐や血便(いちごジャム状)も出てきます。当てはまる症状がある場合は、できるだけ早く受診してください [*5]。
まとめ
赤ちゃんはさまざまな理由で泣きますが、何をしても泣き止まないとき、その理由はわからないことが多いもの。ママやパパは泣き続ける赤ちゃんを前に焦ったり途方にくれたり、大変な思いをすることでしょう。赤ちゃんは泣くのが仕事といわれますが、親の仕事は泣き止ませることではなく、赤ちゃんを健康に育てること。泣き止まないときは体調にも気を配りつつ、泣き止むようにいろいろ試したり、時には休憩したり人を頼ったりしながら、この時期を乗り越えましょう。
(文:佐藤華奈子/監修:丘 逸宏 先生)
※画像はイメージです
[*1]Banham-Bridges, K.M.: Emotional Development in Early Infancy, Child Development Vol. 3, No. 4 (Dec., 1932), pp. 324-341.
[*2]厚生労働省「赤ちゃんが泣きやまない 泣きへの理解と対処のために」
[*3]理化学研究所 脳神経科学研究センター「親子のつながりをつくる脳 vol.3」
[*4]佐久医師会 教えて!ドクター「赤ちゃんが泣きやまない」
[*5]日本小児救急医学会「小児腸重積症の診療ガイドライン」
※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました
※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます