【医師監修】赤ちゃんが泣きやまないときの4つの解決方法|新生児が泣く理由
出産後、生まれたばかりの赤ちゃんと暮らし始めて戸惑うことがたくさんあることでしょう。中でもなぜ赤ちゃんが泣いているのかわからなかったり、なかなか泣き止まないことに悩むママやパパは少なくありません。今回は新生児が泣き止まない理由や対処法についてお話します。
新生児の赤ちゃんはなぜ泣くの?
生まれたばかりの赤ちゃんは、何度も起きたり眠ったりを繰り返し、1回3~5時間ずつ、1日で合計15~18時間眠ります。おしっことうんちも少量ずつ何度も出し、授乳も頻繁で1~3時間おきになることも珍しくありません。
この時期はママの体も出産のダメージから回復中ということもあり、慣れない子育てに疲れたり悩んでいることが珍しくありません。中でも、新生児の赤ちゃんが泣いている理由がわからず、頭を悩ませているママ・パパは少なくないのではないでしょうか。
赤ちゃんが泣く理由=特になし!?
2010年に行われたある調査では、約半数の人が「乳児の泣きで困った時期がある」と答えており、そのうち7割の人がその時期を「生後2ヶ月未満」と答えていました。
初産婦によく見られたのが「泣きの原因がわからないから悩んでしまう」という悩み。赤ちゃんが泣いて困ったために「育児がつらい」と答えていた人は、経産婦よりも初産婦の方に多い傾向がありました[*1]。
育児に慣れていなければ慣れていないほど、赤ちゃんの泣きに悩み、つらいと感じるのは当たり前のことなのです。
新生児の情緒は「興奮」だけ
赤ちゃんが泣いていると、何かを求めていたり、つらい、苦しいなどの感情を訴えているように感じる人もいることと思いますが、実際には、新生児期の赤ちゃんの情緒は「興奮」だけと言われています。
やがて漠然とした不安感や安心感も感じるようになり、生後3ヶ月ごろには快感や不快感、生後6ヶ月ごろからは怒ったり怖がったりなどの情緒も成長とともに育っていきます[*2]。
理由なく泣き、なかなか泣き止まない
特に赤ちゃんが低月齢のころは、理由もなく泣くこともあります。これは「パープルクライング」と呼ばれています。この泣きは理由がないだけでなく、なかなか泣き止まないことでも知られています。
何をやっても止まない赤ちゃんの泣き、6つの特徴
赤ちゃんの泣きにはピークがあります。一般的には生後2週間ごろから泣く時間が多くなり、生後2ヶ月ごろで泣く時間が最大になります。ただし、この泣きのピークには個人差があり、中には生後3週や8週で泣きのピークを迎える子もいます。
このころは、何をやっても泣き止まない場合も多いこともわかっており、「パープルクライング」と呼ばれています。ピークを過ぎれば泣きはだんだんと治まっていくのも「パープルクライング」の特徴です[*3] 。
パープルクライングは次の6つの特徴の頭文字を取って、「パープル(PURPLE)」と名づけられています。
P:泣きのピーク|最大の時期は生後2ヶ月ごろ
赤ちゃんの泣きのピーク(Peak of Crying):赤ちゃんは生後2週間ごろから泣き始め、週数が増えるにつれてさらに泣くようになります。生後2ヶ月目でもっともよく泣き、生後3~5ヶ月くらいにこうした泣きは減っていきます。
U:予想外|泣くのも泣き止むのも原因不明
赤ちゃんの泣き方は予想外(Unexpected):泣き続けるうちに泣き止みますが、どちらも原因はわかりません。「あれ?いきなり泣いた!?」と思っているうちに、何が奏功したかわからぬまま泣き止むということも多々あります。
R:なだめることに抗う|あやしても抵抗するように泣き続ける
なだめても抗う(Resists soothing):どんなふうになだめても、それに抵抗するように泣き止みません。大人は疲労困憊ですね。
P:痛そうな表情|見た目は辛そうに見える
痛そうな表情(Pain-like face):泣いている最中は、痛みがなくても痛そうに見えることがあります。「どこか痛いのかも! どうしたらいいんだろう……」と余計に心配になりますね。
L:長く続く|なかなか泣き止まない
長く泣き続ける(Long lasting):泣きはトータルで1日に5時間、またはそれ以上続きます。泣いてるか、寝てるか、飲んでるか、新生児期はそんな日々が続くのが普通なのです。
E:夕方から晩|夕暮れ以降に泣きやすい
夕〜晩はよく泣く(Evening):午後遅くや夕方~夜の初めくらいによく泣きます。ちょうど夕飯の準備の時間帯になので、余計にストレスになる親御さんも多いことでしょう。
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黄昏泣きについて、詳しくは以下の記事を参考にしてください。
関連記事 ▶︎赤ちゃんが泣き止まない原因は黄昏泣き?
泣かれたらどうする?
新生児の泣きには必ずしも理由があるとは限りません。理由もなく泣き始めて、抱っこしたりあやしたり、授乳などのお世話をしても泣き止まないのはよくあることです。
そのため、泣いたらまずは要因となりそうなことを取り除き、その後は「まあ、赤ちゃんは泣くものだ」とできるだけ気持ちを楽にすることをおすすめします。
1. 授乳・オムツ替えなどを行う
授乳をし、オムツ替えもしてみましょう。泣いている原因が空腹やオムツの不快感とは限りませんが、満たされて快適になれば寝てくれる可能性も大きくなります。
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赤ちゃんのお世話について、詳しくは以下の記事を参考にしてください。
関連記事 ▶︎新生児の母乳の授乳回数・時間間隔は?
関連記事 ▶︎おむつ替えのタイミング・頻度や回数は?
2. 体の状態を確認する
おむつかぶれがないか、服がきつくない、体に異常はないか確認しましょう。中には「足の指に髪の毛が絡みついて泣いていた」(ヘアターニケット)というケースもあります。赤ちゃんの体温や鼻づまりなども見てあげられるといいですね。
※この後で解説する「病気などの泣きとの見分け方」を見て、心当たりがあれば受診しましょう
また、室温や服装、かけている寝具などを見て、暑かったり寒かったりしないかもチェックします。
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赤ちゃんの室温や服装について、詳しくは以下の記事を参考にしてください。
関連記事 ▶︎赤ちゃんの室温の目安は? 季節別の温度調整ガイド
関連記事 ▶︎赤ちゃんの服装|気温・季節別の選び方
3. あやしてみる
抱っこしてトントンしたり、おくるみで包んでみましょう。ママのおなかの中にいた時を思い出せるように、「シー」という音を聞かせる、ビニールをクシャクシャさせるのもおすすめです。
また、ドライブに行くと心地よい振動で泣き止むこともあります。
\赤ちゃんが泣き止む音(動画)/
4. 泣き止まない時には少し離れる
色々と試してみても、赤ちゃんが泣き止まないことは珍しくありません。「赤ちゃんは泣くのが仕事」という言葉もあるくらいよくあることです。
誰が悪いわけでもありませんが、同時にママやパパがイライラしたりつらくなるのも当たり前のことです。
新生児がどうしても泣き止まず、イライラしたりつらくなってしまったら、赤ちゃんを安全な場所に寝かせて少しだけその場を離れましょう。単に放置するというわけではなく、少しして気持ちが落ち着いたら、戻って赤ちゃんの様子を確認してくださいね。
やってはいけない泣き止ませ方
赤ちゃんが泣き続けてカッとなったとしても、「赤ちゃんを激しく揺さぶる」ようなことだけはやらないようにしましょう。
赤ちゃんの脳はとても柔らかく、ダメージを受けやすくなっています。また、体に比べて頭も大きいので、激しく揺さぶられると首がしなって、頭の中に大きな回転力がかかります。そのため、脳のまわりの血管や脳の神経が引きちぎられることがあるのです。
これを「乳幼児ゆさぶられ症候群」(揺さぶられっ子症候群)といいます。
「乳幼児ゆさぶられ症候群」は将来的に言語障害や学習障害、歩行困難、失明を起こすことがあり、最悪の場合死に至ることさえもあります[*4]。
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揺さぶられっ子症候群について、詳しくは以下の記事を参考にしてください。
関連記事 ▶︎揺さぶられっ子症候群はどんなことで起きる?原因と症状
病気などの泣きとの見分け方
赤ちゃんは理由なく泣くこともありますが、病気などの理由で泣き止まないことはあります。泣いている時にこんな様子が見られたら、小児科で診てもらいましょう。
様子を見て診療時間に小児科へ
次の症状だけであれば、慌てなくてもまず大丈夫です。
□ 2~3日前からうんちが出ていない
□ おしりが赤い
自宅で様子を見て診療時間になったら病院で診てもらいましょう。なお、症状が変わったり、次の章の症状が見られたら急患として受診するのがおすすめです。
至急病院へ!
泣いている時に次の症状が見られたら、診療時間に関わらず急患として病院で診てもらうようにしましょう。
□ 泣いていたのに、急に泣き止みぐったりした
□ 38度以上の発熱がある
□ おまた(陰のう、股のつけね)がふくらんでいる
□ 耳だれがある
□ 顔色が悪く、不機嫌にしている
□ 血便や頻回の嘔吐がある
受診した時には、「いつもと違う泣き方かどうか」「違うとしたら、どんなところが違うか」も医師に伝えましょう。
また、その他にも気になることがあれば気軽にかかりつけの小児科に相談してくださいね。
まとめ
新生児期の赤ちゃんは、理由があって泣くことがあるのはもちろん、理由なく泣く場合もあります。泣き始めたら、まずはあやしたり、お世話をするなど、いろいろ試してみて、体の様子もチェックしましょう。泣くだけでなく気になる症状もある場合は、医療機関で相談するようにしましょう。
なお、何をしても泣き止まず、体調にも変わりがないなら、パープルクライングの可能性があります。泣き止まなくて泣き声がつらくなったりイライラしたら、赤ちゃんを安全な場所に寝かせて、少し離れて落ち着いてもかまいません。
理由ない泣きはどんなママやパパにとってもつらいものですが、やがて成長とともに落ち着いていきます。赤ちゃんが大声で泣けるほど元気に育っているのだと思って、気長に泣きにつきあっていきたいですね。
(文:大崎典子/監修:梁尚弘先生)
※画像はイメージです
[*1]「乳児の「泣き」に対する母親の対処行動に関する調査」明治国際医療大学誌 15 号:1-9,2016
[*2]「お母さんと子どものコミュニケーションのために -0~3歳までのお子さんのお母さんへのヒント集-」(厚生労働省)
※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました
※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます