インフルエンザ予防接種前に必読!ワクチン予防の注意点
インフルエンザが流行する時期になると、子供にインフルエンザワクチンを接種すべきか迷うこともあるでしょう。ワクチン接種に最適な時期や、予防接種の注意点、副作用の問題について解説すると共に、予防接種をすればインフルエンザにかからないのか、気になる疑問についてもお伝えします。
インフルエンザワクチンについて
※画像はイメージです
まずはインフルエンザワクチンの基本情報についてお伝えします。接種に適した時期や年齢、ワクチンの成分をチェックしておきましょう。
インフルエンザワクチンの接種時期は?
インフルエンザは例年12月~翌年の4月までに流行することが多く、1月末~3月上旬が流行のピークとなる傾向にあります。そのため、12月中旬までに受けておくことがすすめられます。ワクチンの効果が出るまでには約2週間かかるため、その期間を考慮して接種時期を決めることが大切です。
インフルエンザワクチンを受けられる年齢と接種回数は?
インフルエンザワクチンの接種ができるのは、生後6ヶ月からです。また、子供の予防接種の場合は、年齢によって接種回数が異なります。13歳未満は2回接種、13歳以上は1回接種が基本です。ただし、13歳以上でも医師の判断で2回接種となる場合もあります。[*1]
インフルエンザワクチンの成分は?
その年に流行が予想されるいくつかの型のインフルエンザウイルスをもとに作られています。流行する型は年ごとに異なる可能性があるので、インフルエンザワクチンの予防接種は毎年受けることがすすめられています。
なお、一般的なワクチンには保存剤(殺菌・防腐など)としてチメロサールが添加されています。これは有機水銀に由来する保存剤ですが、小児を含め、接種による健康上の問題はないとされています。チメロサールを使用しないワクチン(チメロサールフリーワクチン)もあるので、妊娠中など、何かしらの理由で気になるときは医師と相談してください。[*2]
予防すればかからないの?
インフルエンザワクチンの接種において最も気になることは、効果がどれだけあるのかということでしょう。ワクチンに期待できる効果についてお伝えします。
予防接種をすればインフルエンザにはならないの?
インフルエンザワクチンには、ウイルスが体の中に入ること(=感染)を防ぐ効果はありません。では、なぜワクチンの接種が推奨されているのでしょうか。それは、ワクチンの接種により、感染しても肺炎や脳炎などの重症感染を予防できる可能性が高いこと、発熱や喉(のど)の痛みなどの症状がでること(=発病)をある程度抑えることができるためです。
6歳未満の小児を対象とした研究によると、ワクチンを接種した人が発病するリスクは、接種しなかった人に比べて60%減少したことがわかっています。[*1]このように、確率は100%ではなく、麻疹(はしか)や風疹ワクチンのような高い発病予防効果もありませんが、一定の効果は期待できます。
また、インフルエンザワクチンには症状の重症化を抑える効果も期待できます。インフルエンザは重症になると入院治療が必要になったり、肺炎や脳症などの合併症がみられる場合や、まれに死亡に至るケースもあります。ワクチンにはこのようなケースを防ぐ効果が期待できます。
インフルエンザワクチンの免疫持続期間は?
インフルエンザワクチンを接種すると(2回接種の場合は2回目以降)から1~2週間後に抗体が現れ始め、およそ1ヶ月後までにピークに達します。その後は、およそ3~4ヶ月で徐々に低下していくとされています。よって、ワクチンの効果が期待できるのは、接種の2週間後からおよそ5ヶ月後程度と考えられています。[*3]
毎年接種しなければいけない理由は?
インフルエンザウイルスは大きくA型、B型、C型に分けられますが、それぞれもまた何種類もの型に分けられます。流行の大きな原因となるA型には144種類もの型がありますし、同じく流行しやすいB型にも大別して2種類の型があります。さらに、この何種類もの型自体も、毎年のように小さい変異をしています。[*4]
このように、インフルエンザウイルスには型が多く、その型自体も特にA型では細かい変異を続けているため、一度インフルエンザにかかって免疫がついた(体内に抗体を獲得した)としても変異したウイルスに再感染するということが起こるのです。インフルエンザワクチンは、その年に流行が予測される型のものが作られるので、毎年接種しておくことがすすめられています。
また、前述のとおり、ワクチンの効果は長くて5ヶ月程度です。1年以上持続することはないので、こういった理由からも毎年の接種が必要となります。
インフルエンザワクチンの副反応は?
インフルエンザワクチンの接種を検討するうえでは、副反応(ワクチンの予防接種によって起こる望んでいない反応のこと)が気になる方もいるでしょう。妊娠中や小さいお子さんの接種の場合は、特に心配になるかもしれません。インフルエンザワクチンによって重い副反応が起こることはほとんどありませんが、接種後に軽い反応が見られることはあります。主に見られる症状についてお伝えします。
注射した箇所の反応
予防接種後は、注射した箇所に腫れ、傷み、赤みなどがあらわれることがあります。接種した人の10~20%に起こりますが、2~3日でなくなることがほとんどです。
全身の副反応
身体全体として現れる副反応としては、発熱、寒気、頭痛、だるさなどが見られることがあります。接種した人の5~10%に起こりますが、これも2~3日でなくなります。
まれに起こり得る反応
ごくまれなケースですが、発疹、じんましん、赤み、かゆみ、呼吸困難などの症状(=アナフィラキシー様症状※1)が見られることがあります。比較的早い段階で症状が現れることが多いので、接種後30分は病院で様子を見ることをおすすめします。帰宅後に上記のような症状が見られるときは、速やかに医師の診察を受けてください。
※1:アナフィラキシーとは、接種後およそ30分以内に起こる重いアレルギー反応のことです。主に発汗、顔の急激な腫れ、全身性のひどいじんましん、吐き気、嘔吐(おうと)、呼吸困難や声が出にくいなどの症状が起こり、その後血圧が下がっていきます。
インフルエンザワクチンを接種するにあたって
最後に、インフルエンザの予防接種を受けるにあたり、注意しておきたいことがいくつかあります。予防接種を受けられない場合や費用など、事前に確認しておきましょう。
予防接種を受けられない場合とは
インフルエンザワクチンに含まれる成分によりアナフィラキシー様症状を起こしたことがある人は、受けることができません。また、予防接種当日に37.5度以上の発熱がある場合や、急性の重篤な疾患にかかっている場合は、その日は受けることができません。症状が治るまで見送られます。
この他、喘息と診断されたことがある、免疫異常を指摘されたことがある、鶏卵のアレルギーがあるなど、接種前に医師としっかり相談する必要がある人もいます。接種前は注意事項をよく聞き(または読み)、医師と相談のうえ安全に受けるようにしましょう。
予防接種後の注意点
アナフィラキシーなどの重い副反応は予防接種後すぐに見られることが多いため、接種後30分は接種した医療機関で安静にしましょう。その後も24時間は副反応に注意し、何かあったときはと、休日夜間診療所などを含めてすぐに医療機関に連絡が取れるようにしておくと安心です。
また、注射したところを刺激(強くこするなど)するのは避けましょう。重い反応が見られなければ、普段通りの生活を送って大丈夫です。当日の入浴も問題ありません。ただし、激しい運動や大量の飲酒は避けましょう。
インフルエンザワクチン接種の費用は?
インフルエンザワクチンの接種は病気の治療ではないので、健康保険は適用されず、全額自己負担となります。また、費用は医療機関によって異なるため、一概にいくらとは言えません。ただ、自治体によっては小児や高齢者への助成があったり、勤労者が加入する健康保険組合からの補助がある場合もあります。地域、企業・組合などによって内容が異なるため、確認してください。
まとめ
インフルエンザが流行する時期には迷わず予防接種を受けるご家庭もあれば、受けるべきか迷うご家庭もあるでしょう。予防効果や副反応について理解しておくことは、重要な判断材料のひとつになると思います。そのうえで、必要と判断した場合は接種時期を見極め、受けるようにしてください。受ける前には、自治体の助成について確認することもおすすめします。
[*1]『インフルエンザQ&A』厚生労働省
[*2]『保存剤(チメロサール等)が添加されている新型インフルエンザワクチンの使用について』厚生労働省
[*3]『新型インフルエンザワクチン Q&A 』厚生労働省
[*4]『インフルエンザの基礎知識』厚生労働省
※この記事は 医療校閲・医師の再監修を経た上で、マイナビ子育て編集部が加筆・修正し掲載しました(2018.06.25)