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2024年06月07日 10:31 更新

現役小児科医が伝えたい! 子供の健康を守るために「学校健康診断」がとても重要な理由

毎年春に行われる、子どもたちの「学校健診」。小児科医の森戸やすみ先生に、どうして学校健診が必要なのか、なんらかの異常が見つかったらどうしたらいいかなどについて、詳しく聞きました。

早期発見のためのスクリーニング

学校健診 身体測定
(※画像はイメージです)

毎年4〜6月頃は、小中学校で健康診断が行われる時期です。お子さんが学校で内科健診、眼科健診、歯科健診、尿検査(提出)をしたばかりというご家庭も多いでしょう。

学校健康診断の歴史は古く、1888年の「活力検査」を始まりに、1897年には「学生生徒身体検査規程」が公布され、何度もの改定を経て、1944年には生徒だけでなく教職員の健診についても規定した「学校身体検査規程」が成立し、現在の学校健康診断の基になりました。

現在では、学校における保健管理及び安全管理のルールを定めた「学校保健法」に基づいて行われています。学校保健法の第6条第1項で、「学校においては、毎学年定期に、児童、生徒、学生又は幼児の健康診断を行わなければならない」としているのです。つまり、学校の義務なんですね。

そのため、各学校には小児科(内科)と眼科と歯科と耳鼻科の校医がいて、入学前の健診のほか、春と秋、宿泊学習前などに健診が行われています。

学校の健康診断は、個人を対象に特定の病気がないかどうかを診る「検診」とは違い、集団を対象に健康上の問題がないかどうか、病気や異常の疑いがないかどうかを診るスクリーニング(ふるい分け)のための「健診」。このスクリーニングが、病気や異常の早期発見のためにはとても効果的なのです。

ただし、学校健診では多ければ数百人を数時間で診ていくことになります。健診時の脱衣に疑問を持つお子さん、保護者の方もいると思いますが、正確に診るためにはなるべく薄着で、視診と聴診と触診をする必要があるんですね。

ただ大勢で順番を待つ間は着衣のままで問題ありませんし、必ずしも上半身裸ではなくブラトップやタンクトップなどの薄着でも大丈夫です。今年1月に文部科学省も「児童生徒等のプライバシーや心情に配慮した健康診断実施の環境整備について」通知を出しましたが、「検査・診察を行うまでの待機の際には着衣を」「着衣のままでは診察できない検査項目はその部位をきちんと提示する」等、児童生徒に配慮し、あらかじめきちんと説明をすることが大切です。

学校健診では、どんな異常が見つかる?

では、学校健診では、どんな病気や異常が見つかり得るのでしょうか。

まず、尿検査では、尿タンパクの有無で「腎臓病」、尿糖の有無で「糖尿病」、尿潜血の有無で「腎臓病」や「尿路感染症」などの可能性を調べます。

内科健診では、問診や視診では全身の健康状態および皮膚状態や「貧血」を、聴診では呼吸や心臓の音を聞くことで「呼吸器疾患」「心疾患」を、触診では頸のあたりに触れてリンパ節の極端な腫れや「甲状腺異常」などがないかどうかを確認します。

呼吸器や心臓の病気が見つかることもありますが、多いのは「アトピー性皮膚炎」、脊椎が曲がる「側弯症(そくわんしょう)」、胸が凹んでいる「漏斗胸(ろうときょう)」などでしょう。また、稀に身体についた打撲痕などから虐待が見つかることもあります。

その他にも、頻度は少ないものの、第二次性徴が早期に訪れる「思春期早発症」が見つかることも。この病気はホルモン異常が原因で、背が伸びなかったり(一時的に伸びたあと成長が止まる)、男子は早く声変わりをしたり、女子は早く初潮がきたりします。反対に成長が遅いことから、症候性の低身長や「ターナー症候群」などの内分泌系の病気が見つかることもあるでしょう。

耳鼻科健診では「鼻炎」や「慢性副鼻腔炎(蓄膿症)」や「中耳炎」、眼科では「視力低下(近視)」や「結膜炎」、歯科健診では「虫歯(う歯)」が見つかることが多いと思います。

病気や異常が見つかったら早めに受診を

(※画像はイメージです)

こうして学校健診でなんらかの病気や異常が見つかった場合、お子さんが検査結果と一緒に受診をすすめるプリントを持ち帰ると思います。

学校保健法の第7条において、「学校においては、この健康診断の結果に基づき、疾病の予防措置を行い、又は治療を指示し、並びに運動及び作業を軽減する等適切な措置をとらなければならない」としています。だから、何らかの問題があった場合には医療につながることができるようフォローアップしなくてはならないのです。

すでに病院を受診している場合は、わざわざ病院にかかって診断書を発行してもらわなくても、保護者がその旨を学校に知らせれば大丈夫です。

まだ病院を受診していない場合は、それぞれの診療科を早めに受診してください。ときどき、お知らせから半年ほど経ってやっと病院に連れていく方もいますが、それでは遅すぎます。病気によっては悪化することがあるからです。

受診すべき診療科は、目のことなら眼科、鼻や耳のことなら耳鼻咽喉科、髪や爪や皮膚のことなら皮膚科、成長発達や内科的なことなら小児科、骨や筋肉のことなら整形外科、歯のことなら歯科です。症状に合わない診療科にかかると、出直すことになりますから、わからない場合は事前に医療機関に問い合わせてみてください。

各診療科では、必要に応じて検査・確定診断を行ったり、治療を行ったりします。例えば、側弯症なら整形外科の受診をすすめられますので、そこで詳細に診てもらって、経過観察になる場合もあれば、コルセット等を使うこともあるでしょう。こうして病院にかかった場合も、必ず学校に結果を知らせるようにしてください。

どんな病気でも、早期発見・早期治療が何より重要です。大切なお子さんの健康を守るために学校健診は必ず受けましょう。もしも休んでしまった場合は予備日を利用し、予備日がないようであれば、学校医やかかりつけ医で診てもらうのがおすすめです。

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