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2024年05月17日 10:41 更新

男の子のHPVワクチン、なぜ必要なの?「まだ子ども」だからこそ接種しておきたい理由

今、男の子のHPVワクチンの接種費用を全額助成する市区町村が増えています。特に東京都は、4月から助成を開始した区がたくさん! そこで、小児科医の森戸やすみ先生に詳しい話を伺いました。

さまざまな病気を防ぐHPVワクチン

(※画像はイメージです)
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男の子のHPVワクチンの接種費用を助成する市区町村が増えているのをご存じでしょうか。例えば東京都では、他に先駆けて昨年から中野区が全額助成を行なっていました。そして今春は、千代田区、新宿区、文京区なども助成を開始しています。

以前、HPVワクチンは「子宮頸がんワクチン」と呼ばれていたため、女の子だけが接種するものだと思っている人もいるかもしれません。SNSで「子宮(頸部)のない男の子に接種するなんておかしい」という発言を目にしたこともあります。でも、「女の子だけがワクチンを打てば、この病気を根絶できる」というわけではないのです。

HPVワクチンは、HPVつまりヒトパピローマウイルスに感染するのを予防するワクチンです。ヒトパピローマウイルスが引き起こす病気は、子宮頸がんや腟がんだけではありません。肛門がん、中咽頭がん、尖圭(せんけい)コンジローマなどの原因にもなります。

尖圭コンジローマというのは、性感染症のひとつ。ヒトパピローマウイルスに感染することで、男女とも性器や喉にイボ状の突起が出るのが特徴で、いったんかかると繰り返しできてしまうことがあります。母子感染もするため、注意が必要です。産道で赤ちゃんが感染すると多発性咽頭乳頭腫という病気になってしまうことがあるのです。

ヒトパピローマウイルスはオーラルセックスを含む性交渉などで感染するため、初めて性交渉をする前に接種しておくことが大切です。「うちの子はまだ幼いし必要ない」と思っていても、いつ初めての性交渉をするかはわかりませんし、たった1回の性交渉でも感染するときはします。だからこそ、第二次性徴を迎える頃には接種しておきたいものです。

男の子が接種する場合の時期と間隔は?

(※画像はイメージです)
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さて、HPVワクチンは女の子の場合、2013年4月1日から2価ワクチン(サーバリックス)、4価ワクチン(ガーダシル)が定期接種になりました。2023年4月1日からは9価ワクチン(シルガード9)が定期接種に加わっています。ヒトパピローマウイルスは複数の種類があり、「9価」というのは、その中の9種類のウイルス感染を防ぐことができるということです。

9価ワクチンは、15歳未満で接種を開始した場合は2回の接種でOKとされていますが、15歳以上で接種を開始した場合は3回接種が必要になるので、早めに接種したほうがラクだと思います。接種間隔等は、厚生労働省のサイトを見てくださいね。

一方、男の子の場合、2020年に4価ワクチンのガーダシルが承認され、何歳で開始しても3回の接種になっています。接種時期は、助成を使う場合は自治体ごとの決まりを確認する必要がありますが、どこで受けても女の子と同じ時期、接種間隔だろうと思います。例えば、中野区は女の子と同じ接種期間・間隔です。

男の子にHPVワクチンを接種させたい場合は、まず助成があるかどうか、お住まいの自治体のサイトを見たり、問い合わせたりしてみてください。現在のところ、男の子のHPVワクチン接種に助成のない自治体も多いのが実情です。

助成のない自治体にお住まいの場合でも、小児科または内科で自費で接種することが可能です。だいたい3回接種で5〜6万円くらいかかるでしょう。結構、高価なので、どの自治体にも助成してもらいたいものですね。自治体に要望を伝えてもいいと思います。

男女ともに定期接種化すべきなのに

本来、HPVワクチンは男女ともに定期接種すべきユニバーサルワクチンの一つです。世界ではすでに60カ国以上で男女とも公費接種になっています(2024年5月現在)。

思い返せば、現在では男女とも乳幼児のうちに接種する風疹ワクチンも、1970年にイギリスで開始された際には11〜14歳の女子だけが接種するものでした。その理由は、妊娠中に風疹にかかると、おなかの中の赤ちゃんが「先天性風疹症候群」になり、先天性心疾患や難聴、白内障などの障害を負うリスクがあるためです。

ところが男の子が風疹ワクチンを接種しなかったために、風疹の流行は収まらず、結局は男女両方の接種が必要だとわかりました。上記のイギリス方式から、アメリカ方式という1歳の男女ともに受ける方法に変わったのです。HPVも同じこと。人から人へと感染するものですから、女性を守るためにも、また男性自身を守るためにも両性への接種が肝心です。

それなのに、なぜ男の子は定期接種になっていないのでしょうか。今年3月、厚労省の専門家委員会で、男の子へのHPVワクチンの定期接種化は費用対効果が悪いため当面見送るという結論が出たそうです。日本のように女子の接種率が低い国では特に男子接種の効果が高いといわれているのに、この結論は大変疑問です。世界中の60カ国以上が男女ともに受けるワクチンなのに、そういった国々が費用対効果が悪い方法をわざわざ取っているというのでしょうか。

HPVワクチンは、国民をがんや感染症から守るためにも、それらの病気の治療費を抑えるためにも必要なものです。性別や自治体を問わず、誰もが公費で接種できるようになってほしいと思います。

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