家族への感染も怖い! 子どもの間で集団発生する「アタマジラミ」を予防する5つの方法
しばしば集団発生するアタマジラミ。小児科医の森戸やすみ先生に、子どもの間でアタマジラミが流行する理由から、予防・治療方法まで詳しく聞きました!
飛べない・跳ねないアタマジラミ
保育園や幼稚園、小学校などで、アタマジラミが流行することがありますね。夏に多いと思われがちですが、じつは季節による差はなく、一年中どこで流行していてもおかしくありません。
私たちヒトに寄生するシラミは、頭髪につくアタマジラミのほか、主に陰毛につくケジラミ、衣類につくコロモジラミの3種類。オス・メス関係なく皮膚から吸血し、強いかゆみが引き起こされます。また、かゆさのために爪で引っ掻いて二次感染が起こることも。
アタマジラミの成虫はおよそ2〜4mmで、オスよりもメスのほうが大きいのが特徴。3対の脚を使って頭髪の上を素早く移動することができ、メスは1日に3〜9個の卵を産みつけるため、放置すると増えていってしまいます。
なお、シラミは宿主に特異性があり、アタマジラミはヒトの頭にしか寄生しません。ヒトから飼っている動物にうつったり、飼っている動物からヒトにうつったりしないのです。またシラミは、宿主であるヒトから離れると長くは生きられません。吸血できないと72時間程度で死んでしまうのです。さらにシラミには羽がないので飛ぶことはなく、ジャンプもできませんし、平らなところを歩くこともできません。
それなのにどうして子どもの間で流行するかというと、子ども同士は距離が近く、頭を寄せ合って遊ぶことが多いから。保育園などではお昼寝の時に頭と頭が接触してシラミが移動することもあり、また、帽子やヘアブラシ、タオルなどの共用でもうつることがあります。
感染を疑ったらどうしたらいい⁉︎
さて、子どもがアタマジラミ症かもしれないと思ったら、どうしたらいいでしょうか。確信が持てない場合は、皮膚科か小児科にかかって診断を受けましょう。かゆそうにしていたけれど、頭皮の湿疹、フケ、あせもなどでかゆかっただけ、というケースもあります。
でも、明らかにアタマジラミだとわかっていて、特に皮膚に炎症や強いかゆみなどがない場合は、受診せずに薬局で駆除剤を購入して使っても構いません。
昔は男女を問わず丸刈りにするなど頭髪自体を除去することがありましたが、今ではピレスロイド系フェノトリン(スミスリン®シャンプー、スミスリン®パウダー、またはスミスリン®ローション)という駆除剤を使います。また、最近は殺虫成分のないジメチコンを有効成分とした駆除剤(アースシラミとりローション)もあります。
具体的には、ピレスロイド系フェノトリンを週2回(2、3日おき)、およそ2週間くらい継続して使うことになります。これは駆除剤が幼虫や成虫には効くものの、卵には効かないため。シラミの卵は10日前後で孵化して幼虫になり、その後の7〜16日は産卵しないので、幼虫の間に減らさないといけないのです。
同時にシラミの卵を手で取ることも大切です。ただし、卵はセメントのような物質で頭髪に固定されているため、手で振り払ったり、普通にブラッシングするくらいでは取れません。一つずつ指で摘むように取ってください。アタマジラミ用の梳き櫛を使ってもいいと思います。
アタマジラミの感染予防について
さて、アタマジラミ症にならない、感染を広げないためにできることはあるでしょうか。以下のようなことが挙げられます。
①毎日、丁寧に洗髪しましょう
成虫や幼虫はしっかり洗髪すれば洗い流すことができます。子どもの場合は自分で上手に洗えていない、または面倒くさがって洗っていないこともあるので、必要に応じて保護者がチェックしたり洗ったりしましょう。
②シラミの情報は早めに伝達!
保育園や幼稚園、学校などで集団発生した場合、蔓延を防ぐため保護者に知らされます。そのため、お子さんがアタマジラミ症になった場合、先生に伝えるなどしてください。
③ときどきシラミのチェックを
シラミが発生するとかゆみが起こるとされていますが個人差があり、気づかないことも。お子さんの頭髪をときどき確認してあげましょう。ただ、成虫や幼虫は動き回って見つけにくいことも。耳の周囲からえりあしにかけて多く付着する傾向がある卵の有無をチェックするといいでしょう。
④帽子やタオルなどを共有しない
周囲にアタマジラミ症の人がいる場合、帽子やタオル、くしなどを共用しないようにしましょう。ちなみに、そうした小物類は55度以上のお湯に5分以上浸けておけば駆除することができます。
⑤早期発見&早期治療を心がけて
感染したかもしれないと思ったら、すぐに皮膚科または小児科を受診しましょう。もしも感染していたら早めに駆除剤を使い、周囲に広げないようにすることが大切です。
最後に、アタマジラミは必ずしも不潔だから感染するわけではありません。感染した子をからかったりなどはしないようにしましょう。そしてプールは治療を開始していれば入れますが、タオルやヘアブラシ、水泳帽の貸し借りはしないでくださいね。