
忘れ物が多い原因は発達障害? よくある4大特徴と今すぐできる5つの対策【心理カウンセラー監修】
「また忘れ物をしてる!」「なんでこんな大事なのを忘れるの?」と忘れっぽさに困っている保護者の方も多いのではないでしょうか。一度や二度ならよくあることでも、頻繁になると心配になりますね。成長すれば直るもの?親はどこまで手助けすべき?と対応に迷ってしまうことも。今回は忘れ物が多い原因やその対策についてご紹介します。
(文:臨床心理士・公認心理師 おおくぼまりこ/うららか相談室 )
忘れ物が多い人によくある「4つの特徴」
何度注意しても忘れ物をくり返す子どもに、ついイライラして「なんで忘れるの!」と言ってしまうかもしれません。しかし、なぜと聞かれても答えられる子どもは少ないでしょう。一口に忘れ物と言っても原因は様々です。
(もし、大人の忘れ物の多さにお困りであれば、学校を会社に置き換えるなどして考えてみてください)
特徴1 |集中できず、気が散りやすい

一つのことに集中することが難しく、気が散りやすいと、必要な情報を聞き漏らしたり見落としたりしやすくなります。こんなことはありませんか。
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・人が話しているときにぼーっとしてしまう
・会話中に別のことを考えていて聞いていない
・板書が苦手で、連絡帳を書き写すのに時間がかかる
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こうした場合、持ち物や宿題をしっかり把握することができないために忘れ物をしてしまいます。
また、準備するものが分かっていても、準備をしている途中でおもちゃやテレビなど他のものに目が行き準備を中断してしまったり、別のことを考えていて必要なものをカバンに入れ忘れてしまうということが起こるかもしれません。
特徴2 |整理整頓が苦手
部屋やカバンの中、机の中はどんな状態でしょうか。
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・ものが出しっぱなしで散らかっている
・机の引き出しの奥にプリントが丸まっている
・予想外のところからものが出てくる
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このように整理整頓ができていないと持ち物がどこにあるか分からなくなります。持って帰ってきたはずのものが実は学校に置きっぱなしだった、ということもあるでしょう。探しものが見つからないと当然持っていくことができません。
また、持ち物がどこにあるか分からないと、その都度探さなければならないため時間がかかり準備が面倒に感じられ、「めんどくさい、もういいや」と諦めてしまうことがあるかもしれません。
特徴3 |準備にかける時間が少ない

準備も細かくみると意外とやることが多かったりします。忘れ物がないようにしっかり準備するにはある程度時間が必要ですが、ここに十分な時間を確保できない場合もあります。
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・帰宅してから寝るまでにやるべきことが多くバタバタしている
(習い事や学童がある場合になりやすい)
・面倒なことを後回しにする癖があり、遊びなどを優先してしまう
・一つ一つのことをするのにとにかく時間がかかる
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このように様々な理由で時間が確保できないと、時間がない中で慌ただしく準備することになり、チェックする時間もないので忘れ物をしやすくなってしまいます。
特徴4 |持ち物をイメージできない
小学校の低学年までは持ち物を一つ一つ教えてもらえても、上級生になるとそうでない場合もあります。
例えば、次の日にプールがあったとします。
「明日はプールがあるので、持ち物は水着、水泳帽、タオル、着替え、体温表です」
と具体的に言ってもらえることもありますが、
「明日の体育はプールですよ」
と、予定のみの連絡で具体的な準備を伝えられないと、自分で持ち物を考えなければいけないことがあるかもしれません。こうしたときに、自分で必要な物を正確に思い起こすことができないと、自分ではしっかり準備したつもりでも忘れ物をしてしまっていることがあります。
今日から実行! 子供の“忘れ物防止策”5つ

忘れ物が多いお子さんのご家庭ではすでにいろいろと対策されていることでしょう。まだ試していない方法はありませんか。ご家庭でできる基本的な対策についてまとめました。
対策 1|簡単に整理整頓できる工夫をする
必要なものがどこにあるか分かるだけで準備は格段に楽になります。そのため、物の置き場所を決めて整理整頓の習慣を作れると良いでしょう。
整理整頓のポイントをいくつか紹介します。
・置き場所を決める際はあっちこっち行かなくても準備が完結できるように一箇所にまとめる
・一目で何が入っているか分かるように中身が見えるカゴやラックを使う、ラベリングする
・出し入れしやすい収納アイテムを使い、片付けしやすい場所に置く
・分類しすぎず、大雑把な収納でOK
完璧な片付けは、はじめこそきれいに保てても長続きしないことも多いです。多少見た目が悪くても、分かりやすくて簡単な方法を見つけられると良いでしょう。
対策 2|書類は決めた場所に入れる
保健だよりや給食だより、行事のお知らせ……学校ではたくさんのプリントが配布されます。お知らせだけでなく、授業で使うものや宿題もあるかもしれません。
渡されたものをなくしてしまう一因としてよくあるのが、
・ノートや教科書に挟む
・そのまま机に入れる
・そのままカバンに入る
など、その都度違うところに入れているパターン。
ないと思っていたら机やカバンの奥に丸まっていた、なんてことも起きてしまいます。
プリントを学校に忘れない、親への渡し忘れをなくすためにも、配布物は渡されたらすぐ連絡帳入れやファイルに入れておくように教えましょう。少なくとも、行方不明のプリントを減らすことができます。
対策 3|準備時間を1日のスケジュールの中に作る
次の日の準備をする時間を1日のスケジュールの中に作りましょう。
持ち物によってはすぐに準備できないものや買いに行かなければいけないものがあったりします。宿題もすぐに終わらせられるとは限りません。夜遅くや翌朝に準備をして「買いに行く時間がない!」「今からじゃ間に合わない!」なんてことで困らないように、帰宅後なるべく早い時間に準備時間を設けられると良いでしょう。
対策 4|持ち物チェッカーを活用する

持ち物のチェックリストを活用すれば忘れ物がグンと減ります。
いつも使うものであればリストを作ってランドセルの蓋の裏に時間割と一緒に挟んでおけば、時間割の確認といっしょに準備することができます。また、最近では100円ショップなどで安く材料が手に入り、簡単に作れるため、ホワイトボードを使ったチェックボードを使う人も増えています。マグネットを使いながら楽しく確認できるだけでなく、ちゃんと準備したかどうかを一目で確認することもできます。せっかく作ってもそれを見なければ意味がありません。必ず目にする場所に置くようにしましょう。
対策 5|学校の話題を出す
皆さんはおうちでお子さんと学校の話をする時間はありますか?
日常的に子どもと学校の話をする時間を持つのはとても大切なことです。話をすることで、子どもが学校でどんなことをして、どんなふうに過ごしているのか知ることができます。また、会話の中で授業や予定などについて触れることができるため、子どもが宿題や持ち物について思い出すきっかけにもなります。
下校後は習い事や遊びの予定があったり、大人は家事や仕事で忙しかったりと、なかなか時間を作れないかもしれません。5分、10分の短い時間でいいので学校の話を聞いてみてください。
親の「プリントの紛失・提出漏れ」をなくすコツ

新しい学習道具への記名や集金・振り込み、様々な年間行事、保護者会など親もすべきこと、覚えておくべき予定が意外と多いのです。大人であっても、予定を忘れたり、提出物を子どもに渡し忘れてしまうことはあるでしょう。親も忘れ物をしないように工夫ができるといいですね。
連絡帳入れを回収し、不要/必要をジャッジ
子どもが持って帰ってくる配布物は目を通すだけでいいものもあれば、記入や押印が必要なもの、スケジュールなど覚えておかなければいけないものなど様々です。確認漏れのないようにしたいところですね。重要かどうかに関わらず、とりあえず全ての配布物を確認できるように、配布物が詰め込まれた連絡帳入れをそのまま回収しましょう。子どもが持って帰ってきた連絡帳入れを出す場所を親子で決めておくと良いかもしれません。
一通り配布物に目を通したら、残しておくものとそうでないものに分けましょう。あれもこれも残しておくと大事なプリントが埋もれてしまいます。不要なものはすぐに処分し、必要なものはファイルなど保管しておく場所を決めて保管しましょう。スマホで撮って保存しておく方法もあります。
大事な部分は見逃さないように目立たせる
配布物に目を通しながら大事な部分にマーカーで線を引くなど目立つようにしておけば、パッと見て大事なことが書かれているものということが分かるので誤って捨ててしまうことを防げます。また予定や期日が記されたものがあれば、カレンダーに書き写して、プリントを見返さなくても確認できるようにしておきましょう。振り込みなど今すぐ対応できないことや後で用意が必要なものなどがあればメモし、冷蔵庫などいつも目にするところに貼っておくのも忘れ物防止になります。スマホのカレンダーやリマインダーなどを活用するのも良いでしょう。
記入・押印の必要なものはその場で処理

後回しにすると大人でも忘れやすくなります。配布物を確認し、記入や押印が必要なものはなるべくその場で記入し、連絡帳入れに戻して子どもが提出できる形にしておきましょう。
プリント類のチェック以外に、親ができることとして時間割を把握しておくことが挙げられます。時間割が分かっていると、子どもに「体操服は?」と聞かれて焦って洗濯機を回すというようなことも防げます。また、子どもが持ち物をイメージしにくい場合は、親も時間割を確認して具体的に伝えてあげられると良いでしょう。
どんなに対策をしても忘れ物が減らないのは発達障害?

いろいろと対策を試してみても忘れ物が改善されないと「発達障害なのでは?」と心配になるかもしれません。インターネットなどで調べて、そこに挙げられている特徴に当てはまるものが多いと不安になるのも当然です。
忘れ物とADHDの関係
忘れ物と関連して言われることの多い発達障害の一つがADHDです。ADHDは注意欠如・多動症とも呼ばれ、
・集中力がない(不注意)
・じっとしていられず落ち着きがない(多動性)
・思いついたら行動してしまう(衝動性)
といった症状があります。
そして、よく見られる特徴として忘れ物が多いことがあるのもたしかです。しかし、それだけでADHDと決定づけることはできません。もしどうしても心配であれば専門機関に相談してみることをおすすめします。診断を受ける場合は怖さもあると思いますが、それにより周りに理解してもらいやすくなる、その子に合った治療により過ごしやすくなるなどのメリットもあります。
忘れ物が多い子どもへの向き合い方
子どもが忘れ物ばかりしているとついイライラしてしまいますが、その裏には子どもに学校で困ることなく過ごしてほしいという思いが隠れているのかもしれません。忘れ物が多い子どもにはどのように向き合えばいいでしょうか。
子どもに合ったサポートを心がけましょう

親が何でもやってしまっては自分でできるようにならないし、子どもに任せていては忘れ物が減らない……そうならないよう、ちょうどいいサポートを心がけたいですね。親任せでもない、放任でもないちょうどいいサポートとは、子どもの実態に合ったサポートと言えます。
子どもも忘れ物をしたくてしているわけではないので、どこかでつまずいていることになります。持ち物が見つけられないのなら部屋の片付けから始める、自分で準備ができるけどいつも何か抜けてしまうのであればチェックリストを作ってみるなど、まだ上手にできていないところを見つけ、その子に合ったサポートをしていきましょう。
気長に見守りましょう
対策をしてもすぐに完璧にできるようになるわけではありません。はじめのうちは親子でいっしょに準備する、あるいは親がお手本を見せてあげるという形でも良いでしょう。できるようになったところから子どもに任せ、少しずつ手助けを減らしていけるといいですね。
子どもが全部自分一人でできるようになるまでは時間がかかるかもしれませんし、やりやすい方法を見つけるまでは試行錯誤あるかもしれません。すぐにできるようになるわけではないことを理解し、気長に見守れるといいですね。
まとめ
子どもの忘れ物は気になるものです。しかし、何より忘れ物により子ども自身が困ることが多いでしょう。忘れ物を減らして気持ちよく過ごせるといいですね。焦らず少しずつ、親子でいっしょに改善していきましょう。
(文:うららか相談室 おおくぼまりこ/構成:マイナビ子育て編集部)
※写真はイメージです
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