赤ちゃんの粉ミルクを熱湯で作らなければいけない理由。内閣府食品安全委員会が「70℃以上の熱湯で」注意喚起
1歳未満の乳児が感染すると非常に危険な「クロノバクター・サカザキ」について、内閣府食品安全委員会が注意を促しています。
粉ミルクは無菌とは限らない
赤ちゃんのために育児用粉ミルク(以下、粉ミルク)を作る際、70℃以上の熱湯で粉を溶かしてから、水道の流水に哺乳瓶のボトル部分を当てて軽く振るなどして、人肌の温度(だいたい40℃くらい)まで冷ます方法が一般的ですが、一度アツアツにしてから冷ますのを手間だと思ったり、「最初から人肌の温度に近いお湯で溶かせば良いのでは?」と疑問に感じたりする人もいるかもしれません。
しかしこれには重要な理由があります。
粉ミルクは、製造方法や製品の特性からすべての工程において密閉状態を保つことが非常に難しく、完全な無菌とはなっていません。
特に、粉ミルクに混入している可能性のある菌「クロノバクター・サカザキ(サカザキ菌)」は危険性が高く、もし感染してしまうと敗血症や壊死性腸炎を引き起こす可能性があり、1歳未満の乳児では特に注意が必要なため、内閣府食品安全委員会はTwitterにおいて注意喚起を行っています。
粉ミルクは無菌とは限りません。飲む直前に70℃以上のお湯で調乳し人肌に冷ましてから速やかに消費しましょう。
「飲む直前」に「70℃以上のお湯」で作って
クロノバクター・サカザキは、ヒトや動物の腸管、食品や自然環境に広く分布している細菌です。可能な限り低い菌数で製造された粉ミルクであっても、開封後や調乳時にも混入することが想定され、粉ミルクへの混入することを完全に防ぐことができません。
海外の調査では10%以上の粉ミルク製品から検出されたとの報告があるサカザキ菌ですが、国内でも検出報告があります。
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■ 日本における調査(2006〜2007年度)[*1]
・粉ミルク:200製品中、6製品から検出
・粉ミルクおよび類似製品:100検体中、4検体から検出
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クロノバクター・サカザキは6〜47℃で増殖可能であり、特に25℃では急激に増殖するとされているため、ぬるま湯での調乳では死滅しません。
70℃以上のお湯で調乳することにより殺菌できるので、粉ミルクの調乳は必ず、70℃以上のお湯で行ってください。
そのうえで、飲み残しはたとえ冷蔵庫であっても保管するなどせず、飲みきれなかったぶんは廃棄しましょう。WHOの「乳児用調製粉乳の安全な調乳、保存及び取扱いに関するガイドライン」では、「調乳後2時間以内に消費されなかった場合は全て廃棄すること」としています。
家庭で調乳する際の細かい注意点は、「乳児用調製粉乳の安全な調乳、保存及び取扱いに関するガイドラインの概要(FAO/WHO共同作成)」[*2]として厚生労働省HPで確認することができます。
なお、粉ミルクは70℃以上のお湯で調乳したときに失われるビタミンの割合も計算されたうえで製造さているので、栄養バランスの心配はありません。
災害時や外出時の対策
70℃以上のお湯で調乳できない状況では、乳児用液体ミルクを活用することもできます。乳児用液体ミルクは乳児が安全に飲めるようにすでに滅菌されているので、そのまま飲んでもらうことができます。
正しい知識を持って、赤ちゃんの安全を守りたいですね。
(マイナビ子育て編集部)