「第一印象は気持ち悪いと思った」けれど…五感で性教育を学ぶ授業、中高生97%が「学校で必要な学習」と回答
滋賀県長浜市のびわこんPJは12月1日、中高生を対象に実施した「令和の性教育アンケート」の結果を発表しました。オリジナル教材を用いて性感染症予防、避妊、人間関係やコミュニケーション、性的同意などについて学んだ生徒2,551名の声をまとめた「びわこんレポート2023」の一部を紹介します。
「びわこんどーむプロジェクト(びわこんPJ)」
滋賀県立高校の元教員が、日本の高校生たちに自主練習用のコンドームと取扱説明書がセットになった教材「びわこんどーむ」を通じて "自分を守る方法" と"性について考えるきっかけ"を届けるためにはじめた「滋賀発!全国1万人の中高生に『びわこんどーむ』を届ける学校プロジェクト」(以下、びわこんPJ)。
びわこんPJは、中学校や高校の保健体育科や養護教諭をはじめ、思春期保健に関わる専門家たちの協力で全国に広がりました。講演会や授業では性感染症予防や避妊のためにコンドームを使用する際の失敗率や心理的障壁を減少させるだけでなく、パートナーとの関係性や性的自己決定権などについて学び合える機会も提供しています。
今回はびわこんPJを通じて、性交、性感染症予防、避妊、人間関係やコミュニケーション、性的同意などについて学んだ中学1年生~高校3年生の計2,551名に実施したアンケート調査結果を報告します。
コンドームの存在は知っているが、86%が「初めて触った」と回答
「びわこんどーむ」を使用した性教育の講演会を受けた中学1年生~高校3年生に、コンドームの「存在を知る」のは、今回が初めてであるか尋ねたところ、89.6%が「いいえ」と回答しました。
学年別にみると、中学1年生の場合、約半分(51%)がコンドームの存在をまだ知らないと回答しています。保健の教科書にコンドームが初めて掲載される中学3年生で認知度は77%に高まり、高校1年生の段階になると、95%が知っていると回答しました。認知度の向上には教科書に複数回にわたって掲載されることが効果的であることがわかりました。コンドームの存在を初めて知った生徒の声を一部紹介します。
「第一印象は気持ち悪いと思った」(中1男)
「今の社会では性的暴力をする大人がいるということを知りました」(中1男)
「性感染症とかエイズとか今回で色々なことを知った」(中1女)
「自分のために何ができるか考えさせられた」(中1女)
『びわこんどーむ』が登場する講演会や授業の終盤には、中高生がペアで一斉に手指にコンドームの装着練習をします。同性の2人組でコンドームに触る体験学習も実施。復習後の2回目の装着はスムーズになり、最後には膨らませて爪で破るなどして伸縮性や耐久性などの構造や役割を理解します。
今回の授業で、コンドームの『実物を見る』のは初めてであるか尋ねたところ、72.3%が「はい」と答えました。
「コンドームはそんな大事じゃなくていつもの悪ふざけで言ってたりしてたけど、ほんとはとても大事で大切なものだとわかりました」(中1女)
「コンドームのことは少し知っていましたが、実物で見るとやはり思っていたのと違いました。大人になるのに大事なことだと思うのでしっかり覚えておこうと思います!!」(中3女)
「周りと比べず、この先のパートナーとは素直な関係性でありたいと思いました。コンドームは初めて見たし知らないことも多かったのでこれからも正しい知識を身に付けたいと思います。ひとりの命の責任を負うことも覚悟して選択していければと思います」(中3男)
コンドームの『実物に触る』のは今回が初めてであるか聞くと、86.4%が「はい」と回答しました。高校3年生になると「初めて触った」は減り、76%になっています。
性感染症予防や避妊に効果的で、コンビニや薬局などでも入手しやすいコンドームですが、学校で学習機会がない場合には、セックスの際に自ら(または相手)がコンドームを使用すると決める時まで見る機会は訪れないことが予測できました。実際にコンドームを見た生徒はどのような感想を持ったのでしょうか。
「これがもし実際にする時に初めて見るものだったら知識がないまま始めるのは怖かったからとてもいい機会でした」(高3女)
「いい印象は受けなかった。正直に言うと気持ち悪かった。だが社会人になる前に一度、経験できて良かったと思う」(高1女)
「コンドームを初めて触ってみてこんなに濡れているのだと思いました。学校で体験できてよかった」(高2女)
学校でコンドームで装着方法を学習したことを肯定的に捉えているか尋ねたところ、92.2%が「はい」と回答しました。7.8%は肯定的ではないと回答しましたが、そのうち8割以上が高校卒業までには学校で学習するのが適当と回答しており、学習の必要性については理解していることが明らかになっています。
「実際に触ってみたり、友達と指を使って付け方の練習をすることで、新たな発見ができた」(高1女)
「HIVのこと性行為のことは対策が大切だが、人の心情、相手との関係といった気持ちの部分がコントロールできるかがさらに大切であるとわかった」(高1男)
「友達やネットの情報で、コンドームやその他のあらゆることは知っているが、まったく実感がわかず、想像でしかない部分が多かったので、実践させたり、現実感をもたせるのはとても大事だと思った」(高2男)
授業では、教材として性や人権に関する基礎知識や、自主練習用コンドーム2個(イチゴの香り付/本番使用可能)と取扱説明書が同封された『びわこんどーむ』が配布されます。
学校でコンドームが配付されたことを肯定的に捉えているか聞いてみると、全体の88.4%が「肯定的」と回答しました。「女子にも必要」という回答は、「不要」を上回る結果になっています。一方、「いいえ」と回答した人にその理由を聞くと、"家族"を気にする声が散見しています。「気まずい」「見つかると困る」「持ち帰りたくない」の声が多く挙がりました。
「学校で配られるほど大事なものだとわかった」(高1女)
「びわこんどーむをもらったことを親に伝えるときに、今日習ったことについても話をしました。初めてここまで性行為についての話をしましたが、その時間も有意義だったと思います」(高1女)
「正直貰っても困る。家に持って帰ってどうしたらいいか分からないし、もし持っているのを他の人に見られて疑われるのも嫌だ」(高1女)
教材『びわこんどーむ』のパッケージで印象に残った項目について聞きました。最も多い回答は「性的同意」で、「避妊失敗率の高さやピルとの併用効果」も多くなっています。男性の1位は「習うより 触って慣れよう コンドームのコンセプト」でした。
「セックスをするのに性的同意が一番必要なものだと思っているから」(高2女)
「自分の気持ちだけで行動せず、相手の気持を尊重して、同意したりしなかったりが大切だと思った」(中1男)
「"性的同意"と"私のカラダは私が決める"という言葉が一番印象に残りました」(高1女)
コンドームの装着方法を学習するのに適当な学年はいつだと思うか尋ねたところ、97.1%が「学校教育で必要」と答えました。中学1年生の74%が「義務教育で必要」と回答しています。回答者が低学年ほど「義務教育で必要」の回答が多い傾向にありました。
調査概要
調査対象:『びわこんどーむ』で装着方法を学んだ生徒 計2,551名(中学生602名、高校生1,949名)
調査場所:各中学校、各高校
調査場面:性教育講演会、保健の授業など
調査期間:2021/07/14~2023/07/10
調査方法:googleフォーム
出典:「びわこんレポート2023」(http://www.biwacon.com)
びわこんどーむ
http://www.biwacon.com
(マイナビ子育て編集部)