男子高校生への性教育「避妊」一辺倒ではなく「女性の健康と一生」を正しい知識として伝える意義
男子高校生が女性の健康課題について産婦人科医から学ぶ特別授業が、8月29日に東京都千代田区の私立男子校「正則学園高等学校」で行われました。
■医学的な視点で見る「女性の健康」
この特別授業は、数多くのファッション雑誌を手掛ける宝島社の「もっと話そう!Hello Femtech」プロジェクトの一環。このプロジェクトではこれまで、男子校を中心に、異性の健康課題を知る機会を提供しており、今回が4回目。
生徒会メンバーら有志生徒15人が参加した今回の特別授業では、産婦人科医の吉形玲美先生による講義が行われ、生徒たちは男女の性ホルモンの違いや、女性の初潮から閉経後までに起こる体の変化や健康問題について、ときにメモを取りながら真剣に聞いていました。
たとえば女性の月経(生理)ひとつとっても個人差が大きく、女性ホルモンの変化によって一ヶ月のうち2週間も不調になりやすい時期が続く人がいることや、酷い生理痛で市販の痛み止めが効かない人もいること、低用量ピルは避妊だけではなく様々な女性特有の疾患を予防するものであることなど、その内容は非常に専門的。
また、生徒たちのお母さん世代では更年期症状を抱える女性も少なくありません。吉形先生からは、女性ホルモンの低下と更年期症状の関係や、更年期を過ぎると血管や骨の急激な老化が始まるため、早い時期から予防することが重要など、女性の健康寿命を延ばすカギについても詳しい話がありました。
■親密な関係の女性だけでなく…「女性」へのアンコンシャスバイアス取り除く
吉形先生は今回のテーマ「女性の健康問題に向き合う」の狙いについて、「正しい知識を理解したうえでアンコンシャスバイアスを正してほしい。性別はセックス、ジェンダーは文化的社会的背景の条件が加わった性差。正しい知識を得ることで皆さんは何を感じるでしょうか」と呼びかけました。
授業後にあらためて伺うと、今回のテーマにあえて「避妊」や「性病予防」ではなく女性の一生を通した健康課題を選んだ理由は、男子生徒たちが社会に出て様々な女性と関わることを想定してのことだと吉形先生。
当たり前のことですが、男女のかかわりは、いわゆる恋愛を通じた1対1のパートナー関係だけではありません。そうでないかかわりをする相手のほうが圧倒的に多いはずです。
吉形先生は「彼らはもう高校生で、社会に出る日も近い。社会に出てから女性と共に働くことは当然ある」「社会の中で偏見を持たず、平等にものを見られるように、知識を得ておいてほしい」と狙いについて教えてくれました。
■「それは間違ってる」と言えるように
今回のプログラムについて、特別教育活動指導主任の萩原先生にも話を伺いました。
正則学園高等学校では今回に限らず様々な特別授業の機会を設けていますが、性教育に関しても「学校の保健体育の授業だけでは限度がある。専門的かつ最新の知見を産婦人科の先生から聞ける機会はあったほうがいい」と実感しているといいます。
「普段生徒たちと接する中で『危ういな』と感じることもある。『彼女ができた。昨日ああでこうで……』という会話を聞いていて『え、それ大丈夫か。傷つけてないかい』と心配に思うこともあった。高校生は年齢的にも、どうしてもやっぱり刺激的な言葉だったり、インターネット等から得た間違った情報ばかりが膨らみがち。
正しい知識を持てれば『自分がふざけて喋っていたことは、相手を傷つけることだったんだ』と自分で気づける子になると思う。大人になっても、他の誰かがおかしな話をしているときに『いや、それは間違ってる。相手を傷つけることになるよ』と言える。
将来的なことを見据えて、正しい知識をここでしっかりと持って卒業させたい」(萩原先生)
質疑応答の場面では、講義を受けた生徒たちからは「生理でしんどいときにしてほしいのはどういうことなのか」「女性は体を温めるといいと聞いたけど本当か」「インターネットで情報を探す際、間違った情報も多いと感じる。見分け方は」など様々な質問が出ました。
2年生の男子生徒に感想を聞くと、「母は50歳でちょうど更年期世代。自分は今まで更年期だとか意識したことがなかったけれど、もしかしたらつらい症状があって隠していることもあるかも。帰ったら話してみようかなっていう気持ちになりました」と前向きに話してくれました。
(マイナビ子育て編集部)