
【医師監修】おんぶはいつから? 脳への刺激や触れ合いとの関係、デメリット
生まれて間もないころは抱っこしかできなかった赤ちゃんも、成長するにつれておんぶでも大丈夫になります。おんぶを始めるならいつごろからがいいのでしょうか? ここでは、おんぶができるようになる時期や、おんぶのメリット・デメリットなどを説明します。
おんぶは平安時代から人気
日本人は昔から、よくおんぶをしていたそうです。
平安末期の「信貴山縁起絵巻」や鎌倉時代の「長谷雄卿草紙」「春日権現験記絵」、室町初期「福富草紙」などにも、赤ちゃんをおんぶしている人の姿が描かれています。
おんぶはそのままでも家事や労働がしやすいので、庶民にとってはおなじみの子守の方法でした。さらに最近では、育児の面でもメリットがあることがわかっています。
おんぶのメリット


おんぶのメリットの中でも、代表的なものを紹介します。
赤ちゃんが安心できる
おんぶをされると、肌と肌が触れ合うことで赤ちゃんは安心します。
また、おんぶしてくれている人が今何をやっているのか・何が起きているかを知ることができることも、赤ちゃんにとっての喜びや安心感につながります。
親子で同じ目線になれる


おんぶをすると、大人と赤ちゃんの頭の高さがほぼ同じになるため、同じ目線で一緒に見ることができるようになり、自分のまわりの世界により幅広く触れていくことができます。床やベビーベッドの上にいるよりも視界が広がるので、赤ちゃんは退屈しにくくなるでしょう。
赤ちゃんの脳への刺激になる
「他者との共感性や社会性」を育む役割のある神経細胞をミラーニューロンといい、ほかの人の心の理解、言葉のめばえ、共感などとの関わりがあるとされています。
赤ちゃんはおんぶをされて大人と同じ目線でまわりを見ることで、このミラーニューロンの働きを促されるといわれています。
ただし、低い位置でおんぶをされていると、赤ちゃんはまわりを見まわしにくくなります。脳への刺激を考えるのであれば、赤ちゃんが大人の肩越しにまわりを見られるように、目線の位置を考えながらおんぶをするのがおすすめです。お散歩などの際におんぶをしてあげるのもいいでしょう。
大人の前面・両手が空く


おんぶは抱っこと違い、赤ちゃんを連れていても前や足元が見えやすく、両手が空きます。そのため、自由に家事や作業をしやすくなるというメリットがあります。
災害などで非難するときも抱っこよりもすばやく安全に動けるので、普段からおんぶをして慣れておくと安心ですね。
おんぶのデメリット
おんぶにはメリットだけでなく、デメリットもあります。注意点とともにチェックしておきましょう。
赤ちゃんが見えない


おんぶでは大人の背面に赤ちゃんがいることになるので、様子を認識しづらくなります。
外出中や狭い場所にいるときには、物やほかの人などにぶつからないように注意をしましょう。特にハサミなどの危ないものが置いてあるところでは、絶対におんぶはやめましょう。
落下事故に注意!
おんぶ中だけでなく、上げ下ろしの際に赤ちゃんを落としてしまう事故がしばしば起こっています。おんぶで背負うときや赤ちゃんを下ろすときには、必ず低い姿勢になりましょう。
また、赤ちゃんをおんぶ紐から落とさないために、前もって必ず取扱説明書をよく読んでおき、正しく安全に使うことが大切です。
大人の体に負担がかかることも


女性がおんぶするときにおんぶ紐を前でクロスさせていると、胸のふくらみが強調されやすく、抵抗感を感じることもあるようです。また、授乳中の場合、おんぶ紐で胸を長時間圧迫してしまうと乳腺炎を引き起こすリスクがあります。
さらに、男女ともに長時間おんぶをしていると、肩や腰に負担がかかって凝ってしまったり傷めることもあります。
おんぶ中に痛みやつらさを感じたら、我慢しないことが大切。抱っこやベビーカーなどに切り替えて、体をいたわりましょう。
おんぶはいつから大丈夫?
色々なメリットがあるおんぶですが、体が未熟な新生児のうちはまだできません。おんぶができるようになる時期について考えてみましょう。
首がすわってからが安心


赤ちゃんは体に対して頭が大きく、首まわりの筋肉が未発達です。そのため、頭がグラつきやすいので、抱っこしていて不安に感じたことがある人もたくさんいるのではないでしょうか。
縦抱っことおんぶの姿勢がどんなふうに赤ちゃんに影響するか、はっきりしたことはわかっていません。おんぶ紐の対象月齢もメーカーによってまちまちで、中には生後4ヶ月ごろからと早い時期からおんぶできるサポートつきのおんぶ紐もあります。
ただ、長時間おんぶをするのであれば、その間ずっと赤ちゃんの頭がグラつくことなく、安定した姿勢でいられる方が安心です。短時間であれば対象月齢を過ぎてからガードつきの安全なおんぶ紐を使い、長時間おんぶをするのなら首がすわってお座りもできるようになってからがいいでしょう。
首がすわってお座りできる時期って?
生後3ヶ月の終わりになると、90%の赤ちゃんの首がすわると言われています。
また、90%の赤ちゃんが支えなくても5秒以上自力で座っていられるようになるのは、生後8ヶ月と言われています[*1]。
ただし、赤ちゃんの発達のスピードには個人差があるものです。赤ちゃんの様子をよく見て、首のすわり具合やお座りができるかどうかを考えた上でおんぶをするようにしたいですね。
おんぶ紐の種類


代表的なおんぶ紐としては、クロス式とリュック式の2つがあります。
それぞれの特徴を紹介します。
クロス式
昔ながらのおんぶ紐です。
上の紐は赤ちゃんの脇の下に通し、下の紐の穴からは赤ちゃんの足を出します。脇の下に通した紐を大人の上半身の前側でクロスさせて、下の紐についているリングに通してから前で結びます。
布と紐でできているので、コンパクトで軽く携帯しやすいのが特長です。赤ちゃんと密着しておんぶができますが、女性が使うとクロスした紐で胸が強調されやすいとの声もあります。
リュック式


最近人気が高いおんぶ紐で、腰や肩への負担が軽減するよう開発されている製品もあります。クロス式に比べて赤ちゃんとの密着度は低めですが、おんぶだけでなく対面抱っこや腰抱きなど、複数の使い方ができるものが多いのが特長です。
まとめ


おんぶは平安時代から子育てに役立ってきました。ただし、おんぶをすると赤ちゃんの首がグラつきやすくなるので、短時間のおんぶであれば赤ちゃんがしっかりと首がすわるころから、長時間であればお座りができて首だけでなく腰もしっかりしてくるころからにしましょう。
最近は、おんぶが赤ちゃんへの脳に良い影響を与えると注目されており、両手が空くので家事などをしやすくなる点も人気です。
その半面、おんぶ中や上げ下ろしのときに落下することがあったり、おんぶする大人の肩や腰に負担がかかることもあります。赤ちゃんも大人も安全に過ごせるように、気をつけながら便利に使っていきたいですね。
(文:大崎典子/監修:梁尚弘先生)
※画像はイメージです
人気のおんぶ・抱っこ紐



[*1]「デンバー発達判定法 DENVERⅡ」W.K.Frankenburg.M.D,2005 社団法人日本小児保健協会 日本小児医事出版社
※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました
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