
【医師監修】溶連菌はいつから保育園に行ける? 登園再開の目安
溶連菌感染症は集団生活を送っている年齢の子供がかかりやすい病気です。高熱が出たり、とびひを引き起こしたりと症状はさまざま。そんな溶連菌感染症にかかったあと、登園できるようなるのはいつごろなのでしょうか?溶連菌感染症と登園再開の目安について解説します。
溶連菌ってどんな病気?


溶連菌は、正式には「A群溶血性レンサ球菌」といいます。この細菌に感染してかかる病気の総称を溶連菌感染症と呼んでいますが、一般には病名として「溶連菌」と呼ばれることも多いようです。
溶連菌感染症とは?
一般に「溶連菌」と言われている「A群溶血性レンサ球菌」は、咽頭炎や扁桃炎や、とびひ(伝染性膿痂疹)を起こす細菌です。溶連菌に感染してかかるのが「溶連菌感染症」で、他の人にもうつります。
溶連菌感染症はどの年齢でもかかりますが、最も多いのは4~15歳[*1]の子供です。3歳以下の乳幼児や大人がかかることは少ないと言われています。
流行するのは冬と春から初夏にかけてで、年2回のピークがあるのが特徴です。
溶連菌感染症の感染経路や潜伏期間は?
感染経路は、咽頭炎や扁桃炎の場合は、おもに唾液や鼻水などからの飛沫感染です。患者と直接接触することでもうつるため、家庭内や学校などで感染が拡がりやすいです。
なお、健康な子供の15〜30%[*2]は、無症状でのどに溶連菌を保菌していると言われています。ただし、症状が出ていない場合は、ほかの人にうつすことはほぼないとされています。
潜伏期間は、咽頭炎や扁桃炎の場合は2~5日、とびひの場合は7~10日[*2]です。
溶連菌感染症のおもな症状は?


全身に症状が出る場合
溶連菌感染症にかかると、突然、のどが痛くなり、38℃[*1]以上の熱が出て、頭痛も伴います。のどは赤く腫れ、扁桃に膿が見られることもあります。また、舌にいちごのような赤いブツブツができる苺舌などの症状が見られます。熱は3~5日くらい続き、症状がおさまるまで1週間ほどかかります[*3]。
のどの症状に加えて、典型的な発疹が見られる状態になると「猩紅熱」とも呼ばれます。この場合、はじめはうす赤色の点状だった発疹が、だんだん拡がっていきます。
また、溶連菌感染症では嘔吐や下痢といった軽度の胃腸炎症状を認めることもあります。
とびひなど皮膚に症状が出る場合
また、あせもや虫刺され、湿疹などで皮膚の表面にできた傷に溶連菌が感染すると、「とびひ(伝染性膿痂疹。でんせんせいのうかしん)」を発症することもあります。とびひになると、鼻のまわりや身体に水ぶくれやびらん、かさぶたができます。
水ぶくれなどの患部には溶連菌が含まれているので、かいたりした手でほかの部位をさわるとそこがまた感染を起こし、体中に拡がっていきます。また、保育園や幼稚園、小学校などではとびひになっている子がいると、その子に接触することで集団感染を起こすこともあります。
さらに、首のくびれた部分やわきの下、ひじの内側、ひざの裏側など、曲げたりしたときに皮膚の表面同士がこすれ合う部位(間擦部位)に溶連菌が感染すると、「溶連菌性間擦疹」を起こすこともあります。これは、咽頭炎や扁桃炎、とびひと違って乳幼児に多く、熱が出ることはほとんどありませんが、患部が真っ赤になったりただれたりします。
溶連菌にかかったら、いつから保育園へ登園できる?


溶連菌感染症はほかの人にうつす恐れがあるため、登園再開の目安はだいたい決められています。
溶連菌感染症の治療は?
全身症状の場合
溶連菌は細菌のため、適切な抗菌薬による治療が有効です。抗菌薬を服用すると、たいてい1~2日[*4]で症状は改善されます。ただ、症状が治まってきたからといって、自己判断で薬をやめてはいけません。再発したり、腎炎やリウマチ熱などの合併症を予防するためにも、薬は指定通りの回数、期間を守って飲み続けることがとても大切です。
とびひの場合
とびひの場合は、抗菌薬などの塗り薬を塗ってそのうえをガーゼで覆います。症状が軽い場合は塗り薬だけで済みますが、通常は抗菌薬の内服薬も併用します。かゆみが強い場合は、抗ヒスタミン薬の内服薬が処方されることもあります。
感染後の登園再開目安は?


全身症状の場合
溶連菌感染症は、適切な抗菌薬による治療を始めて24時間以内に感染力はなくなると言われており、それ以降は登園・登校可能とされています[*5]。
厚生労働省の「保育所における感染症対策ガイドライン」では、溶連菌感染症は「医師の診断を受け、保護者が登園届を記入することが考えられる感染症」とされ、抗菌薬の内服後24~48時間[*2]たっていれば登園OKとなっています。
とびひの場合
とびひの場合もほかの子にうつす可能性がありますが、受診をして医師に薬を処方してもらい、症状の出ている箇所をガーゼや包帯で覆っていれば、基本的に登園しても問題ないとされています。ただし、症状がひどい場合は休んだほうが良いとされています[*6]。
いずれにしても、登園する際に登園許可証などが必要かどうかは、前もって保育園に確認しておきましょう。
まとめ


咽頭炎やとびひなどを起こす溶連菌感染症は、保育園や幼稚園、学校などで集団生活を送っている年齢の子供に多い病気です。細菌が原因のため、抗菌薬による治療で治りますが、他の人にうつる病気なのである程度配慮が必要です。
感染した場合はまず保育園に連絡し、治ったあといつ登園を再開していいかは、かかりつけの小児医の指示に従ってくださいね。
(文:村田弥生/監修:梁尚弘 先生)
※画像はイメージです
[*1]小児科臨床ピクシス25小児感染症_レンサ球菌感染症
[*2]厚生労働省「保育所における感染症対策ガイドライン(2018年改訂版)」
[*3] 東京都感染症情報センター「A群溶血性レンサ球菌咽頭炎」
[*4] 練馬区医師会「溶連菌感染症ってなに?」
[*5] 日本小児科学会 「学校、幼稚園、保育所において予防すべき感染症の解説」P21
[*6]日本皮膚科学会:皮膚科Q&A Q18幼稚園・保育園、学校は行ってもいいですか?
※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました
※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます