
妊婦の外食、食事の選び方と注意点! 塩分控えめにするには?オススメメニューは?【管理栄養士監修】
栄養バランスに気を配りたい妊娠中。妊娠してから外食を控えるようになった人もいますよね。でも、たまにはお店で食事をしたくなるのは当然のこと。そんな時、妊婦さんが気を付けたいポイントと妊娠中の外食でのメニュー選びのコツを紹介します。
妊婦だって外食したい!外食で注意すべきポイントは?

自炊やお取り寄せなど、家で食べる食事だってもちろんおいしいものですが、たまには外食したくなることもありますよね。そんな時、妊婦さんが気を付けておきたい、メニューを選ぶ時のポイントをまず紹介します。
塩分
塩分(食塩)はカリウムとともに体内の水分バランスを調節するほか、血液や筋肉、神経をあるべき状態に保ったり、消化液の材料になる、栄養素を体中に運ぶのに役立つなど、生きていくうえでなくてはならないミネラルです。
ところが、塩分を過剰摂取すると、むくみなどのリスクを高める性質があります。妊娠中はもともと、ホルモンバランスの影響などでむくみやすい傾向にあるため、塩分の摂りすぎには注意が必要です 。
妊娠中も妊娠していない時同様、塩分は1日あたり食塩6.5g未満に抑えることが目標とされています[*1] 。1日で6.5g未満というと、1食あたりに摂取できる塩分は2g程度。
ただ、自炊と比較すると外食は塩分量が多くなる傾向があり、メニューによってはこの量を軽々超え、1食で1日の摂取目標量に迫る塩分を含む料理もあります。
外食の際は、
・麺類のスープは全部飲まない
・漬物は食べないようにする
・ソースなどの調味料はできるだけ控え、付ける時は直接かけず、小皿などにとって付けて食べる
・調味料の代わりに塩分を含まない薬味や香辛料を活用する
などの工夫で、塩分の過剰摂取を防ぎましょう 。
カロリー

妊娠中は非妊娠時よりも多めにエネルギーを摂取する必要がありますが、よく言われる「2人分食べなきゃ」は間違いです。
妊娠していない女性の1日あたりのエネルギー必要量は、活動量にもよりますが、だいたい2,000~2,050kcalといわれています(18~49歳女性/身体活動レベル=ふつうの場合)[*2]。妊娠中は、これに妊娠初期で+50kcal、中期で+250kcal、後期で+450kcalを付加するのが推奨されています。なお、50kcalというとバナナ(中)1/2本分 、250kcalはごはん約1膳分、450kcalはごはん2膳弱ほどです。意外に少ないですね。
ただ、最近は摂取エネルギーの少なすぎる妊婦さんが多いと言われ、やせすぎによる赤ちゃんと妊婦さんへの悪影響が心配されています。摂取エネルギーは減らしすぎるのも良くありません。
外食は、メニューの選び方によってはかなりハイカロリーになることがありますが、1回の食事でエネルギーを摂りすぎたからといって心配する必要はありません。その場合は1日のなかで他の食事を控えめにしたり、1週間単位で調節しても良いでしょう。摂りすぎと同時に摂らなさすぎにも気を付けて、適度な量のエネルギーを摂取するようにしましょう。
栄養バランス
食事のバランスをわかりやすく示している「食事バランスガイド」では、食事の内容を主食、副菜、主菜、牛乳・乳製品、果物の5つのグループに分け、それぞれを組み合わせてとることを推奨しています 。
ただ、外食でよくあるラーメンや牛丼などの単品メニューや、ハンバーガーとポテトフライの組み合わせなどでは、主食、主菜のみに偏りがち。こういったメニューを食べる際は、野菜、いも、豆類(大豆を除く)、きのこ、海藻などを主材料とする「副菜」(野菜サラダや酢の物、おひたし、煮物など)や「牛乳・乳製品」「果物」の追加を意識するようにしましょう。
生もの
妊婦さんは一般の人よりも食中毒のリスクが高くなることがあり、食べる前に十分加熱されていない食品は避けたほうが無難です。
例えば生の魚介類にはアニサキスなどの寄生虫や腸炎ビブリオなどの細菌が潜んでいることがあり、これらによる食中毒の危険があります。また、生ハムやスモークサーモンなどの「非加熱で製造され、加熱せずに食べる物」では、リステリア菌のリスクが高まります。ローストビーフのような、加熱が不十分なものも、妊娠中は同様に要注意です 。
特にリステリア菌については、妊娠中は非妊娠時より感染しやすく、感染によって赤ちゃんに健康上の影響がでる可能性があります 。したがって、上記で紹介したような食品を食べるのは、妊娠中はなるべく避けたほうがよいでしょう。ただ、「食べたら必ず食中毒になる」というわけではないので、妊娠中うっかり口にしてしまった場合でも、次から控えるようにしましょう。
妊婦が外食する際の食事の選び方のポイント
塩分の過剰摂取や生ものNGなど、注意すべき点が多い妊娠中の食事。妊婦さんが外食する際は、どんなメニューを選ぶのがよいのでしょうか。
単品よりも栄養バランスがとれる定食がオススメ

ごはん、メインのおかず、小鉢、みそ汁が組み合わされている定食は、食事バランスガイドが推奨する食事の内容に近く、栄養のバランスが比較的とれている場合が多いでしょう。
主食の割合が多くなる丼ぶり、ラーメン、うどん、そばなどの単品メニューより、主食、副菜、主菜が組み合わされた定食メニューを選ぶのがおすすめです。
刺激が強い料理や脂っこい料理は避けて

妊娠中は妊娠前と同じように食事をとっていても、ホルモンバランスの変化や子宮によって消化器が圧迫されることなどにより消化機能が落ちていることから、胃がもたれたり胃痛が起こったりしやすくなる傾向があります 。
胃の粘膜を刺激する香辛料が多く入った料理や酸味の強い料理などは、妊娠中は食べすぎに要注意。もともと刺激の強い料理が得意ではない妊婦さんは、 避けたほうが無難かもしれません。
脂っこい料理は逆流性食道炎にも良くない
また妊娠中は、胃酸が逆流して食道が炎症を起こす逆流性食道炎などの「胃食道逆流症」にもなりやすいといわれています。妊娠によって女性ホルモンが多く分泌され、胃と食道のさかいめにある「下部食道括約筋(かぶしょくどうかつやくきん)」の締まりが悪くなることが主な原因 です。
胃食道逆流症では、食事面で避けたほうがよいこととして、食べすぎ、寝る前の食事の次に、高脂肪食、つまり脂っこい食事があげられています (他に、甘いものやコーヒー、炭酸飲料、柑橘類なども避けたほうが良いとされています)。脂質の多い食事は、消化の面でも良くないため、できるだけ控えることをおすすめします。
和食は塩分に注意

煮たり、ゆでたり、蒸したり、調理に油を使う機会が比較的少なく、ヘルシーなイメージのある和食ですが、実は意外と塩分が多いことを知っていますか。
付け合わせとして出されることの多い漬物や和食に欠かせないみそ汁などには、塩分が多く含まれています。むくみが気になる人は漬物を残す、みそ汁の汁は飲まないなどの工夫をして、塩分の摂取量減を心掛けましょう 。
妊娠中の外食はお店選びにも気を使おう
妊娠中の外食時は、食事面以外でも気を付けておくとよいポイントがあります。いくつか紹介しましょう。
妊婦は全席禁煙のお店がオススメ

妊娠中は、タバコのリスクが気になるという人も多いでしょう。タバコは、立ち昇る煙や喫煙者が吐き出す煙にも多くの有害物質が含まれるため、喫煙者本人だけでなく、周りの人にも受動喫煙によるタバコの影響が広がる可能性があります。
妊婦さんの場合は、本人やその周囲の人の喫煙によって低出生体重児や早産のリスクが上昇する可能性があることが報告されています 。妊娠中に外食をする時は、こうしたリスクを避けるため、店内が全面禁煙になっているお店を選ぶのがおすすめです。
お腹が大きくなってきたらゆったり座れる店がラク
お腹が大きくなる妊娠中期の後半~後期にはソファ席など、ゆったりと座れる座席のほうがラクに過ごせるでしょう。ただ、ソファも座面の高さなどによっては立ったり座ったりの際、かえって腰などに負担がかかることも。自分に合った座席のあるお店をチェックしておいて。
せっかくの外食ですから、できるだけ落ち着いて、安心して過ごせるようなお店選びをしておきたいですね。
妊娠中の外食に関するよくある疑問

そのほか、妊娠中の外食の気になる疑問にまとめてお答えします。
妊娠中の外食はいつからいつまで大丈夫?初期、臨月は?
妊娠中、外食をしていい時期などに特に決まりはありません。
ただし、くれぐれも無理は禁物です。初期はつわりなどの影響で、外出がつらいこともあるでしょう。出産予定日が近付いてからも外食をすることは構いませんが、妊娠中はいつ体調の変化があるかわからないため、なるべく遠出は控えましょう。また繰り返しになりますが、食中毒にはくれぐれも要注意です 。
妊娠中の外食の頻度は?毎日外食でも大丈夫?
体調に問題がなければ毎日外食しても問題はないでしょう。
妊娠中の外食で気になるのは、頻度よりも食事の内容のほうです。外食でも栄養のバランスが取れるのであれば、まったく問題はありません。一方、自宅で食べる場合でも、食事内容に偏りがあれば調整が必要です。「どこで食べるか」よりも「何を食べるか」を重視して、不足していそうなものは随時補えるとよいですね。
まとめ

いろいろな要因により、外食の機会が減りがちな昨今ですが、家以外で食事をするのは気分転換や楽しみになることも多いものです。栄養バランスと体調に気を付けて、妊娠中も外食を楽しんでいきましょう。
(文:山本尚恵/監修:川口由美子 先生)
※画像はイメージです
※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます