
妊婦の食事にラーメンはあり?注意点とおすすめの食べ方【管理栄養士監修】
ラーメンが好きで、妊娠中も食べたいという妊婦さんも多いと思います。でも、塩分もカロリーも高めのラーメン。妊婦さんが食べる際、何か気を付けたほうが良いポイントはあるのでしょうか? 妊娠中のラーメンについて、食べる際の注意点とおすすめの食べ方などをまとめました。
妊婦は特に意識したい、ラーメンの落とし穴
妊婦さんはラーメン禁止、というわけではもちろんありません。でも、いつも以上に食事のバランスには気を付けたい妊娠中。ラーメンにどんな成分がどれくらい含まれているのかを知って食べることは大切です。
塩分

妊娠中は、ホルモンバランスが大きく変化することなどが原因で、むくみやすくなります。実際に、妊婦さんの約60%が指や脚などのむくみを経験しているというデータもあります[*1]。
妊娠すると、体内の水分を保持する働きのあるホルモンの分泌量が増えるため、手の指などがむくむ人も多いものです。また、妊娠後期には子宮が大きくなり、脚から心臓へ戻る血流が圧迫されるため、特に脚がむくみやすくなります。こういった妊娠中のむくみは「生理的浮腫」と呼ばれ、たいていは問題ないものです。でも、時にはラーメンなど食事の塩分が原因でむくみやすくなることもあります。
厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)妊婦・授乳婦」によると、妊婦さんの1日あたりの食塩摂取目標量は非妊娠時同様、6.5g未満[*2]。1食あたり食塩で2g程度にし、1食2g×3回+0.5gで1日6.5gの目標量以内におさえられると理想的です。
ところが、ラーメンは塩分の多い食品で、種類やお店にもよりますがラーメン1杯に含まれる塩分は6g前後、場合によっては7g以上のこともあります[*3]。
ラーメン1杯を汁まで完食すると、1日分の塩分量を超えてしまうこともあるわけです。ラーメンを食べるときは、 汁はなるべく飲まないようにしできるだけ残す、などの工夫が必要です。
カロリー

ラーメンは、塩分だけでなくカロリーが高めになりやすい食品でもあります。ラーメンの種類やトッピングによってさまざまですが、1杯のカロリーは低めのものでは約400kcal台のこともある一方[*4]、外食のラーメンでは一杯1,000kcal前後のことも。
厚生労働省の食事摂取基準を見ると、18〜49歳の女性が必要とするエネルギー量は1日2,000〜2,050kcalです。妊婦さんの場合はこれに、妊娠初期で+50kcal、中期で+250kcal、後期で+450kcalが必要なエネルギー量です [*4]。
1食にラーメン1杯食べるだけで、即カロリーオーバーになるというわけではありません。でも、ラーメンにプラスして餃子をつけたりチャーハンを食べたりすると、摂取カロリーも当然多くなってしまいます。
最近では摂取エネルギーの少なすぎる妊婦さんが多いと言われており、赤ちゃんと妊婦さんへの悪影響が心配されていますが、ラーメンばかり食べてカロリーなどの摂り過ぎになるのも体によくありません。いろいろな食品をバランスよく食べるようにしましょう。
栄養バランスの偏り
妊娠中の食事は、特に栄養バランスがとても大切です。食事は、主食、主菜、副菜、牛乳・乳製品、果物などをうまく組み合わせてバランスよく食べるよう心がけましょう。
ラーメンは単品で1食を済ませることも多く、具やトッピングの種類や量も限られてしまうので、どうしても栄養が偏りがちです。ラーメンを食べたときには、ほかの食事で野菜や肉・魚を意識して食べ、不足した栄養素をカバーするといいですね。
妊娠中のラーメンのおすすめの食べ方
妊娠中にラーメンを楽しむなら、具やトッピングを工夫したり、食べる頻度をよく考えたりすると良いでしょう。
野菜や卵をトッピングする

インスタントラーメンを家で調理して食べるときには、いろいろな具やトッピングを追加するといいですね。普段、主菜で摂るべきタンパク質を肉や魚、卵で、副菜で摂るべきビタミン・ミネラル類などを野菜や海苔などの海藻類を入れたりトッピングしたりすることで補いましょう。
また、ラーメンを食べた後にヨーグルトやバナナなど、乳製品や果物類をデザートとして食べるのもおすすめです。
スープは薄め・少なめにする
ラーメンの塩分のほとんどはスープに含まれているので、妊娠中はとくにできるだけ汁を飲まないようにしましょう。麺類の汁を飲まないようにすることで、1.6~4gの減塩効果があったとする報告もあります[*5]。
汁を飲まなければ摂取カロリーも抑えることができますから、妊娠中のラーメンはできるだけ麺と具やトッピングを楽しみ、汁は控えめにしておきましょう。
週1~2回程度の適度な頻度で
妊娠中にラーメンを食べるなら、週に1~2回くらいまでがおすすめです。そしてラーメンを食べた日は、他の食事の塩分を抑えめにしたり、炭水化物と脂質以外の栄養素を補うと良いでしょう。
こんなラーメンは要注意

塩分もカロリーも高いラーメンだけに、選ぶ種類や食べる時間には注意しましょう。
深夜に食べる夜食ラーメン
ラーメンは夜中に無性に食べたくなることもありますが、深夜の夜食ラーメンは妊婦さんの体にデメリットが多いのでお勧めしません。
食事をすると、食べ物に含まれる塩分によって血液中の水分量が増します。夜遅くに何かを食べた後はあまり体を動かさないことが多いので、増えた水分がうまく排出されず、皮下にしみ出してむくみやすくなってしまいます。
また、夜遅くに食べると摂ったエネルギーが消費されにくく、余分なエネルギーが体脂肪として蓄積されやすくなります。最近の遺伝子レベルの研究からも、夜遅くに何かを食べると太りやすいことがわかっています。
さらに、夜食を摂り過ぎると翌朝になってもおなかが空かず朝食をしっかり食べられなくなり、生活リズムの乱れにもつながります。ラーメンを食べるなら、その後体を動かす日中のほうがお勧めです。
背脂たっぷりのこってり系ラーメン

油の多いラーメンでは、妊婦さんの胃腸への負担が少し気になります。妊娠するとホルモンの影響で胃腸の働きが低下したり、つわりや妊娠中のストレスなども消化機能に影響するので、
妊娠前と同じような食事を摂っていても、胃がもたれたり胃が痛くなったりしやすいからです。
また、妊娠中はホルモン分泌の変化により、胃酸が逆流して食道が炎症を起こす「胃食道逆流症」にもともとなりやすいのですが、脂肪分の多いものを食べることでも起こりやすいと言われています。こうした面からも、妊婦さんは油分が多く高カロリーなラーメンは、食べ過ぎないように注意してくださいね。
香辛料たっぷりの激辛系ラーメン
妊婦さんにとっては、香辛料をたっぷり使った激辛系ラーメンも人によっては注意が必要かもしれません 。辛いラーメンによく使われる唐辛子は、一度にたくさん食べると胃粘膜を傷つけてしまうことがあります。
前述したように、妊娠中は胃腸のマイナートラブルも多くなりがちなので、辛い物が好きな妊婦さんも激辛系のラーメンは食べ過ぎないように注意してくださいね。
まとめ

妊娠中は、あれこれ我慢しなければいけないことも多いものです。特に食事は、お母さんの体重のことや胎児への影響を考えて、食べたいものも我慢している、という妊婦さんも多いでしょう。
ラーメンが好きなのに控えている、という妊婦さんもいるかもしれませんが、塩分やカロリーの摂り過ぎに注意し、ラーメンだけでは不足する栄養素を補っているのなら妊娠中に食べてもまったく問題ありません。自宅で作るなら、卵やたっぷりの野菜、海藻類を入れたりトッピングしたりして、栄養バランスの取れたオリジナルのラーメンを楽しむのもいいですね。
(文:村田弥生/監修:川口由美子 先生)
※画像はイメージです
[*1]「プリンシプル産科婦人科学第3版2産科編」(メディカルトリビューン社)p.206
[*2] 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)妊婦・授乳婦」p.379
[*3]香川明夫:外食・コンビニ・惣菜のカロリーガイド、女子栄養大学出版部,2019
[*4]厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)妊婦・授乳婦」
[*5]東海公衆衛生雑誌 第 6 巻第 1 号 2018 年「 麺料理摂取時における意識的に汁を飲まない場合の汁および汁からの食塩摂取量」
※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます