産休・育休中は住宅ローンが組めない!? 注意すべき点と今すぐできる対応策とは? #子育て世代の幸せおうち計画 Vol.3
産後に家が手狭になったとき、子どもが入園・入学するときなど、「ウチもそろそろ家を買ったほうがいい?」と思ったときが、住宅購入を検討する始めどき! 子育て世代が住宅を購入する際に考えておくべきことを、いろいろなプロに教えてもらいます。第3回目もエフピーウーマン公認ライターの續さんに、お金のことについて教えてもらいました。
妊娠して家族が増えることがわかったときや、子どもが産まれて今の住居が手狭に感じるようになったときに住宅購入を検討する人も少なくないようです。共働き夫婦では、2人で返済するペアローンや、2人分の収入を合わせて借入れ審査を受ける収入合算を利用する人も多いですが、産休や育休中はこれらの方法で住宅ローンを組むのが難しい場合があります。今回は、産休や育休中のローン申込みが難しい理由を説明するとともに、今すぐできる対策法を紹介していきます。
産休・育休中に住宅ローンを組めないのはなぜ?
住宅ローンは一般的に20年~30年という長い期間にわたって返済していくものです。ローンを申し込む側も慎重な返済計画が必要ですが、お金を貸す側の金融機関も問題なく返済してくれるか慎重な審査が必要です。
金融機関にとって、最も重要なポイントは「数十年にわたってきちんと返済できるかどうか」です。しかし産休や育休中は、この「返済できるかどうか」という点で不確実と考えられる要素がいくつかあり、一般的にローンを組むのが難しいと言われています。
そこで、どのようなポイントで返済が不確実と考えられるのかについて見ていきましょう。
産休・育休後に職場復帰するかどうか確実でない
基本的に産休や育休は職場復帰することを前提として、一定期間、仕事を休業できる制度です。しかし、本人の意思とは関係なく、予定通りに復帰できなくなる可能性もあります。たとえば出産後の心身の調子がなかなか回復しない人もいますし、保育施設の空きがなくて復帰できない場合もあります。また、子どもと一緒に過ごしているうちにしばらくは育児に専念したくなり、一旦離職してしまう人もいます。
育休制度を利用しながら就業を継続する人は増えてきているのも確かですが、内閣府の調べ[*1]によると、第1子出産を機に離職する女性の割合は46.9%と半数近くにのぼります。また、明治安田生活福祉研究所の調べ[*2]によると、仕事を辞めた理由としては、「仕事と育児の両立が大変である」ことや、「育児に専念したい」というのが主な理由のようです。
このような事実があると、育休後には復帰をすると言ってはいても、実際にはどうなるかわからないと思われても仕方ないのかもしれません。辞めてしまえば収入がなくなりますからお金を貸す側にとってはリスクが大きくなってしまいます。
産休・育休中に収入が減る
産休中は出産手当金として給料の約67%、育休中は育児休業給付金として最初の6ヶ月間は給料の約67%、6ヶ月経過後は約50%が支給されます。
また、社会保険料が免除され、手取り収入で考えれば休業前の概ね8割(最初の6ヶ月)の収入は得られることになります。
実際には個々の収入等によって審査の判断も異なりますが、休業前よりも月収が減ることは、一般的には、住宅ローンを組む上でマイナス要素となり得ます。
団信に加入できない可能性がある
団体信用生命保険(団信)とは、ローン返済期間中に万一のことがあると、保険金によってローンの残債が支払われるという保険です。一般的に金融機関は住宅ローンの借入れに団信への加入を条件としています。
団信もあくまで生命保険ですから、加入時には健康状態に関する告知が必要です。妊娠は病気ではないとはいえ、妊娠検査を受けていることも申告する必要がありますから、検査結果など申告した内容によっては加入を引き受けてもらえない場合もあります。義務とされている団信に加入できなければ住宅ローンも契約できなくなってしまいます。
産休・育休中の人ができる対策はある?
では、現在、産休や育休に入っている人は住宅ローンを申込みできないのでしょうか。育休期間が終わって職場復帰するのを待つというのもひとつの方法ですが、希望の物件を逃したり、物件価格や金利が上昇してローン返済がより困難になったりする可能性もあります。ここでは、産休・育休中の人が住宅を購入したいときにできる対策をいくつか紹介します。
産休・育休中にも借りられる銀行を選ぶ
住宅ローンの申込み条件や審査基準は、金融機関によって異なります。一般的に産休・育休中は住宅ローンを組むのが難しいとはいえ、産休・育休中でも申込み(収入合算)できる銀行や、逆に育休中の人に対して元金返済を据置するなど、優遇制度を設けている金融機関もあります。
たとえば、「復職後の(見込)年収が○○万円以上(収入合算者の場合は△△万円以上)」というように具体的に基準を設けている金融機関もありますので確認してみましょう。この場合、復職証明書や復職後の見込年収証明書を提出することが必要ですので会社に発行してもらいましょう。
夫単独でローンを組む(1人の収入で返済できる物件を選ぶ)
産休・育休中に住宅ローンを申し込めなかったり、収入合算を認めてくれる金融機関が身近になかったりする場合には、夫が単独でローンの申込みをするのもいいでしょう。通常、夫が単独で住宅ローンを組む場合には、妻の産休や育休が住宅ローンに影響を与えることはほとんどありませんし、団信に加入できなくなる心配もないでしょう。
収入合算する場合に比べると借入れできる金額は少なくなりますが、単独でもローンを組める物件を選ぶのもひとつの方法です。
産休・育休前にしておくべき対策は?
近い将来、子どもを持つことを考えている人も、ローン申込み時やローン返済期間中に産休・育休に入る可能性を考えて、事前に対策をしておきましょう。
頭金をしっかり貯めておく
住宅ローンは借入額と収入のバランスによって審査に通るかどうかが分かれるものです。一般的に収入に対して借入額が大きくなるほど審査は難しくなります。逆に言えば、借入額を少なくすれば審査に通る可能性が高まると言えます。
できるだけ借入額を少なくするためには、「購入価格を下げる」ことと「頭金を多めに入れる」ことの2つがあります。前者は地域や土地相場の変動により対策が難しいこともありますが、後者は自分ですぐ対策できる方法です。今のうちから計画的に頭金をしっかり貯めていきましょう。
育休中でもOKという金融機関を選ぶにしても、夫が単独でローンを組む場合でも、無理なく返済していくためには借入れで無理をしないことが大切です。
堅実な口座管理を心がける
銀行などの口座の入出金状況から、その人のお金の使い方や管理状況が把握できることをご存じでしょうか。
たとえばクレジットカードや公共料金、通信料、生命保険料などの引落しが問題なくできているか、自・他行、証券会社などで金融商品の自動積み立てをしているか、ATMからの現金引出しは毎月大体一定しているかといったことは入出金履歴を見ればわかりますし、それによってお金に対する堅実性を判定します。給与口座のある銀行なら、収入の安定性もわかります。
これらはローン審査の上で大きな判断材料になり得ますから、普段からお金の使い方に対する信用を与えておくことも大切です。
妊娠がわかる前に住宅ローン契約をする
希望する物件が見つかれば、妊娠がわかる前に住宅ローン審査や契約を済ませておく方法もあります。ただしこの場合には、間取りや物件価格に気を付ける必要があります。
一般的に、子どもがいるときといないときでは理想的な間取りが違いますが、家族が増えたからといって簡単に買い換えられるものではありません。
また、先にも説明しましたが、子どもができたあとに気持ちが変わり、仕事を一旦辞めてしまう可能性もあります。先の状況が不確実ななかで無理して大きなローンを組んで、のちのち返済に困ることにならないようにしなければなりません。
育休中でも産休・育休に入る前でも、問題なく住宅ローンを組むためには、普段から節度あるお金の使い方や、堅実に貯蓄をしていくことが何より大切です。
(文:續 恵美子、イラスト:香川 尚子、編集:マイナビ子育て編集部)
[*1]内閣府 男女共同参画局 『「第1子出産前後の女性の継続就業率」及び 出産・育児と女性の就業状況について』(2018年11月) 図1 出産前有職者に係る第1子出産前後での就業状況P18
[*2]明治安田生活福祉研究所『出産・子育てに関する調査』(2018年6月)図表2 第1子の妊娠・出産を機に仕事をやめた理由(子どもがいる 25~44 歳の既婚女性:複数回答)