【医師監修】産後は車の運転いつから可能?控えたほうがいい場合も
妊娠前には毎日のように車を運転していたけれど、出産を前に運転を控えていたという人も少なくないでしょう。では、産後はいつごろから車の運転をしても大丈夫なのでしょうか? 運転再開の目安や運転するときに気をつけたほうがいいポイントなどについてお話しします。
産後の運転に慎重になるべき理由
出産後、車の運転を始めていい時期がいつなのか、医学的または法律上の決まりはありません。とはいえ、産後の運転は慎重に行うのがおすすめです。その理由をお伝えします。
産後は注意力が鈍りやすい
出産が終わっても、ママの心身がすぐ妊娠前のように回復するわけではありません。
産後数ヶ月は、夜間の授乳や赤ちゃんのお世話で睡眠時間は細切れになりやすいでしょう。そうすると、車の運転には欠かせない集中力や注意力も鈍りやすくなることが考えられます。
また、産後数日から2週間ほどの間に、「マタニティブルーズ」という一過性の精神症状が現れることがあります。2週間ほどで自然と治まっていきますが、マタニティブルーズは出産後の女性の30~50%が経験するとされ[*1]、不意に涙が出たり、いらいらしたりと情緒が不安定になるほか、集中力が欠如するケースもあります。
マタニティブルーズや産後のママの心の状態については、以下の記事も参考にしてください。
▶【助産師解説】これって産後うつ?マタニティブルーズとは違う?<ママ体験談>
産褥期は万全の体調ではない
産褥期のママがどんな状態なのか、もう少し詳しく見てみましょう。
妊娠・出産は女性の体に大きな変化を起こすため、妊娠前の状態に戻るまでは出産後6~8週間はかかると言われています。この時期を「産褥期」と言います。
出産直後の子宮はまだ大きく、6~8週間かけてゆっくりと妊娠前と同じ60g前後の大きさにまで縮小していきます。子宮頸部は産後3日目にはまだ指2本分開いていて、4~6週間かけて徐々に閉じていきます。悪露(おろ)もすぐにはなくならず、4~6週間かけて出なくなっていきます。
また出産の際には、腟に小さな傷ができることが少なくありません。会陰切開などの傷がある人もいることでしょう。こうした傷が治るには1~2週間かかります[*2]。さらに、産褥期には痔や排尿障害に悩まされるママもよくいます。
「産後1ヶ月ほどは体を休めた方がいい」とよく言いますが、その言葉の通り、出産した後も体にはこうした大きな負担が残っているため、無理をせずできるだけ休んだ方がいいのです。
なお、産褥期については、こちらの記事で詳しく解説しています。
▶【助産師解説】産褥期ってなに?産後の肥立ち?産褥期のママの心身と過ごし方
運転席に座ると痛みが生じることも
産後は、 運転席に座るだけで体に負担がかかることがあります。
出産で腟や会陰部に傷ができていると、 運転席に座るだけでこうした傷が痛むことがあります。運転席に座り続けていると、 腟や肛門がうっ血したり皮膚が引きつれてしまい、さらに傷が痛んだり治りが悪くなることも考えられます。また、帝王切開をした人は、 腹部の傷にシートベルトが当たったりして、違和感を持つ人もいるかもしれません。
よって、体調や傷の状態が落ち着くまでは、運転は短時間にしておいた方がよいですね。 体に違和感を持っていると注意力も落ちますから、事故などのリスクも高くなります。
産後に車の運転を再開する時期は?
住んでいるエリアによっては、車を運転しないとお店で買い物もできないこともあります。そのため、産後でもできるだけ早く車に乗れるようにならないと困るというママもいることでしょう。ここでは、産後に車の運転を再開する目安についてお話しします。
産褥期に心身が回復してきたことを目安に
すでにお伝えしたように産褥期のママの体はまだ万全ではありません。加えて、メンタル面での一時的な変調や夜間の授乳などによる睡眠不足の影響で、集中力が鈍りやすくなっています。赤ちゃんを連れて車で外出するとなると、赤ちゃんの様子が気になって、ますます注意散漫になってしまう恐れもあるでしょう。
冒頭でお伝えしたとおり、産後いつから運転OKなのか、特に基準や目安が出されているわけではありませんが、産後しばらくは体調を戻すことを重視し、無理して運転するのは控えましょう。産褥期が問題なく経過していき、心身の回復を感じられるようになったら、車の運転を再開するのがおすすめです。
産後に車を運転する際の注意点
運転するのが久々だったり赤ちゃんが同乗していると、妊娠前のようにスムーズに運転できないこともあるかもしれません。運転を再開したら、安全のために次のことに気をつけるようにしましょう。
産後の運転は体調に合わせて
体調がよくないのに無理をして運転すると、事故を起こしやすくなってしまいます。疲れていたり体調がよくないと感じたら、運転はやめておきましょう。
定期的に医療機関に通わなければならないなどの事情がある場合、体調に不安を感じた日だけでもタクシーやバスなど自分の運転以外の移動手段にすぐに切り替えられるよう、準備を進めておくといいですね。
久々の運転は注意深く
久しぶりの運転では、すぐには勘が戻らず道路標識や歩行者などのチェックが不十分になることもあり得ます。特に日が暮れ始める時間帯は、視界がだんだんと悪くなって歩行者や自転車、他の自動車などが見づらくなり、交通事故が起こりやすくなります。なるべく明るいうちに運転するように心がけ、日が暮れてきたらより気をつけて運転するようにしましょう。
また、赤ちゃんを乗せて車を運転していると、つい赤ちゃんの様子が気になってしまうものです。特に赤ちゃんが泣き出したら誰でも慌ててしまいますよね。体調が万全でも、赤ちゃんと一緒というだけでいつもとは違う運転になります。
運転中は運転に集中し、赤ちゃんがぐずったら必ず安全な場所に車を停めてから様子を見ます。可能であれば最初のうちは、赤ちゃんの様子を見てくれたり、いざという時に運転を代わってもらえる同乗者がいると安心かもしれません。
新生児期からチャイルドシートを使いましょう
道路交通法によって、新生児を含む6歳未満の赤ちゃんや子供はチャイルドシートを装着する義務があります。
チャイルドシートを装着しておけば、万が一交通事故に巻き込まれても、赤ちゃんが大きなけがをしたり、亡くなる可能性を低くすることができます。命を守るために、赤ちゃんが泣いても、新生児のうちから必ずチャイルドシートを正しく装着するようにしてください。
チャイルドシートをつける場所は後部座席です。助手席にチャイルドシートを取りつけると、事故の際のエアバッグの膨張で逆に赤ちゃんを傷つける危険があります。
なお、赤ちゃんと一緒のドライブについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
▶【医師監修】赤ちゃんと車のお出かけはいつから?楽しいドライブのコツと注意点
まとめ
出産後6~8週間くらいは産褥期といい、ママの心と体がまだ妊娠前の状態に戻っていない状態です。出産によって会陰部や腟などに傷ができていることもあります。そのため、痛みや違和感があるうちは、車の運転を控えるのがおすすめです。
また、久しぶりに運転するときにはできるだけ用心して運転をしましょう。くれぐれも無理はせず、体調がいい日を選んで運転することが大切です。赤ちゃんも同乗する場合は、必ずチャイルドシートを設置して万が一の事故から守ってあげましょう。
(文:大崎典子/監修:太田寛 先生)
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※この記事は、マイナビウーマン子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました
※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます