【医師監修】赤ちゃんの夜泣きは放置しても大丈夫? 泣き止まない時の対処法
何をしても泣き止まない夜泣き。なすすべもなく見守るだけになってしまうこともありますね。どうせ泣きやまないなら、「放置」してもいいのでしょうか。夜泣きの基本的な対処法とともにチェックしてみましょう。
夜泣きをする赤ちゃん。おむつも換えた、授乳もした、それなのに抱っこしても何をしても泣き止まないこともありますよね。そんなときは、安全を確保してそっとしておくだけでも大丈夫。自分を責めずに、上手に対処する方法を知っておきましょう。
夜泣きを放置しても大丈夫?
できることはすべてしたのに泣き止まない。そんな夜泣きにはどう対処すればよいのでしょうか。放置してもかまわないのでしょうか。
そんなに慌てなくて大丈夫
実は夜泣きは、慌ててすぐに対応しないのがむしろ正解です。寝言で一瞬泣いただけですぐに泣き止む場合もあるので、まずは短時間様子を見ましょう。
少し待っても泣いていたら、
「おむつが汚れていないか」(→ おむつ替え)
「お腹が空いていないか」(→ 母乳やミルクの授乳)
「具合が悪そうではないか」(→ 熱や体の状態チェック)
「暑すぎないか」(→ 室温、服、寝具のチェック)
などの確認を。特に理由がなさそうなのに泣いているのであれば、かまわないでいる方が早く夜泣きが改善することがわかっています[*1]。
子どもの睡眠問題に関する研究は1980年代から本格化していて、これまでさまざまな対処法が比較されてきましたが、「親が寝つくまで側にいる」「すぐに授乳やオムツ交換をする」「抱き上げてあやす」といった対処はむしろしない方が、夜泣きの問題は改善しやすいという結論が出ているのです。
赤ちゃんが夜泣きする原因はなに?
そもそも赤ちゃんはどんな理由で夜泣きをするのでしょうか。
睡眠リズム、不快感、体調不良など原因はいろいろ
夜泣きのおもな原因は、赤ちゃんの「睡眠リズム」がまだ不安定なことではないかと考えられています。
赤ちゃんの睡眠は未発達で、新生児のうちはこま切れに睡眠をとります。そして成長とともに少しずつ1回の睡眠時間が長くなり、夜まとまって眠るようになります。その過程で睡眠と覚醒の切り替えがうまくできないことがでてきます。
また、授乳や抱っこなど特定の寝かしつけ行動と睡眠が強く結びついてしまい、授乳や抱っこでないと眠れない状態になってしまうこともあります。それにより、「眠いのに眠れない」「すっきり目覚められない」といった状態になると夜泣きをすることがあるのです。
このほかに、暑い・寒いといった不快感や、空腹、おむつが汚れたなどを知らせるサインである場合も。風邪で体調が悪い、発熱、中耳炎、体のどこかが痛いなど不調を知らせている可能性もあり、夜泣きの原因はさまざまです。
特に理由がなくて泣くことも多い
夜泣きにはいろいろな理由が考えられますが、特に理由がなさそうなのに赤ちゃんが泣き続けることも珍しくありません。
思い当たることがないのに泣き続けるのを不安に思ったり、親失格だと考えたりしなくて大丈夫です。
赤ちゃんの夜泣きはいつまで続く?
夜泣きで辛い状態は、基本的には何年も続きません。
1歳前後を過ぎるまでが目安。ただし3歳頃まで続く子も
個人差はありますが、1歳を過ぎると夜泣きをする子は少なくなり、3歳を過ぎるころにはほとんどいなくなると言われています[*2, 3]。
赤ちゃんの夜泣きの長さは個人差も大きい
夜泣きの程度も赤ちゃんによって異なります。抱っこをしたりオムツを換えたりしているうちに泣き止む子もいれば、ほぼ一晩中泣くような子もいます。一方で、ほとんど夜泣きをしないという子もいて、赤ちゃんごとに千差万別です。
赤ちゃんの夜泣き、4つの対処法
最初に、赤ちゃんの夜泣きにはあまり慌てて対処しないほうがよいと解説しました。ここでは、なるべく夜泣きさせないために大切なことと、夜泣きをしたときの対処法とそのときの注意点を解説します。
夜泣きの対処法(1) 生活リズムを整える
まずは赤ちゃんが夜泣きするのを防ぐ方法です。夜しっかり眠れるように、「生活リズムを整える」ことを心がけましょう。朝は決まった時間に起こして、食事も規則的に。夜は毎日同じ時間にベッドに寝かせます。日中はよく体を動かして夜は静かにゆったりと過ごし、昼夜のメリハリをつけましょう。
赤ちゃんにおすすめの生活リズムは、月齢とともに変わっていきます。詳しくは下記の記事を参照してください。
夜泣きの対処法(2) 就寝環境を見直す
寝室は赤ちゃんが心地良く眠れる環境になっているか見直してみましょう。「室温や湿度は快適か」「部屋は明るすぎないか」「静かになっているか(テレビなどの音でうるさくないか)」チェックしてください。
夜泣きの対処法(3) 生後3ヶ月頃までなら「5S」を試してみる
生活リズムや就寝環境を工夫していても、夜泣きすることはやはりあります。生後3ヶ月頃までの赤ちゃんには、下記の方法を試してみてください。
泣く赤ちゃんをなだめるための「5つの方法」
赤ちゃんが泣き止まないときの対処として、アメリカの小児科医が提唱する「5つのS」というものがあります。
1つめのs:Swaddle「おくるみで包む」
2つめのs:Side-stomach position「横向きに抱っこする」
(お腹が密着する体勢で抱っこする ※横向きにベッドや布団に寝かせてはいけません)
3つめのs:Shush「シューという呼吸音を聴かせる」(赤ちゃんの耳元ではっきり聞こえるようにシューッと言う)
4つめのs:Swing「揺り動かす」
5つめのs:Suck「(おしゃぶりなどを)吸わせる」
すぐ泣き止んでほしいときは、こうした方法を試してみても。「5つのS」について詳しくは次の記事を参考にしてください。
夜泣きの対処法(4) 授乳で寝かしつけしない
授乳で寝かしつけていると、赤ちゃんは夜目が覚めたときに授乳されないと安心して眠ることができなくなり、夜泣きにつながることがあります。母乳の場合はとくに、授乳すれば泣き止むだろうと考えがちですが、実は、「授乳」と「眠ること」はあまり関連づけないほうがよいのです。
そのために、まず「朝はしっかり目を覚まさせてから」授乳しましょう。赤ちゃんは授乳で寝落ちしてしまうことも多いですが、生後数週間たったら、寝かしつけのためだけの授乳はなるべく減らしていくのがいいでしょう。夜も授乳が終わったら「眠ってしまう前にベッドに連れていき、ベッドで寝つかせる」ように心掛けてください。
夜泣きの対応として授乳するのも間違いではありませんが、できればほかの対処法を試してみても泣き止まない場合の「最終手段」にしましょう。これは、抱っこも同じです。抱っこで寝かしつけすることが習慣にならないよう注意しましょう。
生後6ヶ月をすぎた健康な赤ちゃんで、授乳や抱っこでないと眠れない、という習慣による夜泣きで困っている場合は、「ネントレ」を試してみてもいいでしょう。ネントレについて詳しくは下記の記事を参照してください。
夜泣きが続いて辛いとき、やってほしいこと・ダメなこと
さきほど夜泣きの基本的な対処法を紹介しました。でも、最初に解説したとおり、赤ちゃんがとくに理由なく泣き続けるのはよくあることです。
夜泣きが続くと睡眠不足でフラフラになったり、精神的に追いつめられてしまうこともありますよね。そんなときに、心にとめておいてほしいことも解説します。
強く揺さぶるのはNG! 重大な障害が起こる危険も
どんなときでも、赤ちゃんを激しく揺さぶったり、投げつけたり、叩いたりしてはいけません。とくに、寝かしつけのときはやさしく揺さぶるつもりが、なかなか泣き止まないとつい手荒になってしまうかもしれません。でも、赤ちゃんを激しく揺さぶると「乳幼児揺さぶられ症候群」の危険があります。
これは、激しく揺さぶられることで赤ちゃんの首がしなり、頭の中で脳に回転力が加わった結果、血管や神経が引きちぎられるものです。赤ちゃんの脳はとても柔らかくもろいので、激しく揺すぶられると、言語や学習、歩行、視力に障害を残す可能性があります[*4]。
少し離れてOK! 安全対策した上で離れた場所で落ち着こう
夜泣きでイライラしたり辛いときは、少し赤ちゃんから離れて気持ちを落ち着けるのをおすすめします。赤ちゃんが目に入る距離で、10~15分くらい少し離れてみましょう[*6]。夜泣きはいつか終わるものですが、それでも数ヶ月続くのは珍しくありません。こまめに親の気持ちを回復させるのも大切なことです。
以下のようなポイントを確認して赤ちゃんの安全が確保できていれば、少しの時間、泣く赤ちゃんから離れたとしても問題ありません。
周囲のものによる窒息やうつ伏せの危険がないか確認
元気な赤ちゃんが睡眠中に突然亡くなってしまう「乳幼児突然死症候群(SIDS)」や窒息事故防止のために、赤ちゃんは大人と同じベッドではなくできるだけベビーベッドに寝かせます。大人用ベッドは転落事故のリスクもあります。日本では布団の家庭も多いですが、この場合も同様の理由で親と同じ布団では寝かせないようにします。
また、敷き布団は硬め、シーツはしわがよらないようにぴんと張ります。ベビーベッドの上や赤ちゃん用布団の近くには、柔らかい寝具やぬいぐるみ、スタイなど窒息の危険があるものは置かないようにしましょう。
なお寝かせるときは必ず仰向けで寝かせます[*5]。そして、自分で「仰向けからうつ伏せ」「うつ伏せから仰向け」の両方向の寝返りが自由にできるようになるまでは、赤ちゃんが自分でうつ伏せになっていたら仰向けに戻してあげてください。
自分を責めちゃダメ! 赤ちゃんが泣くのは誰も悪くない
どうしても泣き止まなければ、見守ることも必要になります。そんなとき、泣き止ませることができないなんて……と自分を責めないでください。親だからといって、夜泣きを必ず止められるわけではありません。
よく「泣くのが仕事」と言われるように、赤ちゃんが泣くのは普通のこと。親はお世話が大変ですが、夜泣きも赤ちゃんの成長過程で起こる正常なことです。また、夜泣きの程度は個人差が大きく、ひどいからといって親が悪いわけでも赤ちゃんが悪いわけでもないのです。
事前説明で安心! 近所迷惑が心配なら挨拶しておく
ただ、あまり気にしないでと言われても、現実問題として赤ちゃんが泣き続けていると近所迷惑にならないか、虐待を疑われないかも心配になりますよね。
そんなときは、夜間は窓を開けておかないなど、できる限りの騒音対策はするとともに、「近所の方に挨拶しておく」のがおすすめです。対面が気づまりなら、「赤ちゃんがおり、夜泣きで迷惑をかけるかもしれないが温かく見守っていただけるとうれしいです」ということを簡単な手紙にまとめて、ポストに入れておく方法もあります。
まとめ
赤ちゃんの夜泣きは、親が必ず泣き止ませなければいけないというものではありません。考えられる対処をしてもまだ泣き止まないときは、いったん様子をみてみることも必要です。赤ちゃんの安全が確保されているのであれば、ママ・パパは自分の心身を休める時間も少しつくってください。ご近所への配慮もある程度は必要ですが、夜泣きは赤ちゃんの成長とともに1歳ごろには落ち着くことが多いものです。その赤ちゃんと家庭に合ったやり方で、夜泣きの時期が過ぎるまで、なんとか工夫して乗り切っていきましょう。
(文:佐藤華奈子/監修:森田麻里子先生)
※画像はイメージです
[*1]足立淑子:「ママと赤ちゃんが夜よく眠れるように」妊娠中からの親教育, 小児保健研究 第70巻 第2号,2011(147~150)
[*2]厚生労働省:子どもの心の健康問題 ハンドブック, 124p
[*3]米睡眠財団 18ヶ月の睡眠退行
[*4]厚生労働省「赤ちゃんが泣き止まない 泣きへの理解と対処のために」
[*5]厚生労働省 「11月は「乳幼児突然死症候群(SIDS)」の対策強化月間です」
[*6]教えて!ドクター 赤ちゃんが泣き止まない
※この記事は、マイナビウーマン子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました
※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます