【医師監修】産後になりやすい3つの痔の種類とは?
妊娠中だけでなく、出産時、産後もママ達を悩ませる「痔」(じ)。今回は、産後の痔にスポットライト当て、その原因や痔の種類、治療法を知っていきましょう。
産後、痔になってしまう原因
※画像はイメージです
そもそも「痔」とは?
「痔(じ)」とは、肛門や肛門周辺で起きる病気です。詳しい症状や種類については後ほどご紹介しますが、痔になると、うっ血してイボができたり、切れて出血したり、皮膚が垂れ下がったりなどといったことが起きます。男性と比較すると、女性は特に切れ痔(裂肛)になりやすい傾向があります。
原因として、まず女性ホルモンの働きが腸の運動を弱めてしまい、便秘になることがあります。そして、便秘で溜まった固い便を出すときに、肛門へダメージが加わり、痔へとつながってしまうのです。実際に、生理前は便秘になるという人も少なくないようです。また、産後のダイエットによって食べる量を減らしたり、外出先や職場で便意を我慢することなども便秘の原因となります。
このように「便秘」は、痔の大きな原因です。これと並んで女性特有の痔の要因とされているのが「妊娠・出産」なのです。妊娠中は、つわりで食事の量が減ったり、偏食になったり、あるいは妊娠後期の大きくなった子宮の圧迫で内臓が圧迫されたり、女性ホルモンの影響で消化器の働きが弱ったりして、便秘になるケースが少なくありません。
産後の痔はなぜ起きる
産後に痔になる理由はいくつかあります。第一に、妊娠中から便秘になる人が多いこと、そして分娩時の「力み」などで肛門に大きな負担がかかり、痔が起きやすくなることが考えられます。
加えて、たびたびの授乳や赤ちゃんのお世話などで生活リズムが不規則になり、食事の時間やタイミングもおろそかになり、排便のタイミングを失う場合もあります。育児による疲れやストレスといった産後の忙しさの中で、便秘がちとなり、痔へと発展するケースが高まるということですね。また、授乳中の人は、母乳に水分をとられるためにふだんより水分不足になり、産後の便秘になりやすくなる可能性もあります。
産後の肛門トラブル3つ
切れ痔
肛門の皮膚が切れる状態で「裂肛」(れっこう)とも呼ばれます。女性に多くみられる切れ痔は、特に便秘がちなママは注意が必要です。便秘の場合、便が太くなっていたり、硬くなっていることがあり、肛門にダメージがかかりやすくなります。さらに、便秘の人は切れ痔の悪化や慢性化の恐れもあります。出血量は大した事がなくても、排便時の痛みが強い場合には切れ痔の可能性も高いと言えるでしょう。
いぼ痔
いぼ痔は、肛門付近のうっ血で発生する「いぼ」で、正式には「痔核」(じかく)といいます。男女の有病率には差がなく、45~65歳の有病率が高くなっています。いぼ痔はできる場所によって「外痔核」「内痔核」の名前で区別されます。原因についてははっきりとわかっていませんが、トイレでいきむ人や、長く座っている人がなりやすいという報告があります。
■外痔核
外痔核は体の外から確認できる箇所(肛門口の付近)にできます。この辺りには痛みを感じる神経(知覚神経)が存在するので、外痔核になるとほぼ痛みを感じます。炎症を起こして大きく腫れると、出血するなどして、とても痛い状態になります。
■内痔核
外痔核よりも奥にできるいぼ痔を「内痔核」といいます。意外なことに、痛みをほとんど感じないケースが多いようです。しかし、内痔核ができやすい箇所は、排便のときに圧力がかかりやすい場所。排便の度に圧力がかかり続けることで、驚くほど出血するケースもあります。また、症状が進むと、痔核(いぼ)が体外へ出てしまい、指で押しこまないと戻らなくなったり、あるいは、指で押し込んでも常に肛門外に出てきてしまう状態になります。心当たりのある方は、早めに医療機関を受診しましょう。
肛門皮垂(こうもんひすい)
肛門に発生する皮膚たるみ・しわのことで「スキンタグ」とも呼ばれます。それ自体は病気ではなく、治療する必要もないのですが、産後にできて「病気かしら」と悩んでいる女性は少なくありません。切れ痔のために発生する「見張りいぼ」が、切れ痔の治ったあとに皮垂として残っているケースもあります。有害なものではありませんが、大きくて気になる場合は、手術により切除するケースもあります。
産後の痔の予防法・治療法と対策
どんな予防法があるの?
予防法としては便秘を解消することです。基本的には食物繊維や水分の摂取を心がけますが、強い便秘には効果がない場合や、食物繊維の過剰摂取がかえって便秘を悪化させる場合もあります。妊娠中や産後で便秘がちな方は、医療機関に相談してみましょう。妊娠中や授乳中でも飲める、便を柔らかくする薬を処方してもらえることが多いでしょう。また、日常生活の中で、便意を我慢しないことも大切です。
どんな治療法があるの?
痔になってしまった場合の治療法としては、薬による保存的治療や手術が検討されます。症状が軽い場合は、症状を悪化させないため、肛門周辺の温浴が効果的です。また、肛門周辺を清潔に保ち、感染を防ぐことも重要です。痛みが強い場合には、座薬の使用が勧められることが多いでしょう。さらに重症の場合は、手術が検討されます。
■肛門皮垂の対策
肛門付近にできる皮膚のたるみは、病気ではないため、治療の対象にはなりません。ただ、女性の場合、特に美的の観点から悩む人が多いようです。皮膚たるみをなくしたい場合は、手術で切除することになるでしょう。また、肛門付近にできる皮膚たるみは、皮膚炎の原因になることもありますので、痛みやかゆみに悩むママは、医療機関に相談するとよいでしょう。
産後(授乳中)の配慮
産後の授乳期は、薬を使っていいのか悩むママもいるでしょう。市販の薬を使用する前に、医療機関へ相談するとよいでしょう。
まとめ
産後に限らず、痔の大きな原因となるのが「便秘」です。忙しい中ではなかなか難しいかもしれませんが、なるべく便意を我慢せず、快便に努めてください。妊娠中・授乳中でも問題なく使える便秘の薬もありますので、医師に相談するとよいでしょう。また、仮に痔になってしまっても、症状が軽度なら、手術せずに治せるケースも多いので、恥ずかしがらず早めの医療機関受診を心がけましょう。
※この記事は 医療校閲・医師の再監修を経た上で、マイナビ子育て編集部が加筆・修正し掲載しました(2018.08.27)