助産師解説!私って短乳頭?乳首が短くても授乳はできるの?乳首の悩み<体験談>
「自分の乳首は短い気がする……もしかして短乳頭?」。そんな悩みを抱えている女性も中にはいるでしょう。短乳頭の場合でも、母乳育児はできるのでしょうか。今回は、短乳頭などの乳首の悩みがある場合の授乳のコツについて、助産師の坂田先生に解説してもらいます。
<体験談>授乳できるか「乳首に不安」はあった?
妊娠中や産後直後、「自分の乳首で母乳育児がうまくできるの……?」と不安に思ったことがあるかどうか、先輩ママに聞きました。
最多は「短すぎ?・小さすぎ?」
赤ちゃんに授乳するにあたって、自分の乳首に何か不安な点はあったかどうか聞いたところ、もっとも多かった不安は「乳首が短すぎ・小さすぎて不安」の17%でした。
また、「陥没乳頭」や「乳首が平たい」などで不安を覚えていた人もいました。
<体験談>乳首の不安と対処法
「自分の乳首ではうまく授乳できないのでは……?」と不安だった先輩ママに、具体的な困りごとと自分なりの対処法も教えてもらいました。
※マイナビ子育て調べ 調査期間:2021年11月10日~2021年11月17日 調査人数:94人(21歳~40歳以上の女性)の回答より抜粋
※ここで紹介した方法と結果は、個人の体験によるものです。記載の方法を推奨したり、結果を保証するものではありません。
「短乳頭」でも母乳育児はできるの?
乳首が短めの人でも、授乳はできるのでしょうか。
短乳頭でも授乳はできる
乳首が通常より短めでも、多くの場合、授乳は問題なくできます。「妊娠中に乳首の大きさが変わる」ことはよくありますし、授乳しているうちに「徐々に伸びてくる」こともあります。
赤ちゃんは「乳首だけ」でおっぱいを飲むのではない
そもそも授乳の際、赤ちゃんは乳首だけではなく「乳輪まで」深くくわえることで、母乳を効率よく飲むことができます。
ですから、乳首の長さが多少通常と異なっていても、赤ちゃんが乳輪まで深くくわえることができるならそれほど問題はないのです。
「短乳頭」ってちなみにどのくらいの長さ?
授乳にあまり問題はないといっても、乳首の長さは普通どのくらいなのか気になる人もいるかもしれませんね。
日本人女性300人で計測した研究では、「乳首の長さの平均は9mm」と報告しています。 乳首の平均直径は1.3cm、乳輪の平均直径は4.0cmでした[*1]。
短乳頭には医学的にはっきりした定義はありませんが、乳首の長さが5mm程度以下の場合、「短乳頭」と言われることがあるようです。
なお、乳首の長さや形、乳輪の大きさなどは人それぞれ。乳首が短い以外にも、下記のような特徴がある人もいます。
ちなみに、陥没乳頭には「仮性」と「真性」の2種類あります。
<仮性陥没乳頭>
比較的軽度。見た目は扁平でも乳輪部分をつまむと乳首が出っ張る
<真性陥没乳頭>にはさらに2タイプあります。
・見た目は問題ないが、乳輪部分をつまむと乳首がへこむタイプ
・見た目が陥没乳頭で、乳輪部分をつまむと乳首がさらにへこむタイプ
おしえてようこ先生!短乳頭の授乳のコツは?
乳首が多少短くても問題なく授乳できることは多いのですが、短めの乳首が気になるママが覚えておくと良いコツは何かあるのでしょうか。
乳輪をやわらかくする
乳首の長さにかかわらず、おっぱいがパンパンに張って乳輪までむくんでいると赤ちゃんが口に含みにくくなるので、授乳の直前に少し搾乳したり、乳輪をマッサージしておくと良いでしょう。
乳輪のむくみをとるマッサージには「リバース・プレッシャー・ソフトニング」という方法があります。
リバース・プレッシャー・ソフトニング
1)指の先か腹を乳首の根元に当てる
2)自分の体に向かって「優しく」かつ「しっかり」、「1分以上」押して圧迫する
3)指の位置を変えて、乳輪全体に行う
※直接触ると痛みを感じる場合はガーゼなどの上から行っても良い
※力加減は痛みを感じない程度にする
正しい授乳姿勢がとれているか
口の端にあったり斜めになったりしていない
2)上から見たとき、赤ちゃんの耳・肩・腰が一直線になっている
赤ちゃんの顔と体の向きがともにママのほうを向いている
3)赤ちゃんとママのお腹が向かい合い密着している
離れていない
4)赤ちゃんの体全体を支えられている
授乳姿勢についてくわしくは下記の記事でも解説しているので、参考にしてください。
赤ちゃんが「深くくわえているか」確認する
また、赤ちゃんが乳首だけでなく乳輪まで深く口に入れているかも確認しましょう。
赤ちゃんがおっぱいに吸い付くことを「ラッチオン」と言いますが、正しいラッチオンができているかのチェックポイントは以下の3つです。
正しいラッチオンのポイント
2)赤ちゃんの下あごはおっぱいに触れている
3)赤ちゃんの下くちびるは外側にめくれている
内側に巻き込んでいない
「ニップルシールド」や「乳首吸引器」はどう使う?
乳首の形が授乳に影響している気がすると、「ニップルシールド」や「乳首吸引器」を使ってみたいと思うこともあるかもしれません。
ニップルシールドは薄いシリコン製などで乳首を保護してくれるもの、乳首吸引器は手動ポンプなどによって乳首を引き出すために使う器具で、市販されています。
ただ、これらは簡単に使えそうに見えて、不適切な方法で使用すると赤ちゃんが「乳頭混乱」を起こしたり、乳首に痛みや傷を引き起こしたりすることも。使用する場合は、事前に助産師などの専門家に使い方のポイントを教えてもらってからにしたほうが無難です。
一時的でも、ニップルシールドを使用する場合には、乳頭混乱や母乳分泌の低下が起きることもあるため、
使用をやめるときまで助産師などの専門家に継続的にサポートしてもらいましょう。
短乳頭は事前に何かしておいたほうがいいの?
乳首が短すぎるような気がする場合、赤ちゃんが生まれる前に何かしておかなくて良いのでしょうか。
事前の準備はとくにいらない
妊娠していないときに乳首が短かったり、陥没していたりしても、妊娠中に乳首の形が変わり、普段より出てくる・伸びるようになることは多いです。
また、乳頭や乳房は、出産後の1ヶ月間でも大きな変化が現れます。赤ちゃんが吸うことで出てくることもあるので、出産前に何か準備する必要は基本的にありません。
なお、乳首の特徴にかかわらず、妊娠中に乳首やおっぱいをマッサージすることは、母乳育児に必要ではなく、乳首を傷つける可能性などもあるので勧められていません[*2]。
でも心配ならあらかじめ相談してみて!
とはいえ、やっぱり心配という人は、出産前に助産師などの母乳の専門家に相談しておくと良いでしょう。乳首の状態は人それぞれなので、その人に合ったアドバイスをもらえるはずです。
産後、母乳育児がなかなかうまく行かないときももちろん、専門家に相談してみましょう。乳首の長さを気にしていたけれど、実は赤ちゃんの吸着がうまくできていなかったり、姿勢に問題があったりと、自分ではわからない気づきをもらえることもあります。
まとめ
「短乳頭」でうまく授乳できるかどうか不安なママに向け、「乳首が短くても多くは問題なく授乳できること」「うまく授乳するためのチェックポイント」「事前の準備は基本的には不要なこと」などについて解説しました。
アンケート調査にもあったように、授乳前、乳首に不安を覚えるママは少なくありません。でも、乳首に多少特徴があったとしても、多くの場合、授乳は問題なくできます。妊娠・出産では、お腹だけでなく乳房も大きな変化を遂げますし、赤ちゃんが一生懸命吸ってくれることでも、乳首は授乳に適した形に変わっていくからです。
始めてみると案外うまく行くことも多いので、乳首に特徴があったとしてあまり心配し過ぎないでください。気になる人はひとりで悩まず、助産師など母乳の専門家に相談して、自分に合った方法についてアドバイスをもらっておきましょう。
(文:坂田陽子先生/構成:マイナビ子育て編集部)
※画像はイメージです
[*1]Sanuki. J Fukuma. E, Uchida. Y (2009). Morphologic Study of Nipple-Areola Complex in 600 Breasts. Aesthetic Plastic Surgery, 33, 295-297.
[*2]World Health Organization, UNICEF: BFHI Section 3: Breastfeeding Promotion and Support in a Baby-friendly Hospital, a 20-hour course for maternity staff, 3.2 Outlines of Course Sessions, p.58, 2006.
※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます