寝かしつけで大事なポイントは2つだけ! ママ医師が教える実践方法とQ&A
赤ちゃんがなかなか寝てくれなかったり、夜泣きが続くと辛いですね。なんとかしたいけど、睡眠不足でどこから始めればいいかわからない……そんなママ・パパのために、子供の睡眠にくわしい森田麻里子先生に聞いた、寝かしつけでまず大事なことを2つ紹介します。よくある疑問にも回答してもらったので、ぜひ参考にしてみてくださいね。
寝かしつけで大事なこと「2つ」とは
赤ちゃんの寝かしつけをする際、「大事なポイント2つ」とはいったい何なのでしょうか。
(1)スムーズに寝入れるように「整える」
ひとつ目のポイントは、赤ちゃんが寝入る時、赤ちゃん自身ではどうにもできないことを「整えてあげる」ことです。
具体的には、「生活リズム」や「寝室の照明」「温度」「音」といった環境、「服装」などが赤ちゃんの睡眠に適した状態になっているかチェックして、できるだけ整うよう工夫します。
(2)自分で「寝付く力を育てる」
2つ目は、赤ちゃんの「自分で寝付く力を育ててあげる」ことです。
個人差も大きいのですが、最初は自分で「うまく寝付けない」赤ちゃんは意外と多いものです。大人なら自然に寝付ける状況であっても、「眠いのに寝付けない」ことで泣いてしまい、余計に眠れなくなってしまうことがあるのです。
こうした「眠るのがあまり上手ではない」赤ちゃんに、「自分で寝付く力」を身に着けてもらうため、親ができることもあります。具体的な方法は後半で解説します。
その子に寄り添って工夫しよう
赤ちゃんは、生まれてからおよそ1年の間に、体重は約3倍、身長は約1.5倍にもなり、自分で動けるようになったり言葉を発するようになったり、と目覚ましい成長を見せてくれます。実はこの時期、赤ちゃんは「睡眠も成長」しています。
でも、体や心の成長と密接に関わっているので、睡眠の整い方やその成長スピードは赤ちゃんによってさまざま。他の子には有効だった方法がわが子にも良いかはわかりません。
とはいえ、赤ちゃんがスムーズに寝付くために注意したい点はいくつかあるので、寝かしつけに苦労しているなら、基本の2つのポイントを押さえながら「その子に合った方法」を見つけていきましょう。
具体的な方法については、このあと詳しく解説していきます。
ポイント(1)生活リズムや環境を「整える」方法
赤ちゃんの寝かしつけがうまく行かないとき、まずチェックしてほしいのが「赤ちゃんが寝入りやすい生活リズムや環境になっているか」ということです。
朝日を浴びるのが大事
前夜よく眠れなかったり、入眠が遅くなってしまっても、朝はできるだけ毎日同じ時間に起きて「朝日を浴びる」ことが大切です。そうすると、赤ちゃんが夜、適切な時間に眠くなるのを助けてくれるからです。
人間含め生き物は「概日リズム」に従って生活しています。これは「日中は起きて活動し、夜になると自然に眠くなる」リズムのことです。赤ちゃんは生後3ヶ月ごろになると、おおむねこのリズムに沿った生活になってきます。
でも、大人でも寝不足が続いたり時差ボケになったりして、このリズムが狂ってしまうことはありますよね。まだ睡眠が不安定な赤ちゃんではなおさらです。
この概日リズムを整えるのに効果抜群なのが「朝日をたっぷり浴びる」こと。ですから、
朝起きる時間はなるべく毎日一定にして、起きたらすぐにカーテンを開け、朝日をたっぷり浴びる
ようにしましょう。
昼寝はどうする? 月齢別の生活リズム目安
赤ちゃんが適切な時間に眠くなるためには、生活リズムを整えるのが大切。そのために、月齢ごとの睡眠時間と眠り方の特徴を知っておくと便利です。時期ごとのコツとともに紹介します。
新生児~生後2ヶ月ごろ
新生児~生後2ヶ月ごろの生活リズムを整えるコツ
・生後1ヶ月以降なら、天候・気候がよければ午前中にお散歩へ行く
・日中はなるべく明るいところで過ごす
・日中も、1~2時間続けて起きていたら寝かしつけをしてみる
・お昼寝はリビングに置いたベビーベッドやベビー布団でOK
・19時以降はリビングの照明をやや暗め・暖色系にする
・「夜のルーティーン(後述)」をして寝かしつける
生後3ヶ月~5ヶ月ごろ
生後3ヶ月~5ヶ月ごろの生活リズムを整えるコツ
・天候・気候がよければ午前中にお散歩へ行く
・日中はなるべく明るいところで活動的に過ごす
・お昼寝は、このころからはカーテンを閉めて暗くした寝室で
・昼寝の回数は1日に2~4回がおすすめ
・19時以降はリビングの照明をやや暗め・暖色系にする
・19時ごろ入浴し、授乳する
・20時ごろ、暗い寝室で「夜のルーティーン(後述)」をして寝かしつける
生後6ヶ月前後~1歳ごろ
生後6ヶ月前後~1歳ごろの生活リズムを整えるコツ
・昼寝の回数は、生後6~8ヶ月は「1日に2~3回」、生後9~11ヶ月は「1日に2回」がおすすめ
寝室・服装をチェック!
大人も、暑すぎる/寒すぎる/明るすぎる/うるさいといった場所ではよく眠れませんよね。
寝室の環境や服装を確認してみたら、なかなか寝ない原因が意外なところに隠れていることも。下記の項目もチェックしてみてくださいね。
夜泣きしない赤ちゃんは「ベビーベッドの子」が多い
なお、2歳までできれば「ベビーベッド」をおすすめするのは、そのほうが事故の心配が少ないという理由もありますが、実は日本での研究に「夜泣きしない赤ちゃんはベビーベッドに寝ている子が多かった」と報告しているものがあるからです[*1]。
確かに、「夜泣きしないから結果としてベビーベッドで寝られている」という場合もあると思います。しかしそれだけでなく、このあと解説する「自分で寝付く力」をどうやって育んでいくかとも、どうやら関連していそうです。くわしく見ていきましょう。
ポイント(2)自分で「寝付く力を育てる」方法
「生活リズムや環境を整える」こと以外で、もうひとつ大切なのが赤ちゃんに「自分で寝付く力を付けてもらう」ことです。
「夜のルーティーン」を始めよう
具体的には、「夜のルーティーン(入眠儀式)」の習慣を付けるのがおすすめです。毎日同じ手順で同じことを、夜寝る前に行います。
夜のルーティーンとは
夜のルーティーンで行うのは特別なことではありません。でも、これらを「毎日同じようにやる」ことが大切なのです。
それによって、寝る前のひとときをリラックスして過ごすと同時に、赤ちゃんに「寝る時間が近づいている」と教えることができます。
なお、夜のルーティーンには、図で挙げたことのほかに、
・母乳やミルクの授乳
・おやすみのごあいさつ
なども加えられます。
また、図で示したように夜のルーティーンを「子供でもわかるポスター」にして、一緒に見ながら行うのもおすすめです。
眠そうだけど「まだ寝ていない」タイミングで布団へ!
布団やベッドに寝かせるタイミングは、「眠そうだけど赤ちゃんはまだ起きている」ときです。
夜のルーティーンを始め、20時ごろになったら、起きているうちにベッドや布団に赤ちゃんを下ろし、子守歌を歌ってあげましょう。
起きたまま横にすることで、「一人で寝付くスキル」を赤ちゃんに身に着けてもらうのです。これに慣れることができれば、「背中スイッチ」を気にする必要はなくなります。
「抱っこ」「授乳」で寝かしつけない
寝かしつけの際に「抱っこ」や「授乳」に頼り過ぎないのも大切です。夜のルーティーンのなかで行うのはもちろんOKですが、「寝るまで抱っこ」したり「お腹が空いていない時に寝かしつけのために授乳」したりするのはおすすめしません。
もちろん、夜ぐっすり眠れているなら、抱っこや授乳の寝かしつけ自体がダメというわけではありません。しかし場合によっては、それなしでは入眠できなくなったり、ふと目を覚ましたときに、抱っこや授乳を求めて泣いたりするようになることもあるのです。
赤ちゃんは慣れれば、抱っこや授乳の代わりに「優しくトントン」されたり、静かに見守るだけでも入眠できるようになります。
生後6ヶ月以降は「ネントレ」しても
生後6ヶ月ごろ以降に、生活リズムや寝室環境を整えても夜泣きが良くならないときは、「赤ちゃんが自分で眠りに入る力をつける」ことを目指して行う「ネントレ」を試してみても。
さまざまな方法があり、その子によって合う/合わないもあるので、これをしたら必ずうまく眠れるようになるというものではありませんが、興味がある人は試してみると良いでしょう。くわしくは下記の記事で解説しているので参考にしてください。
1歳、2歳でも?寝かしつけはいつからいつまで必要?
赤ちゃんの睡眠は月齢によって変わっていきますが、寝かしつけはいつからいつまで必要なのでしょうか。
新生児からコツを意識!「一人で寝る力」を育てる
眠そうだけど「まだ寝ていない」タイミングで布団やベッドで横になり、その後、トントンや静かな声掛けなど、親のかかわりを最低限にとどめることで、赤ちゃんは親の手助けなしでも徐々に自分で寝付けるようになっていきます。
これは新生児からでも始められることです。
まず、赤ちゃんの寝かしつけには「寝るまでの抱っこや授乳が必要」と考えるのを改めるところから始めると良いかもしれません。
もちろん、「もともと何もしなくてもよく寝る子」もいれば「寝るのがちょっと下手な子」もいるので、手助けが必要な期間や程度はさまざまですが、親のほうで早めに意識を変えておくのは大切です。
1歳過ぎても焦らないで
赤ちゃんの眠りのスキルは個人差が大きいものですが、それが整っていく速さもその子によって異なります。また、それまでよく寝ていた子が急になかなか寝なくなることもあります。
赤ちゃんや1、2歳ごろは体や心が急速に成長していくので、その時期特有の成長過程が眠りを妨げることもあるからです。
よくあるのが、歯が生えることによる「歯ぐずり」や、心身の成長や保育園への入園などの環境変化をきっかけに起こる睡眠トラブルです。
でも、そんなときの対処も、なるべく快適に眠れるよう「生活リズムや環境を整えること」、「自分で寝付く力を育むこと」が基本なのは変わりません。
赤ちゃんの睡眠に変化が起こりやすい時期と対処について、くわしくは下記の記事で解説しているので参照してください。
教えてもりたま先生!寝かしつけの疑問Q&A
ここからは、赤ちゃんの寝かしつけでよくある疑問に対して、森田先生にアドバイスをいただきます。困ったときに慌てないで済むように、あらかじめ対処のコツを知っておきましょう。
歌や音楽での寝かしつけはアリ?
リラックスできる歌や音楽でしたら、ルーティーンの最後に歌ったり流したりするのは良いと思います。
寝つくまで続けるのではなく「1曲だけ」などと、決めておきましょう。
これから寝るための合図として利用するのがおすすめです。
おくるみ、おしゃぶりは使っていいの?
両方とも、特に生後2、3ヶ月頃までの赤ちゃんをスムーズに寝かせるために便利なグッズですね。おしゃぶりは、「乳幼児突然死症候群(SIDS)」のリスクを下げるとも言われています。
ぜひ上手に活用していただきたいのですが、やめるタイミングも考えておきましょう。
おくるみは「寝返りしそうになったら卒業」が必要です。
おしゃぶりは、長く続けていると歯並びに悪影響が出る可能性があるので、「2歳ごろ」にはやめるのが無難。ただし1、2歳になると本人の意志も出てきてやめにくくなることがあります。
ずっと入れっぱなしは避けて必要な時だけ使うようにし、生後3ヶ月ごろ、「指しゃぶりができるようになったタイミング」で卒業するのがおすすめです。
母乳・ミルクの卒乳後の寝かしつけ方法は?
夜泣きなどないお子さんなら、抱っこやトントンなど、どんな寝かしつけでも良いと思います。ママ・パパの負担にならず続けられる寝かしつけ方法を決めて、それを続けてみましょう。
一方、夜泣きを改善したいということでしたら、卒乳と同時に、寝かしつけ時のサポートを少なくしていきましょう。お子さんにあった「ネントレ」方法を探してチャレンジしてみてください。
まとめ
赤ちゃんは心と体だけでなく、「眠り」についても成長していきます。新生児のころのこま切れ睡眠は、成長とともに夜まとまって眠るパターンへと変化していきますが、中には良かれと思った寝かしつけによってかえってうまく寝付けなくなっていることも。
赤ちゃんの睡眠トラブルでヘトヘトになっている場合は、ここで解説した「生活リズムや環境を整えること」「自分で寝付く力を育むこと」についてまず確認を。いま困っていない場合もあらかじめ知識を持っていれば、トラブルが起きたとき慌てないで済みます。ママ・パパ協力して、その子に合った方法を模索してみてくださいね。
(文・構成:マイナビ子育て編集部/監修・コメント:森田麻里子先生)
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※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます